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[続] 名無し草




ガサゴソッ





「香澄、外に出るぞ。支度しろ」





「外は危険ですが...」





「大丈夫だ。警察には絶対に見つからない」





「...」





______________________




その日の朝のクロスダウンの光景は違いました。


昨日のガトリング騒ぎが嘘のように澄み切った朝でした。


警察騒ぎもまた嘘のように明るい朝。


そんな朝を、カーキのコートを羽織ってポケットに手を突っ込んで歩く貴女の後ろ姿を眺めるのに幸せを感じる。


そんな朝でした。







「朝ごはんにパン買ってこう。好きなの選べ」





「...」





「香澄?」





「...あっ...すみません。少し、懐かしくて...」


「小さい頃、こうやっておじいちゃんと街を歩きながら気になったお店に行ってはこうしてショーケースを眺めて、私が好きな物を買ってくれました」


「...」





「...」


「そのうさぎのやつが欲しいのか?」





「え!?いや、私は...ッ!」





「親父、そのうさぎのやつふたつくれ」





「はいよ。ちょっと待ってな」





「あ、う...ぅ」





______________________




カツ カツ カツ カツ




「ん...うまいな、中にクリームが入ってて」





「...」


「...変じゃ...ないですか?」






「...変?」






「人斬りの私が...こんな可愛いうさぎのスイーツが本当は好きだなんて、おかしいでしょ」






「おかしくねぇよ」







「...え?」






「お前は元々可愛いんだから」


「おかしくねぇよ、全然」






「あ...」


「...可愛いなんて言葉...私に言うんだ」


「あなたも相当、おかしい人ですね」






「うん、おかしいよ」


「おかしい者同士だな」






「...」


「...ふっ」






「「ぷははははは!!」」






______________________




「あった...まだ船は見つかってないようです」






「山奥に穴掘って埋めたかいがあったな。上に覆った鉄板と草をどけるぞ」






ガガガッ...ザザッ...






「香澄、乗れ」






ポチっ ガチョッ ピピッ






「よし、内部は生きてる...病院まで移動させよう」






ピピーッ






[燃料不足です。燃料:KMHAを補給してください]






「あぁ...そういえば忘れてたな、補給するの」


「香澄。入口前に置いてある宇宙燃料を給油口に入れてくれ。噴射ノズルの近くだ」






ドボドボドボッ






「こうですか?」






「あぁ、そうそう....」


「ってうばぁあああッッ!!どこにぶっかけてんだお前はぁッッ!!?!」






「ん、一番後ろの大きい穴じゃないんですか?」






「そこが噴射ノズルだ!!ガソリン入れたことねぇのかッ!!」






ガチャッ




ダダダダッ






「こ、壊れてないよな...ッ...爆発しないよな...ッ!」


「なッ!」






「ウォーカー。なんで慌てる必要があるんですか?」






「は?」






「拭けばいいじゃないですか。拭けば」






「...」


「あそっかぁ!拭けばいいのかぁ!頭いいなぁ香澄ちゃんは!」






「いや〜んそんなことないですよぉ!」






ふきふきっ






「よーしエンジンかけるぞぉ!」






カチンッ








ボッガァァアアアアアッッ!!!






______________________





ガラガラガラッ






後方噴射ノズルが黒焦げになった直径25mの宇宙船がボロボロのガレージへと運ばれる。


そこは褐色肌の白い髭を蓄えた小太りの爺さんが経営してるメンテナンスガレージであった。


"イラストレアス"という名の店である。






「あ...?なんだこのガラクタは」





錆まみれの宇宙船のナットをしめる白ひげの爺さん。


彼は気だるそうにしゃがれた声でそう発した。





「58年式のVF775-Mだ。噴射口にガソリンが引火しちまった」


「このバカのせいでなぁッ!!」






「な、あなたも引火するの知らなかったでしょッ!」


「ばーかばーか!」






「じゃあバカはお互い様だろうがバーカ!」






「(...ガソリンに火ついたら引火するのは当たり前だろうが、こんバカどもが...)」


「...まぁ、直せねぇこともねぇな」






「...ほ、ほんとか?」






「あぁ。幸いにもエンジンには傷一つついてねぇよ」


「よく手入れされてらぁ」






「じゃあ直せるか...良かった...」


「できれば早めがいい。3日で頼めるか」






「...おいおい、馬鹿なこというな」


「こいつはな、58年のGODレース優勝したバケモノカーだ。パーツなんて残ってるわけねぇ」


「パーツ複製して組み立てて塗装して、まぁ3ヶ月程だな」






「なっ...!」






「GODレース?ってなんですか?」






「火星で開催されてる宇宙船が競い合うレースだ。毎年サーキットで多くの死人が出てるが、優勝チームには一日で億万長者になれるほどの賞金が与えられる」


「そんな危険なレースだから、どっかのバカがGame Of Death (死亡遊戯)と名前をつけた」


「"死に最も近い神のゲーム"。それがGODレースってやつさ」






「へぇ...」









「...ただな、ひとつ分からねぇことは」


「_______なんでこいつがそのレースで優勝した車を持ってるかってことだ」






「...」







_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _



▅▅▅▅薔薇と拳銃▅▅▅▅



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