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男装の私が、救国の乙女の『推し』とやらに祭り上げられましたが、本命は幼なじみ(男)一途です!   作者: 矢井瀬 月


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50.エピローグ ✽乙女木彩良✽

 〜乙女木紗良(おとめぎ さら)


 皆に別れを告げて、光が私を覆った後。


 まるで眠りから醒める直前のようなボンヤリとした感覚に包まれて、意識が浮上するとともに視界に高校近くの公園の景色が飛び込んできた。


「う……ッ」


 妙な現実感の無さに、ベンチの縁で脚が跳ね、不意に声が出た。

 まあまあ大きな声だったが、幸いなことに他に人はいなそうだ。


 膝の上のスマホには『4月2X日(FRI)』の文字。


 あちらに行っている間、行方不明者扱いだったらどうしようかと心配していたが、そこはモジャモジャにも良心があるらしい。あちらに飛んだ日付のままだった。

 こちらが春であちらが秋。確か暦は同じだったはずなのだけれど、3月30日ズレない? まあそこは、創世神パワーでなんとかしてくれることを願おう。


 というか、なんだか頭がフワフワしたままだ。

 私は本当に“救国の乙女”をしてきたのだろうか。

 夢? 余りにも壮大な夢だった?

 もしかして妄想力が逞しすぎた⁉


 そう一瞬疑ったけれど、自分の隣にある、ふたつのスーツケースと、手に握り込んだ第二ボタンが、私にあれが現実だったことを教えてくれる。

 確認すれば、耳にはイヤリングがきちんと着いていた。


「よし!」


 私は勢いよく立ち、顔を一度パンッとはたく。

 勤続2年、無遅刻無欠勤だったバイト先に欠勤連絡を入れて、スーツケースを手に家に向かうことにした。


 道中、手芸店があったのでチェーンを買った。それを早速第二ボタンに通し、ネックレスにして首にかける。


 しばらく歩いたところで、

「キミかわいーね! 重そうだけど持ってあげようか? どっか行かない?」

 と、知らない金髪に声をかけられた。初期ティムのイメージがチャラ男だったことを思い出したけれど、こんなのと比べるなんてティムに失礼だ。

 ティムの面影を邪魔されたくなくて、しつこく着いてこようとする金髪と、一瞬たりとも目を合わせることなく撒いた。


 家に着く。

 すごく久しぶりだけど、懐かしんでいる暇はなかった。今日に限っては両親がフルタイムの共働きで本当に良かったと思う。

 こんな大荷物で家に入ったら、何を言われるかわかったもんじゃない。


 こちらの世界で『つい昨日』までハマっていたはずの2次元男子グッズで占められた自室が、まるで他人の部屋のように思えた。

 彼に何の魅力も感じなさすぎて、笑えたほどだ。


 グッズをフリマアプリなどで売れば、それなりのお金になるのかもしれなかったが、それに時間をかけるよりも早く、スーツケースの中身を置く場所が作りたくて、グッズは全てゴミ袋に入れた。


 そして、“ティム”に汚い部屋を見せたくなくて、なるべく急いで綺麗に片付け、スーツケースを開ける。


 あちらの文字が読めなくなっていたらどうしようかと思ったけれど、何語かもわからないのにきちんと読めて安心した。


 ひとつずつ大切に、本棚や飾り棚に収めていく。


 遠い世界。

 海外とはまた違う、メールも電話も出来ない、まるで2次元のようだけれど、確かにどこかで動いている不思議な世界。


 棚にしまう度に、どこか自分とは関係ない世界の『資料』のように思えてくる。

 しまったな。ティムにサインでも貰えばよかった。そうしたらもう少し現実味があったかもしれないのに。

 そんなことを思いながら画集のひとつを手に取ったときだった。


 中からトスン、と、白に金縁の大きなカードが落ちる。拾い上げる前に、それが何かわかった。 


『寄せ書き』だ────。


 急いで手に取ってベッドに腰掛け、それを見た。


 真ん中に大きく“サラへ”と書いてあり、その下に矢印が付いていて、

 “ティム様の字です! これはお宝確定♡ ラナより” 

 そこから広がるように、

 “今年の目標は小説20冊に画集5冊☆ 絶対取りに来て下さいね! ジュリア” 

 “ニオティム最高! エリザベス”

 侍女やニオティム仲間たちが続いた後、

 “サラ様に永遠の忠誠を!”と書かれた横には小さな文字で数え切れないほどの連名があった。


 少し大きめなスペースには

 “ガチョーン(前期乙女様語録より)もダサい⁉ 今後も切れ味鋭い『ツッコミ』よろしくお願いします! トマ”

 “次回は僕の家! 暴走禁止!! まあメンタル鍛えて待ってます。ニオ”

 “3/30、更に特別な日になったよ! トマさんや侍女さんも来てくれるって。また早く会いたいな♡ ティナ”


 そうして中央下、一番大きな文字で、


 “いつもサラの傍に! ティム”


 その横には奇怪な図があった。(いびつ)な丸の中に線が沢山入っているその図の下には、“↑一応ボタンのつもり…… ”と書かれていて、思わず笑みが溢れる。


「ふふ、何これ。ダンゴムシみたい……」


 読んでいる途中から鼻の奥がツンと痛くなってきていたけれど、もう止められなかった。私は寄せ書きに涙がかからないように気をつけつつ、抱きしめて号泣した。


 明日はちょうど休日だから、大きなショッピングモールへ行こう。

 アクセサリーケースと、カードの額縁を買うために。

 胸元にぶら下がった第二ボタンを握りしめると、私の頬は自然に緩んだ。


 ✽


 高校最後の1年間。何度か告白はされたけど、当然私はリアル恋愛に心動かされることはなかった。

 ティムしか勝たんので仕方がない。


 そして遂に、3月30日。18歳の誕生日がやってきた。


 大学が無事に決まった私は、皆への手紙と、沢山のお土産やティナへの誕生日プレゼントを、スーツケースふたつに収めた。

 耳にイヤリング、胸元に第二ボタンのネックレスは、既に定着した休日の標準装備である。


 あれから一度も連絡が取れないモジャモジャに不安を抱きつつ、あの公園に立って、1つ目の願いが無視されないことを祈って叫んだ。


「創世神!!」

『はいは〜い』


 威厳のかけらもない、能天気な声が聞こえたと思えば、眩しい光に目を瞑る。

 そして、すぐに訪れた大歓声に目を開けると、そこには私の大好きな『推し』と、仲間たちがいた。




創世神、1年に1回なんとか世界繋げるために省エネしてるので、サラと連絡取れませんでした。


これにて本編完結となります☆

番外編2話と、後付ですがプロローグも追加しました(,,ᴗˬᴗ,,)⁾⁾⁾


もしこのお話を好きになっていただけたなら、評価やブクマ、リアクションなどをポチ下さると、私の花がブワッと咲くのでよろしくお願いします.(*´ `*).₊✼୭*

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― 新着の感想 ―
あー、1年待ちはサラでしてくれんの助かるゥ!! めちゃワクワクさせられるわァ! と思ったら終わったァァァァァァァ! お疲れ様でした(´;ω;`)
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