表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
44/50

044 控えの間の秘密

 俺は魔塔に戻った。大事な事を見逃していたのかもしれない。最初から乳母がエドワード様の側にいない事に違和感があった。だのに、なぜそれを放置してしまったのか。フローリアに意識が集中し過ぎたかもしれない。


 前後の時間軸に乳母の姿が見つからないのだ。だから、犯人でもない乳母の捜索を諦めたのだ。


「デルタ、エドワード王子の乳母を探してくれ」

「え、ティム、乳母は犯行現場にはいなかったんだよ?」

「頼む、いいから探してくれ。遡って、乳母に焦点を合わせてくれ」


「……分かった!任せて」


 エドワード王子の身辺はいずれも公爵家が手配した人材なので、問題がある人物はいないはずだ。だが、公子がおっしゃった王子危篤の時の乳母の顔、正直顔に覚えはないが、髪色が……違ったような気もするし。


 俺は自分の耳たぶの耳飾りに手をやった。ソフィアの声が囁くように聞こえた。ソフィアに渡した時計の音声器だ。映像の解析と打ち合わせ以外の時間はほぼ、付けっぱなしで稼働させている。


(ティム、いつ帰ってくるの……)

 ソフィアの声に、俺の心臓がぎゅっと掴まれたような気がした。


 公爵様の話によると、ソフィアは独自の調査でフローリアの正体に気づいているようだし、前回とフローリアの行動が違う可能性も否めない。早く側に戻ってやりたい。


 デルタが画像をもう一度壁の鏡に投影して、前後の時間を調査している。王妃宮の王子の寝室周辺に焦点を当てている。


「うーん、別に変な動きはないなあ」

「何にもか?」

「うん。まだ王子様は幼児だからねえ、一人でどこかに行く事もないし、いつも誰かに付き添われているし、乳母らしき人と他のお世話係が二、三人いるくらいだよ」


「ふーむ……。夜会の式典の前はどうだ?」

「部屋に、乳母と王子様と陛下が入って行ったよ。これは、何度も見たとこだよねー?」


 ヘルガは今回の『時戻し』で、新しい時間軸に変化が出ないかを研究してくれている。彼女曰く、『時戻し』編んだ糸をほぐすようなものらしく、残滓は解かれた糸の後を読み取るようなものらしい。だから、完全に映像化出来る所もあれば、その陰になり読み取れないものもあるそうだ。


 入って行った後、二人になった経緯が、見えないのだ。その部分の時間がぽっかり抜けている可能性がある。


「ただ、部屋の中では陛下と王子様が二人である事は事実だし、陛下が何か食べさせていたでしょ?どっからお菓子なんか出したかは不明だけど……陛下が実行犯だよ。それで良くない?」


(それでもいいかもしれないが、良くない……!俺が気になって仕方がないから良くないんだ!)


「あ、ティモシー。あれは?陛下の後ろの壁に、上着をかける場所があるよね?前はあんまり気にしてなかったけど、陛下は上着を脱がれてないよね……」

 確かにそうだ。上着をかけるポールがあり、ウィリアム王とエドワード王子の上着が数着、数種類かかっている。二人は、ソファに腰かけたままだ。


「デルタ、入室すると所からもう一度見せてくれ」


 扉の両脇に兵士がいて、部屋に控えていた召使いが中から扉をあける。召使いが外に出て、入れ替わりにウィリアム王と、王子を抱いた乳母が入室して部屋が閉じられた。次の場面は入って来た所からだ。その時、乳母が抱いていた王子を下ろし、陛下が進んで行き、ソファに腰かける。


 すると、隣に王子がウィリアム王の助けを借りて腰かける。周りを見渡しても、誰もいない。


「止めて、ちょっと周りをみせてくれ」


 周りには誰もいない。ソファの前にテーブルがあるだけだ。後ろには衣装……。まてよ。衣装?

 まさか、ここは……クローゼットの中か!


(陛下は、クローゼットの中にいるんだ!)


 俺は慌てて宮殿の見取図を出して広げた。


「どうしたの?ティモシー、何か分かったの?」

 控えの間の場所を確認した。夜会がある場合は、必ず控えの間を用意する。招待客用にも必要だ。令嬢や夫人たちの衣装を整えたり、ちょっとした休憩、密かな密会に使われる場合もある。


 控えの間には、夜会で衣装にトラブルがあった場合のために、予備の衣装を用意しているものだ。


 王と王子の控えの間なのだから、彼らの予備の衣装があるのは当たり前だ。そして、その衣装がかけられている場所は……クローゼットだ。室内に仕切られた場所があり、召使いや侍女と入り衣装を整えるために広いスペースが取られている。


 一見壁が続いているので、部屋の中央に進んだようにも見えたのだが、王子と二人でクローゼットの中に入って行ったのか?乳母は外に残しているのか?それなら、周りに姿がなくても頷ける。


 でもなぜだ?なぜクローゼットの中などに?


 見取図を確認すると、扉のすぐ脇にかなり広いクローゼットスペースがある。


「デルタ、この部屋の扉を三時間前から早送りで見せてくれ」

「了解!」


 鏡に画像が早送りで投影される。扉の両脇に兵士が二人いる光景は変わらない。同じ画像がずっと続く。もう何もないかと思った頃に、一人の召使いの女がワゴンを持って中に入って行った。部屋の中の支度に訪れたようだ。


 その後すぐに兵士の交代があり、暫くしてウィリアム王たちが部屋に来た。そこからはさっきと同じだ。今度は、さっきウィリアム王たちが来た時に扉を開けた召使いが、ワゴンにお茶を準備して戻って来た。これも何度も見た光景だ。お茶を置いてまた出てくるはずだ。


 待てよ。先に一人召使いが入っている。扉を開けた召使いは違う女だ。その召使いは最終的にお茶を出して出ていった。


 先に入った召使いの女はどうした?映像では中で姿は見えなかった。しかも部屋から出ていない。


「デルタ、一番最初に部屋に入って行った召使いの映像、拡大出来るか?」

「うーん、やってみる」

 デルタが、魔法陣に数式を書き足している。それに伴い少しずつ画像が大きくなる。横顔しか見えないが、あれは!

 髪は召使いのメイドキャップに隠れて見えないが、間違いない。


「ティモシー!あれ、側室のフローリアじゃない!」


 ウィリアム王と王子が入室した時には、フローリアが中にいた事になる。出て行ったのは、扉を開けた召使いだけだ。


(あの女、中で何をしていたんだ?あの時に、毒を持ち込んだのか?)


「フローリア、中に隠れていたんじゃないの?」














評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ