第三十七章︰サハギンの水族館ダンジョン!モップと墨とイカの異形!?
水中ドームに覆われた透明通路の先、見渡す限りのサンゴ礁。だがその実態は――
山田︰「あのぉ……ナナ婆。ここ、本当に“清掃依頼”なんですか?だって水族館っすよ!?普通に営業してそうなんですが!?」
ナナ婆︰「うむ。見た目は綺麗じゃがな、中がヌルッヌルでな。滑って落ちて折れた観光客が十数人おる。あと墨臭い。非常に墨臭い」
山田︰「つまり原因は……?」
ナナ婆︰「巨大サハギンが飼っている、飼いイカじゃな。名前は“イカ左衛門”。気に入らん客に墨を吐いて帰らせるそうじゃ。あと床の掃除も拒否しておる」
山田︰「なんだその縄張り意識の強い魚介系ペットは……!」
そこへ、ギィ……と透明通路の自動扉が開く。
アーク︰「……やはりここか」
山田︰「アーク!?お前も来てたのか!?」
アーク︰「当たり前だ。ここは僕の卒業設計のひとつ。だが、清掃業務が正しく運用されていないとは…設計士として許せんな」
ナナ婆︰「ふむ。ならお主も手伝え。今日は山田の教育日じゃ。ワシは“ヌメリの師範代”として同行する」
アーク︰「……意味不明な称号だが、承知した。合理性はないが、経験則には意味がある」
山田︰「待って!?俺、掃除しに来ただけだよね!?今日、明らかにバトルイベントくるよね!?」
■ダンジョン・水族ゾーンに突入!
クラリネットXを構え、山田は歩を進める。
通路の壁を泳ぐサハギンたちが、異様にピカピカの床を見てザワついている。
サハギンA︰「ヌルヌル床が……乾いとる!?」
サハギンB︰「ついに“あの者”が来たか……モップの使い手……ッ!」
山田︰「どんだけ伝説みたいな扱いされてんの!?俺Fランだよ!?新米だよ!?」
ナナ婆︰「山田よ。ヌメリと戦う覚悟はできたかの?」
山田︰「その覚悟、俺の人生に一回も求められたことないです!!」
ドゴォォン!
突如、通路の奥から墨の噴射――そして現れたのは巨大なイカ!
ナナ婆︰「出たな、イカ左衛門……!」
イカ左衛門︰「フォォォォ……」
山田︰「なにその呼吸音!?墨と一緒に威圧感まで吐いてくんなーっ!」
■クラリネットX vs 墨の嵐!
山田︰「くらえッ!《モップ術・初級》!クラリネット・スイープッ!!」
ズザァァァッ!!
光るモップが墨の海をかき分ける。だが――
ブシューー!!
再び噴き出される墨!墨!!墨ィィ!!
アーク︰「山田、バカめ。水中対応設計のないモップでは、いずれ感電するぞ。君の武器、すでに“ぬれぞうきんX”と化している」
山田︰「なにそのネーミング!?黙ってないでなんか対策しろよォォ!!」
ナナ婆︰「山田!ワシの“老体の知恵”を使え!モップにこの“骨粉”をふりかけるのじゃ!」
山田︰「なにそれ!?……って、床との摩擦が増して滑らない!?すげぇ、摩擦力チューンアップ!」
アーク︰「馬鹿げている……が、その効果、理にはかなっている……ッ!」
山田︰「うおおおおお!くらえ、クラリネットX完全磨きモード!!」
ギュルギュルギュル……!
墨を巻き取り、回転しながら滑走する山田!
そして――
山田︰「ぬめりよ、成仏してくれぇぇぇッッ!!」
バッシャァアアァン!
■決着!そして静けさ
イカ左衛門︰「フォォォ……ピカピカ……」
(※天井に貼り付きながら幸福そう)
サハギンA︰「神だ……床の神が来たのだ……」
サハギンB︰「モップ教……信仰を始めよう……」
ナナ婆︰「ふぉっふぉっふぉ!山田、よくやった。イカにも勝ったな」
山田︰「もう“イカにも”ってダジャレ言ってる余裕すらない……」
アーク︰「……次回、この施設の床素材には、“墨吸収樹脂”を提案しておこう。清掃員の命が持たない」
山田︰「設計ミスを反省してる風で、全くしてねぇなこのメガネ……」




