第五十五章:ヤマタノオロチの武家屋敷ダンジョン!八つの首とウザさも八倍!?
――その日、山田は言葉を失っていた。
山田︰「え、これ……ダンジョンですよね?ただの和風屋敷じゃなくて?」
目の前に広がっていたのは、豪壮な武家屋敷。朱塗りの門、枯山水の中庭、襖には雅な龍の絵……そのすべてが異常なまでに“ヌルテカ”だった。
山田︰「うわっ、なんで床がベタベタしてるの……!?しかも、八箇所から同時に液体の音が……」
――シュルシュルシュル……
襖の奥から伸びてきたのは、八本の巨大な首。それぞれがまるで違う人格のように喋り出した。
オロチ首①︰「ほほう、今度の清掃員は中々若いのぅ」
オロチ首②︰「おい、茶菓子は?清掃員にも礼儀がいるぞ!」
オロチ首③︰「ああーまた廊下にヨダレ垂らしちゃったわー」
オロチ首④︰「この襖、もっと派手な金屏風に変えてくれんか」
オロチ首⑤︰「床下のモンスター、まだ生きてるかな……」
オロチ首⑥︰「そこのスリッパ、左だけないぞ」
オロチ首⑦︰「将棋でもしようや、坊主」
オロチ首⑧︰「掃除ついでにマッサージも頼む」
山田︰「首、多っ!?いや、なんで一匹で大家族会議始まってるの!?」
そこへ、どこからともなく漂ってきた香――それは、練り香水と墨汁と汗とヤマタノオロチ汁が混じった“和臭”。
山田︰「うっ……この匂い、クラリネットXでも浄化しきれない……!でもやるしかない!」
山田は震える手でモップ――クラリネットXを構え、スキル《掃除する者に祝福あれ》を発動。
床が光り、瞬時に清潔ゾーンが広がる。
山田︰「おお……なんか、床が……畳に戻った!?」
その時、畳の間から、静かに足音が。
???︰「掃除の進捗はどうかね?」
そう言って現れたのは、いつも通り黒コートを揺らすアーク・トレイス。彼は扇子を片手に、和の風情に妙に溶け込んでいた。
アーク︰「ふむ、これは“和風×モンスター”の高度な融合構造……設計者に美学は感じないが、テーマ性は面白い」
山田︰「アークさん!?また出たよ設計評論モード!こっちは床がヌルッヌルなんですけど!?」
アーク︰「君が滑って転ぶのも、この空間構成が“落差”と“動線”の意識を促すためだ。設計者の意図だよ」
山田︰「意図が邪悪すぎるよ!あとそのヤマタノオロチ、自由すぎるし!」
オロチ首⑤︰「ふむ、貴様ら見所があるな……次の間取りも見せよう」
ガラリと襖が開くと、そこには――
“八畳一間に八首を詰め込んだお風呂場”が。
山田︰「いや詰め込みすぎィ!!もうダンジョンっていうか、“妖怪大家族ホームドラマ”なんだけどッ!!」
アーク︰「……構造として破綻している。建て直しが必要だな。いや、いっそ燃やして更地にしよう」
オロチ首⑧︰「えっ燃やすの!?それは困る!最近ようやく露天風呂の予約取れたのに!」
山田︰「だからなんで温泉ダンジョンじゃなくて屋敷ダンジョンなんですかァァァ!!」
――結局この日、山田は八つの首をなだめつつ屋敷の全床をモップ掛けし、
最後には“宴席の片付け”までさせられるのだった。
その晩、ナナ婆の手配でようやく温泉に入れた山田は、ひとことだけ呟いた。
山田︰「モップじゃなくて除霊師を呼んでくれ……」




