第六十五章:アーク、湯屋に沈む!〜理論と蒸気の果てに〜
前章、地獄の温泉スライム掃除を強行した山田とバルド。
しかし、アーク・トレイスだけは、湯の縁に立ち、腕を組んだまま動かない。
アーク︰「……無意味です。このような空間に、設計士としての意義など一欠片もありません」
山田︰「あー……いや、たしかにリラックスはしづらいかもしれませんけど……」
バルド︰「ケッ!また“机上理論”かよ。だったら黙って見てろってんだ!」
湯煙の中で、バルドがスライム娘を殴り倒しながら床のヌメリをモップでふき取る。
スライム娘︰「きゃあぁあっ!?今日はデトックスモードじゃないのにぃっ!!」
山田︰「あの、“デトックスモード”ってなんですか!?あと、ヌメリ多すぎ!」
湯けむりが渦を巻く中――突如、**天井がガタン!**と揺れる。
アーク︰「……来ましたね。予想通り、構造破綻が発生しました」
バルド︰「はぁ!?何ぃ!?今度は上かよッ!?」
湯屋の天井から、**巨大なスライム親玉(キングとろ湯)**がドロォォ……と降下してきた!
キングとろ湯︰「我は、この湯屋の“濾過されし長老”……掃除など、無粋の極み……」
山田︰「どんな肩書きだよ!?」
バルドが地脈ハンマーを握り、構える。
バルド︰「山田!お前は下を頼む!天井は俺がぶっ叩く!!」
山田︰「って、上も下もスライムだらけじゃん!!」
アーク︰「……くだらない。そもそもこのダンジョン、蒸気と構造材の組み合わせが致命的。設計図を見ろ、完全に……」
そう言って、設計図を広げたその瞬間――
ぶちゅっ!!
蒸気スライムの一撃が、アークの顔面に命中!
アーク︰「ふ、ごほっ!?……ぐ、ぐぬっ……視界が……モニタリングできな……」
ドロドロになった眼鏡を拭こうとしたアークだったが、拭いた手もすでにベチョベチョ。
山田︰「うわああ、アークが蒸気スライムに溺れてるーーー!!」
バルド︰「理屈じゃねぇッ!眼鏡が曇ると誰だって無力だ!」
アーク︰「くっ……このような環境に設計美学は……ないッ……!」
その瞬間、山田がアークのもとに飛び込み、モップを一閃!
山田︰「祝福あれぇぇえええ!!」
《掃除する者に祝福あれ》が炸裂!蒸気スライムが一斉に蒸発し、
浴場の空気が一気に澄み渡った。
アーク︰「……ふむ、なるほど。モップの威力、侮れませんね」
山田︰「いや、今それ言います!?」
最後はバルドの地脈ハンマーによって天井スライムごと破砕され、湯屋は再び静けさを取り戻す。
バルド︰「やれやれ……これでようやく、風呂として機能すんだろ……」
アーク︰「ふむ……案外、悪くない温度です。設計変更する価値が……あるかもしれませんね」
山田︰「やっと認めたんだ!? この“温泉地獄”、清掃しがいがありすぎますよ!!」
こうして、“理論”と“現場”と“清掃”が交わる湯けむりダンジョンは、ほんの少しだけ、落ち着きを取り戻したのだった――。




