第五十七章:スケルトン温泉郷ダンジョン〜魂まで洗えます〜
そこはまさに、骨と湯けむりの楽園だった。
スケルトンたちがくつろぐ露天風呂。白骨の背中を流す白骨。湯船でマッサージを受ける骨の王様。
異様に整ったタオルマナー。微笑ましいが、よく見るとみんな肋骨がカタカタ鳴っている。
山田︰「……なんで、骨だけなのに、ちゃんと“のぼせ顔”してんの?」
スケルトンA︰「カタカタ(※訳:気分、ってやつです)」
山田︰「訳されてもよくわからん!!」
山田純一、今日の任務は“スケルトン温泉郷ダンジョン”の清掃。
だが、床はツルツル、湯気はモクモク、全体的に視界はゼロに近い。
山田︰「こ、こんな状態でどうやって掃除すんのさ……床に落ちてる骨と装飾用の骨の区別もつかないんだけど……!」
???︰「困っているようだな、山田」
湯けむりの中から現れたのは、黒コートの男――
アーク︰「私の設計したこの温泉ダンジョンは、“骨の癒やし”を追求した究極のくつろぎ空間……。お前には、少し贅沢すぎたか?」
山田︰「いや贅沢っていうか、情報過多なんですよ!!スケルトンがサウナ入ってる世界、こわい!!」
アーク︰「湯船の温度は魔法陣で調整済み。骨格に合わせて椅子も傾斜を持たせた。全ては構造美の追求の結果だ」
そこへ、ズドォォンッッ!と脱衣所の床板が爆発し、あの男が飛び出した!
バルド︰「何が構造美だコラァ!!骨風呂だあ!?地脈の熱をこんな無駄に使いやがって!!現場の怒り見せてやる!!!」
山田︰「あーー!!やっぱり来たぁぁ!!スケルトン温泉でもバチバチ始まったーー!!」
アーク︰「温泉とは癒やしであるべき。なのに君はその“地脈流”を乱す。もはや暴徒だな」
バルド︰「癒やしだぁ?この温度じゃ、骨が茹だってスープになるぞ!?“骨髄だし”にする気かこの設計野郎!!」
スケルトンB︰「カタカタ……(※訳:それはそれで旨そう)」
山田︰「いや、食うなよ!?お前ら仲間だろ!?」
湯けむりの中で、アークが設計図を広げれば、バルドはハンマーで床を叩き割る。
そのたびにスケルトンたちが「カタカタ」と騒ぎ、湯気に骨が舞い――
山田︰「うわあああ!!また誰かの大腿骨が飛んできたぁぁ!!やめて!モップじゃキャッチできないよお!!」
バルド︰「山田ァ!湯けむりの中に埋もれた魔力導管を探せ!この温泉、熱源がズレてる!!」
アーク︰「湯船の配置には意味がある。北側の冷気と南の地熱を交差させて……」
バルド︰「んなもんは湯加減の前に人加減だろうが!!」
山田︰「どっちか掃除のしやすさも考えてくれぇぇぇ!!」
そしてついに、スケルトンたちが湯船から立ち上がり――
スケルトンたち︰「カタカタ……(※訳:風呂、掃除中につき一時撤収)」
骨の群れがざわざわと脱衣所へ引き上げていったその瞬間。
山田︰「……あれ?いまがチャンスじゃね?」
バルド︰「よぉし、いくぞ山田!オレとお前で、この風呂場の床を全部磨き直す!!」
アーク︰「待て、まずは設計意図に基づいた清掃動線を――」
山田︰「やっぱり君たち……最強に面倒くさいよおおお!!」
こうしてスケルトンたちの骨休めの場は、再びモップとハンマー、そして図面にまみれて再設計されていくのであった――。




