第四十三章︰ケンタウロスの牧場ダンジョン!草食系なのに蹴りが痛ぇ!?
サクッ…サクサクッ……
異世界の草原を踏みしめる足音が、山の風に混じって響く。
山田:「……え、ここって本当に“ダンジョン”なんすか?」
ナナ婆:「うむ、正式名称は《第七十二管理区・半有機迷宮型ダンジョン――ケンタウロスの牧場》。元はバリバリの迷宮型じゃったが、今はなぜか放牧地に改装されておる」
山田:「いや、放牧って……オレ、牛舎掃除じゃなくてダンジョン掃除に来たんですけど!?」
ナナ婆:「騎士団がよく“体力訓練”と称してここで馬と一緒に走っとる。人馬の絆が生まれるらしいぞ。ま、清掃範囲はあの柵の中じゃ」
山田:「って、あれ全部……ケンタウロス!?めちゃめちゃ筋肉ついてる!!馬部分のケツがピカピカなんだけど……!」
そのとき――
???:「誰がケツだコラァアアアア!」
山田:「ヒッ!」
馬蹄の音が地響きのように迫り、次の瞬間、巨大な影が跳ね上がった。
ドガァッ!!
山田:「ぶえええッ!?」
空を飛ぶモップ清掃員。体当たりを食らい、牧草の山に突っ込む。
???:「ケンタウロス族の誇りに“ケツピカ”は無い!これは“戦士の艶”だッ!」
ナナ婆(遠くで): 「おお、これは族長のトゥルシェだのう。めんどくさいやつじゃ」
山田:「あの、トゥルシェさん?あの、今日は掃除だけで、戦闘とかじゃなくて……!」
トゥルシェ:「清掃?ほぅ……草原にモップを持ち込んだ男が清掃だと? ――よし、勝負だッ!」
山田:「なぜそうなるうううう!?」
こうして、山田純一(清掃員・Fラン)はまたしても、
意味のわからない文化衝突と草まみれの闘争に巻き込まれるのであった――
トゥルシェ:「この草原は我らケンタウロス族が誇る魂のフィールド……。無断で“芝を撫でる”者は、即刻、対峙されるのが掟!」
山田:「芝を撫でるって掃除のこと!?モップで!?いや、じゃあどうやって掃除しろと――」
トゥルシェ:「問答無用!我らが伝統、“草結界速駆け三本勝負”を受けるがよいッ!」
山田:「またこの世界特有のよくわからない勝負だーっ!!」
ナナ婆(離れた岩陰でおにぎり食べながら):「ほれ山田ァ、勝てば掃除の許可も出るぞ〜」
山田:「その勝ち方が見えないんですよおおぉぉぉ!!」
◆ 第一戦:モップ vs 鬣ブロー
――ルール:草原の中央に生えた《伝説の大根》を、より美しく引き抜いた者の勝ち。
山田:「いや、なんだそのルール!?大根!?」
トゥルシェ:「ケンタウロス流では、野菜すら“美”を持って扱うものだ!」
山田:「知らんわ!」
(数分後)
山田:「よぉし……浄化スキル《掃除する者に祝福あれ》発動!草をピカピカにしながら、モップで根元を柔らかくして……シュッ!」
スポォッ!
トゥルシェ:「なっ……見事なモップ捌き!艶まで出ておるだと……!」
ナナ婆:「うむ、大根に光沢があるな」
山田:「勝った!? ……勝ったのか俺!?」
トゥルシェ:「だがこれは一戦目だ!草結界速駆け三本勝負、次の戦いだ!」
◆ 第二戦:馬蹄の芝バウンド合戦
――ルール:草のうえで一番“響きの良い音”を出した者が勝ち。
トゥルシェ:「いざ!《二段踵・サンダーホース音頭》!!」
ドンッッッッッ!!
山田:「うるさっ!!」
(草原に雷が走るレベルの轟音)
山田:「こっちは清掃員だぞ!音なんて出す技ねぇよ!」
ナナ婆:「クラリネットXに“振動清掃モード”があるぞ。試してみ」
山田:「マジか!?じゃあいっけええええッ!」
ヴォオオオオォオ……ギュインギュインギュイン……
ピカァァァッ……ッシャアアアアア!
(草原が虹色に震える高周波)
トゥルシェ:「なっ……わ、我が鼓膜がァァァァ!」
(バッタリ倒れる)
ナナ婆:「音の評価は私がしよう。うむ、山田の“モップの謎音”の勝ちじゃな」
山田:「嬉しくない勝ち方ぁぁぁ!!」
◆ 最終戦:ケンタウロス式モップレース(?)
――ルール:モップを装備した状態で、ケンタウロスと共に草原を一周する。最も地面をキレイにした者が勝ち。
山田:「これもう掃除じゃん!!俺の領域!!」
トゥルシェ:「だが乗馬は禁止だ。我らは走る。貴様も“人の足”で勝負しろ!」
山田:「くっ……ならば!」
(10分後)
山田:「はぁっ……はぁっ……《不思議な残業魂》発動……ッ!」
(体力ゲージがゼロを振り切ったその瞬間、謎の金色エフェクトが山田を包む)
山田:「残業パワァァァァァァァ!!」
ゴゴゴゴゴ……
地を這うモップの軌跡が光り、草原が一面ピッカピカになる。
トゥルシェ:「ぐっ……ま、負けた……っ!人間風情に、我が牧場を……!」
ナナ婆:「勝者、山田! 本日よりこの草原の“芝管理清掃権”を与えるッ」
山田:「やったーー! ……って、管理清掃権って何!?また仕事増えたのぉぉ!?」
こうしてまた一つ、清掃範囲が広がっただけで終わるダンジョン攻略であった。
(つづく)




