第十六章︰リッチの書庫ダンジョン!飛び交う禁書とモップの戦い!
「……また紙の山かよッ!」
そう叫んだのは山田純一、異世界転生して“なぜか”勇者ではなく清掃員になった男である。
今日は魔王軍の古文書管理区域、通称《リッチの書庫ダンジョン》の清掃依頼だ。
壁一面が本棚――天井にまで本が詰まってる。
空中にも本が浮いている。浮遊しているんじゃない、飛び交ってるんだ。
「ここ……地味に物理的に危険なんだよな……」
「知のダンジョンは静かに尊重しろ」
眼鏡をクイッと上げながら、アーク・トレイスが背後で語る。
彼は国家認定のAランク《ダンジョン設計士》であり、この書庫の設計者。
「……これも、お前が作ったの?」
「当然だ。“飛ぶ本”は、知識への飢えを表している。まさに芸術だろう」
「俺には“死角からの攻撃”にしか見えねえ!」
案の定、頭上から分厚い禁呪大全が直撃。
\ドガッ/
「……イタァアアア!!何キロだよこれ!」
■リッチとのご対面
ダンジョン最奥、中央には魔力に満ちた骸骨――リッチ様が鎮座していた。
両手には本、背後には本、スカートみたいに本、本、本、本、ホォン!
「――また掃除か……あれほど“読了後は元の場所に戻せ”と言っているのに」
「“戻せ”じゃなくて“落ちてる”んだよォ!」
山田、クラリネットX(清掃モップ)を握り締めて突撃。
モップで床を滑走、紙ゴミを掻き取りながら接近戦突入!
「スキル発動!《掃除する者に祝福あれ》ッ!」
周囲の紙くずが一瞬で光を放ち、聖域のように清浄化される――
「貴様…それ、どこで手に入れた。まさかあのお婆の……!?」
「うちの師匠ですけど! ナナ婆の掃除魂は俺が受け継いだ!」
■クラリネットX vs 魔導書軍団!
本棚がうなり、本が山田に牙をむく。
「来たなッ……《モップ術・初級》 “八の字返し”!!」
ぶんっ、ぶんっ――
クラリネットXのしなりが空を裂き、飛んできた呪詛書を反射的に元の棚へ収納!
「本棚指定収納スキル!?何だそれ!?」
「ワシのダンジョンが……こんなにも整理整頓されていくとは……ッ!」
リッチの頬(骨)に、ひとすじの涙(幻影)が伝う。
■戦闘終了(という名の清掃完了)
30分後――
本は棚に戻り、床はツルツル、呪いのインクも拭き取られ、
“知の迷宮”はついに“図書室”へと戻った。
「…見事だ、山田純一。そなたにこれを授けよう」
――《禁書封じの栞》を獲得!
読むと頭が爆発するレベルの禁書に、栞を挟むだけで眠らせられる便利アイテムである。
■アークのコメント
「……整理されすぎて、逆に無機質だな」
「感謝くらいしろよォ!!」
■称号獲得!
・《知を磨く者》
・《本の敵、ホコリの味方》
・《リッチからの信頼(限定エリアのみ)》