第九章:熱っ!?燃える床とサラマンダー!〜灼熱地獄でモップは乾くのか〜
「おいおいおいおい……乾くにも程があるだろ……!」
火山ダンジョン前――山田純一は、目の前でふよふよと揺れる溶岩流を見て絶望していた。
清掃員たる者、現場に立ってナンボとは言え、これは完全に現場が反逆している。
「空気、熱すぎて喉焼ける……モップより先に俺が燃えるって……!」
背中には、頼れる(?)清掃モップ《クラリネットX》。
だがこの灼熱の前では、乾燥モードMAXのモップと化していた。
《気温は常時68度。灼熱の演出は“魂の解放”をテーマにした設計。》
「解放されるのは俺の水分だよ!魂と一緒に蒸発するわ!」
《ちなみに中央には“溶岩の回廊”を渡るゾーンがあります。両端は崩落。風情でしょ?》
「風情って単語に火属性を感じたの初めてだよ……!」
■ダンジョンの清掃対象
・《焦げ床》:サラマンダーの足跡が残した焼け焦げ床。触ると軽く火傷。
・《すす溜まり》:空中の黒煙が地面に沈着しており、歩くと足が真っ黒になる。
・《炎のたん壺》:謎の火山植物がまき散らす火属性の粘液。赤いモヤが立ち昇る。
■掃除スタート!熱と戦う漢(モップ持ち)
「やるしかねぇ……俺がモップを握るのは、世界を救うためじゃない……!」
《モップ術・初級》、展開!
クラリネットXの先端がぐるぐると回転し、耐熱モードに変形!
モップ部分から魔導水が噴き出し、焦げた床をシュワシュワと冷やしていく。
「シュワッと爽快!サラマンダーの足跡にダイレクトアタック!」
だが、油断は禁物。次の瞬間――
ボフッ!
背後のマグマから、**サラマンダー(全長2.5m・顔がやたら可愛い)**が顔を出した。
「……うわ、マスコットかと思ったら口から火ぃ吹いたぞ!!」
■サラマンダーとの熱戦
「掃除中に襲ってくるとか、営業妨害にも程があるだろ!」
**《掃除する者に祝福あれ》**を発動!
清掃した床が一時的に浄化され、滑りやすくなる。
サラマンダーが勢いよく突っ込んでくるが――
ズルッ!ゴロンゴロン!ジャバーン!
火山の隙間に、自らスライディングで転落していった。
「……掃除は力だな」
《まさか清掃でサラマンダーを足元から落とすとは。やはり美学には物理も必要だ》
「うるせぇ、もっと冷房の効いたダンジョン設計しろ!溶ける!」
《なお、この後“蒸気迷宮ゾーン”が続きます。湿度95%。蒸すぞ》
「いやもう、それサウナだよ!?俺温泉旅行しに来たんじゃないからな!」
「……くっ、体力が……。ダメだ……足が……あああ……」
残業魂が光り輝く――!
《不思議な残業魂、発動──!》
限界を超えて、山田の掃除がさらに加速。
「燃えてるのはダンジョンじゃない……!俺の魂だぁぁあああ!」
■灼熱ゾーン、完全清掃!
すすも、粘液も、焦げも……すべてが“ピカピカ”になり、床は白く輝いた。
「……あちぃ。けど、やりきった……。これが……掃除だ……」
クラリネットXを肩に担ぎ、満足げにうなずく山田。