第五十八章:迷宮カフェと伝説のクレーム対応!
そこは、ダンジョンの一角に突如として現れた「迷宮カフェ」だった。
怪しい光を放つシャンデリア、落とし穴の上に設置されたカウンター席、魔法陣が描かれたコースター。そして、メニュー表には――
山田︰「『日替わり魂抜きパフェ』『エルフの耳茶漬け』『無言の呪いラテ(喋るとこぼれる)』……って、まともなのがないじゃん!!」
店内では、スライムがバリスタを務め、ミノタウロスがケーキを運び、ドラゴンの子どもが子ども椅子でアイスを食べていた。
そんな異種族カフェに、山田は“清掃依頼”として派遣されてきた――はずだった。
???:「ようこそ、迷宮カフェへ!店長の“ナンジャ・モグレール”と申します!」
登場したのは、ひげをカールさせた謎の紳士風モンスター。背中にタコ足が揺れている。
ナンジャ:「さっそくですが、困っております。我が店、最近“クレーム”が殺到しておりまして」
山田︰「クレーム……って、そりゃあこのメニューじゃ来るよ!」
ナンジャ:「いえ、“ダンジョン的すぎる内装”が原因かと。トイレが一方通行だったり、階段が無限ループしていたり……」
そこへ、ガチャリと店の裏口から登場する黒コート。
アーク︰「……やはりこのカフェは設計の段階で終わっている」
山田︰「また来たー!?ていうか君、温泉から直行してない!?」
アーク︰「私が設計監修を依頼されたのだ。この“迷宮カフェ”を“芸術の空間”へと再生させる……それが今の私の使命だ」
続いてドアを破壊して突入してきた巨漢。
バルド︰「うおおお!このトイレの床、傾いてやがるじゃねーか!コーヒーこぼれたらどうする気だよ!!」
山田︰「出たな現場親方!!って、今回は掃除依頼なのになんでまたバチバチ始まってんだよぉ!」
アーク︰「まずはこの椅子。デザイン性が死んでいる。美しさのない座席は客を遠ざける」
バルド︰「座れりゃいいんだよ!てめぇのデザインは、足が三本必要じゃねぇか!!」
山田︰「クレームの理由が今ここにある気がしてきた!!」
そのとき、背後でモンスター客たちの怒号が響く。
サキュバス客︰「あのぉ〜、私のパフェに“封印石”が混ざってるんですけど〜♡」
ゴブリン客︰「うぎゃー!おれのケーキ、食ったら倍になるってどういうことーッ!」
混沌とする迷宮カフェ。その裏で、掃除員・山田は、たったひとりで床に落ちた「魔導カップのかけら」をモップで拾い続けていた。
山田︰「……っていうか、僕だけマトモな仕事してるのおかしくない!?」
やがて、バルドとアークの言い合いは“カフェ構造改革委員会”という名の殴り合いに突入し――
アーク︰「私の理論が正しいと証明するには……このスプーン投擲試験で十分だ!」
バルド︰「上等だ!現場流“魔力反発皿投げ”で受けて立つ!」
山田︰「あーー!!それ、食器じゃなくて武器になってるーーー!!」
カフェの厨房で暴れる二人の設計士(?)と、絶賛床磨き中のFラン清掃員。
今日も異世界の片隅で、静かにモップが煌めくのであった。




