[終] 駅馬車
「...にしても」
「銃創は貫通していれば治療しやすい。止血さえすれば鉛中毒の症状も予防できる」
「12.7mmの風穴にはこのタンポンで十分だ」
ぐぢゅうっ
「ぐぬぅッ!!」
「それと、骨折に関しては荒治療だ。そこら辺の町医者でも骨折患者に対しては」
バキバギッ
「ぶぎぁッ...!!」
「無理やり真っ直ぐに戻して治す」
「動くな。今固定する」
「絶対違うだろうが...ッ!」
「ま、止血は完了した」
「ところでお前の相棒はいつになったら来るんだ?」
「...もしかしたら、半年後かもな」
「_________待つさ」
_________カンっ カンっ カンっ カンっ
ぎゅむっ
「...来たか」
老朽化した金属の屋根から甲高い音が聞こえる。
厚底の固いブーツと薄い金属が反響し合う音だ。
「(...上か...)」
ギギギィッ...
保安官はガトリングの銃口を上に向ける。
そして__________
__________ガチョッ
コッキングレバーを引いた。
「ウォーカー!逃げ_________!」
ズガガガガガガガッッ!!
ふしゅうぅ....
「うぁぁぁああッッ、ウォーカーァァァァッッ!」
「あぁ、ぁあ...ッッ!!」
「ずぁああッッ!!ぶっ殺してやるッ!!ぶっ殺すぁああ!!」
「...」
バギョッ バギッ ガキッ ドシャッ
ガシッ
「ひとつ...教えてやる」
「_________俺はやはり、悪人だよ」
保安官はにっこりと無垢に口角を上げる。
「ぐ...ごぇ...っ」
「お前をレイプ魔共から救おうが、傷の止血をしてやろうが、善行をいくら積もうが________」
「______結局俺の根本は変わらない」
「______悪人だという根本が_______」
「しかもそれは、俺の体内を脈々と流れ続けている」
「...ぎ...が...っ」
「なあ、知ってるか。俺の父さんと母さんはとても良い人だった。20キロ先の教会に毎日礼拝に行くような聖人さ。だからその両親から生まれた俺自身も善人だと確信していた」
「でも違った。小学1年の時、同級生の女の子を薬漬けにしたその日から俺は善人じゃないと確信してしまった」
「げ...ごげ...」
「...」
「もういい、奴隷市場に売るのはやめだ」
「お前を今すぐここでぶち殺す」
カチャッ
「▅▅▅▅▅▅死ね▅▅▅▅▅▅」
バギョンッ__________
「...」
「...ぐ...ぶぇ...っ」
カツ カツ カツ カツ
「悪人。その言葉に違いはなく」
「しかして仲間を忘れることなかれ」
「さすれば誇り高きゴミと成る」
__________カチャッ
「________いざ、誇り高きゴミとなれ」
べちゃ...ぼたぼた...っ
「うご...このグソ女がぁ"あ"ッッ!!」
「っ...うぉ...かあ...」
「香澄」
「はい」
ぎゅっ
「行きますよ、有栖川」
ダダっ
「待って...ウォーカーが...」
「大丈夫です、他の雑魚は殺しておきました。ガトリングを使えるやつは居ません」
「見事に、美味しいところだけ持ってかれましたね」
「...」
「ふっ...くそやろ...ぅ...」
タッ タッ タッ タッ...
「...」
「立て」
「...っ"」
ガタ...べちゃっ、べち...
「...甘かった...俺が、騙されてなければ...」
「...」
「まず、俺は屋根を歩いた。わざとでかい足音を立ててな」
「そしてお前がそのガトリングのコッキングを引いた瞬間に地面に飛び降り、銃声の鳴る中香澄が刃物で全員斬り殺した」
「これで満足か?カマホモ野郎」
「...くっ...かかか...」
「さぁ立て。しっかりと」
べちゃ...べ...
「は...はぁ...」
「着いてこい」
コツ コツ コツ コツ...
「ここは製油所。宇宙船燃料だろうが、違うのはハイオクかガソリンかの違いだけだ。地下から掘り出しているものを」
「この常圧蒸留装置で石油を保管している」
「...これが...なんだと...」
「________入れ」
ポンッ
ジュボンッッ
「う、うぎぁぁあああッッ!!」
ギィッ
_______バタンッ
「この蒸留装置には人ひとり入る隙間がある。それは本来原油を溜めるタンクなんだが、蒸留装置内は120℃を超える灼熱だ」
「俺はできる限り、お前に苦しんで死んで欲しいんだよ」
「べぢゃぁ"あ"あ"あ"ッッ...!!」
ゴトッ
「宇宙燃料、貰ってくぜ」
コツッ コツッ コツッ コツッ......
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▅▅▅▅薔薇と拳銃▅▅▅▅
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