表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/85

第六章:ゴーレムの廃鉱でモップ乱舞!

ダンジョン深部。

冷気と鉄のにおいが立ち込める広大な鉱道の前に、ひとりの男が立っていた。


「うーわ、今回もいい感じに汚ぇなぁ……」


そう、彼こそがこの世界で“最も地味で、最も必要とされていない”職業――**ダンジョン清掃員(ランクF)**である山田純一であった。


聖銀製の魔導モップ《クラリネットX》を肩に担ぎながら、山田はため息をつく。


「鉱山ダンジョンって、こう……もっと鉱石とか宝箱とかワクワク要素があると思ったのに、これ、完全に“使い捨てられた感”じゃん……」


背後の岩壁には、「ツメ折れる」「通るな死ぬぞ」といった謎のチョーク書きが連続しており、視界の先には――崩れたレール、錆びたトロッコ、そしてそこかしこに転がるゴーレムの残骸。


そのとき、背後の通信石がピコンと鳴った。


「……ん?またアイツか」


声の主は、山田の“清掃対象”を設計している男――国家認定ダンジョン設計士ランクA、アーク・トレイスだった。


《アーク・トレイスだ。今回の廃鉱ダンジョン、かつて精霊鉱石を採掘していたが、ゴーレムの暴走により放棄された。》


「うん、それが現場で伝わってくるぐらいボロボロですよ?」


《だが、私は敢えて修復を拒んだ。“廃墟は語る”。崩れた鉄路、煤けた石壁、積層する油汚れ。それらが失われた時間を語るのだ。》


「いやいや、語るっていうか、汚すぎてゴブリンも住んでないよ!?さっきカビたネズミが俺にピースして去ってったよ!?」


《ちなみに、ゴーレムの潤滑油が自然発酵して幻覚成分を放っている。掃除の際は深呼吸しないように。》


「それ、先に言え!!ていうか掃除させるなよ!?」


■汚染レベルSS:鉱道の三大汚れ


・油まみれのゴーレム残骸

 → 転倒するとほぼ確実に油まみれ。1体につきバケツ2杯の洗浄液消費。


・腐食性粉塵(たぶん金属由来)

 → 吸うと喉がガラガラ、顔が粉まみれで“パウダーおじさん”状態に。


・謎の黒苔(発光する)

 → モップで触れると「もぉおぉぉぉ……」と呻く。誰かの念か?


「っつーか、このレベル、清掃員Fランクの仕事じゃないからな!?普通に勇者案件だろ!」


そう叫びつつも、山田は覚悟を決めた。


「よし、いくぞ……クラリネットX、発動!」


《スキル:モップ術・初級》

──クラリネットXがしゅぱぱぱ!と回転し、聖銀の波が油汚れを切り裂いていく。


「これぞモップ道!地味だけど……美しいッ!!」


《スキル:掃除する者に祝福あれ》


煌めく浄化フィールドが広がり、床がピカピカに。汚れと共に悪臭も消える。


《スキル:不思議な残業魂》


「はぁっ……体力切れてきた……でも、10分は延長できるッ……ッ!」


山田は己の限界と戦いながら、ゴーレムの油をひとつずつ拭き取り、粉塵を沈め、黒苔をそっと撫でるように除去した。


「モップ一本で、誰よりも世界をピカピカにしてやるッ!」


■終末、廃鉱の光


清掃完了の鈴が鳴る頃――鉱山奥の岩が音を立てて動いた。


そこには美しく整った金属通路が現れ、新たな階層へと続いていた。


通信石がまた鳴る。


《素晴らしい。廃墟に宿る“物語”を損なわずに清掃した。……君のセンス、予想以上だ。》


「いや、損なうも何も、全部拭き取ってるからな!設計者のクセが強すぎんのよ!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ