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男装の私が、救国の乙女の『推し』とやらに祭り上げられましたが、本命は幼なじみ(男)一途です!   作者: 矢井瀬 月


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01.男装女子、合コンで餌にされる


「はぁ……こんなにも男らしく育ってしまった、自分が憎い……」


 鏡の前で、深いため息をつく。


 ──17歳。身長176cm、細身で骨太な体格、金髪碧眼。爽やかな好青年風の、甘い顔立ち。


 そんな自分を映す鏡像にげんなりしていると、隣にいた幼なじみのニオが「まあまあ」と苦笑しながら、髪を整えるのを手伝ってくれた。


「ジョーイもそろそろいい年だから、彼女欲しくて必死なんだろ。“ティム”がいないと、女の子あんなに呼べないからさ」


「ジョーイねぇ……。いつまで餌にされるんだか。

 結局こっちがお(いとま)したら、女の子たちも帰っちゃうんでしょ?

 自分で引き止められる技量つけてから誘ってほしいよ」


 近所に住む、3つ年上のジョーイは今年で20歳になる。


 このネスの町では、たいていの若者が20代前半で結婚していく。

 けれど、ジョーイにはいまだ恋人の影もなく、最近はさすがに焦りを隠せない様子だ。

 見た目に少々癖があり、加えて女性を前にすると妙に挙動不審になるせいか、本当にモテない。


 いくら“美青年ティム”で人を集めたって効果は見込めないと思うのだけれど。


 色々と不満のある、ジョーイ主催の女性との飲み会に参加し続けるのには理由(わけ)があった。


「そろそろ時間だ。行こう、“ティナ”」


 ウィッグから一房はみ出していた淡金色の地毛を、ニオの指で優しく押し込まれて、私はくすぐったさに首をすくめた。


 出掛ける支度を整えながら、ニオに視線を向ける。


 ──ニオ・クレマー。

 17歳、身長182cm、黒い髪に黒い瞳。

 奥二重なのもあり、一見地味で特徴はない、と言われる容貌だ。

 けれど華美ではないとはいえ、彼は良く見ると造りのいい顔立ちをしていた。


 幼い頃に私の両親が他界してから、私はニオの家に引き取られて育った。

 両親が逝去した原因は流行り病。

 彼らが隔離された時、感染を免れた私を、自らの家族に頼んで家に招き入れてくれたのは、ニオだった。


 何も喉を通らない私に、拙い手つきで作ったスープを、根気よく、一匙ずつ冷ましながら口に運んでくれたのもニオ。

 両親との永遠の別れに打ちひしがれた日、一緒に泣いて、寄り添って寝てくれたのもニオ。

 優しいニオ。大好きなニオ。

 

 今の私が在るのは全てニオのおかげなのだ。


 本来ならきっと。いや絶対、彼はモテる筈だ。

 けれど、私のせいでニオはモテない。


 私こと、ティナ・フォスターの男装した姿である “ティム”が女の子たちの視線を攫うからだ。


 だから、ニオを誰にも奪われないために、今日も私は完璧な男装をするのだった。


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