表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/53

16.違う、そうじゃない


「ニオ待って!」

「ティム」


 早足のニオに追いつくために走った私は、ニオの袖を掴みながら少し息を整えた。


「ごめん!」

「何が?」

「かわいいとか言われて。男らしくしなきゃなのにさ、心配してくれてるから怒ってんじゃないの?」

「別に大丈夫じゃないかな。サラ様の琴線に触れただけで、男としての範疇は超えてないと思うけど」

「え?」

「え?」


 では、何故不機嫌なのだろうか。

 ニオが私を邪魔に思っている説は、私がお茶会に参加するようになって以降の、ニオからサラへの態度を見ていても違う気がした。


「トマさんと何喋ってたの? あの時」


 斜め上からの質問に、私は肩透かしをくらった気分でニオを見る。

「え、またトマさん?」

「まるで初恋におちた少女、みたいな顔してた」


 ジロッと睨んでくるニオの言葉に、私は慌てた。


「え、嘘! そんな顔してたの!? そんなんじゃないのに。ちょっと可愛いなって思っただけなのに!!」


 ニオの不機嫌さが増す。

『少女』感が出てたから心配をかけたのだと、そう理解した私は謝った。


「ごめん。気をつける」

「謝られても困るよ。じゃ、仕事しに行くから」


 ニオからこんなに冷たい態度を取られたのは初めてで、寂寥感(せきりょうかん)に涙が出そうになった。

 ひとりでこの気持ちを消化するのが難しかった私は、サラのところへ重い足取りで引き返した。


「どうしたの!?」

 暫しテラス席で寛いでいたらしいサラが、慌てて駆け寄ってくる。


「酷い顔だよ?……いや酷いって言っても美しいけど……影があるイケメンも最高だけど……あっ、そうじゃなくて、えっと!」

 

 心配してフォローして、墓穴をほってまたフォローして、を慌てながら繰り返すサラに、

「ニオとケンカした」

 とだけ話すと、それ以上は何も聞かずに、頭を撫でてくれた。


「ティムの髪の毛はサラサラで気持ちいいねー」

 そう優しく触れられるのに甘えて、この日は夕食時間まで、机に突っ伏したまま、ずっと撫でてもらっていた。


 花はまた、一輪咲いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ