第十四章:セイレーンの泉で心もモップも乱される!?歌って掃除の癒し地獄!
「――まさか、歌で掃除が妨害されるとはな……」
異世界転生し、なぜかモップを武器にダンジョン清掃員となった男・山田純一は、今、頭を抱えていた。
目の前には煌びやかな水の神殿……その名もセイレーンの泉ダンジョン。
しかし、そこに巣食うモンスターは――
♪ようこそ〜 清掃員〜
♪君のモップ〜 とても可愛いねぇ〜
♪少し〜 こっちに〜 寄ってみてよ〜?
「歌うな! 誘うな! 汚すな!」
■現場状況メモ:セイレーンの泉
・湧き水の泉があちこちから噴き出している
・床はぬれっぱなし、天井から水滴、壁には苔とツタ
・セイレーンたちの歌声で清掃員の集中力がマイナス80%
「クラリネットX、今日ばかりはお前に頼るぞ!」
■クラリネットX:水中掃除モード《ウォータースピン》
「くらえ! 回転式水中モップ術・渦潮の型ッ!」
ズシャアァァァァァーー!!
水をかき分けながら床に残る苔と歌声の残響を一掃!
しかし――
♪あら素敵〜 その渦〜 まるで私の心みたい〜♪
「なんでポエム風になるの!?」
■通信:アーク・トレイスからのコメント
《セイレーンの泉は、私が設計した“誘惑と水音の調和”による癒しの聖域だ。モップごときで侵入するとはな》
「癒しっていうか、頭の中がマッサージチェアに潰されそうなんだけど!?」
■セイレーンの主《歌姫エラ=ルーナ》登場!
♪貴方のモップは、綺麗すぎて……私たちの生活感を奪う……
♪でも、ちょっとだけ触れてみたい……
「いや……ちょっと待って……モップに惚れるな」
そして彼女は――
モップを手に取り、まさかのデュエット。
♪ふきふき〜 キュッキュッと〜
♪今日も清めて〜 愛の軌跡〜〜
「なんで歌詞が“掃除”ベースなの!?」
■セイレーンたち、完全掃除堕ち
掃除されるごとに肌はつやつや、声は高音域アップ、ついには――
♪もう、清掃員様以外じゃ満足できない身体に……
「やめろーッ! その台詞はジャンルが変わるからやめろーッ!!」
■清掃完了!
セイレーンたちは感謝の歌を捧げ、泉は光り輝く浄化のパワースポットに。
山田はというと、耳栓をしたまま全身ずぶ濡れで力尽きていた。
【称号獲得】
・《モップと歌う者》
・《水面の騎士》
・《声に惑わされし乙男》