表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/21

[続] 駅馬車




「...っ」





ガタッ...ガタッ...





「...」


「目を覚ましたか」





「...俺は、どうなった」





「急に発作を起こし気を失った」


「発熱もしてたぞ」






「...」


「有栖川は...」





「疲れて寝てる。あんたを介抱してたんだ」





「...」


「それで、これは...?」





「私の膝枕だ」





「...」







真っ赤な夕日が私を照らす。


西部劇ならエンドロールが流れてもいいぐらいだった。





「...駅馬車は嫌いだ」





「...」


「なぜ嫌いなんだ?」





「...暗くて、狭くて...そして______」


「_______暑い_______」


「暑いから裸の方が楽だと思ってもダメだ。硬い木が揺れる馬車の中で肉にくい込み苦痛が続く」


「私にとって駅馬車は______悪夢だ」






「...」


「でも、それはきっと夢だろう」






そういうと、香澄は私の頭を撫でる。


確かにそれは私の苦痛を拭っていった。





ガシッ





「...」






ぐぐ...





「...」


「______抱きたいなら、そう言えばいい」






ブチンッ






本能と理性が繋がれた糸が切れる音。


本能のままに香澄の口元に吸い寄せられた。






「「...っ」」





「...ふっ...唇が震えてるぞ」


「"処女のお嬢様"」




「...ッ!!」





バチンッ




ドサッ





「黙ってれば抱かせてやったものを...!お前のその態度が気に食わんっ!」


「勝手に怖がって駅馬車で死ね...っ!」






ガチャッ





バタンッ







「...」


「...おえ」






_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _



▅▅▅▅薔薇と拳銃▅▅▅▅



_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _





「お客さん、次が終着点ですよ」






「...」


「なぁ、有栖川」


「出ていった女を呼び戻す方法を知ってるか?」





「...」





「そんなものはない」





「...」


「ぶふっ...最低だ、お前は」





「くっ...かかっ...」





「さっさと燃料買いに行くぞ」





_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _




時刻は夜。


天井のランプを頼りに暗黒の荒野を突き進む。


進んでいくにつれてやがて草木は短くなっていき、路面の砂利も固く大きくなってゆく。


そんな中、ぽつんと小さな灯りのついた小屋のようなものに近づいてきた。





「あれか?」





「あぁ、あれだ」





「行くぞ」


「おい、止めてくれ」





ギギィッ




ガチャッ





「何ドルある」





「全財産かきあつめて300ドルだ。果たして最高級のガソリンは何ドルかな」





「はぁ...行こう」






...


....コンコンコンッ






「...」






___________カチリッ







「________ッッ!」


「離れろッ!」






ババババババババババババッ________






「ぐぬぁ...っ!」





「...有栖川!」





ずる ずるっ





「...ぐぼ...あばらが...っ」





「クソ...!何が起こってる...!」





「ガトリングだ...音で...わかる...」





ガシッ





「____しかも____軍支給品だ___ッ」






「...ッ!」






「にげろ...これじゃ、僕らは....」


「________不利すぎる______」






「...」


「...死ぬなよ」






タッタッタッタッ...






「...ふふ...死ぬかよ...っ」





______________________





ペチペチッ





「おい、まだ死んでねぇよな。こいつ」




「水ぶっかけろ」






バッシャアッ






「...」


「ぶげ、ごぇっほえほ...っ!」






「ふん...あのガトリングを受けてまだ生きてるとは...お前ゴキブリかなにかか?」





「...ふぅ...ぶ...っ」


「見たところ...ただのゴロツキじゃなさそうだ...」


「その服...保安官だろ...」


「______特に、そこのお前」






「______そうだが______」






「...ふっ...火星ってのは治安最悪だな...」





「マカロニ・ウェスタンでは保安官は法の番人だが」


「その影にはそうでない者もいた。それが俺だ」





「ただの汚職警官だと思ったが...予想より酷いな」






「お前がどう思おうが勝手だが、これからの運命がどう仕組まれているのか分かっているのか?」


「ここから東の奴隷市場で売りさばかれるんだぞ」





「...だと思ったよ」





「もちろんお前の相方もだ。ちなみに公にしても意味は無い」





「なんでだよ...ここの警察組織は頭から足まで腐ってるってか?」


「ふざけた星だな、この木星ってとこは...げぉっ」





「保安官さんよ、もういいだろ。俺はこの子の味見がしてぇんだよぉ!」





「ふん...お前たちとは"そういう契約"だからな」


「殺すなよ」





「殺す...?これは傷の手当よぉ!この子の傷を俺が舐めて治してやるんだよぉ!」


「くく...かきゃきゃきゃっ!」





_________キィ カチャッ





_________バギョンッ






「______きゃ...」


「...ぬぇ...?」






小屋に鳴り響く場違いな轟音。


私は袖の中に仕込んでいたppkをスライドさせ近づいてきた男の額をぶち抜いた。






バギョンッ バギョンッ





「ぐぇいッ!」





バガンッ ギョンッ





次いで腰に手を伸ばした奴らに狙いを定め風穴を開けるが_______





バシンっ





保安官に腕を蹴られ_________





ボギィッ!





_______そして、床に叩きつけられる。






「ぐぉお...ッ!」






「...そこまでだ」


「スリーブガンか。手負いの猫にしてはよくやった方だ」





「野郎...!よくも俺のダチを...ッ!」


「ぶっ殺す_______!」





バガギョンっ_________






「...」


「自業自得だ。お前らにはこいつの覚悟が分からないのか?」


「"私に手出したらぶち殺す"って覚悟だよ、これは」


「お前ら全員部屋から出てけ。目障りだ」






「「...」」





ガチャッ





コツッ コツッ コツッ...






「...」


「不思議だ」





「...ぶぅ...ふ...ッ!」





「久しぶりに良いことをした気がする」


「お前の覚悟が俺をそう駆り立てたのか。これは一体どういうことなんだ?」





「ぐ...ん...っ」


「...根っからの悪人は...良いことなんかしねぇよ...」





「ふざけんな。悪人でも良いことはする」





カチョッ





じぃ...





「ふぅ...1対9ってとこだ。善行1、悪行9」


「自分の子供におもちゃ買ってあげたり、友人が鼻をかむティッシュを忘れた時は貸してもやる」


「だが結局、自分のやってる悪行が大きすぎてその小さな善行が霞んで見える」


「だからそれをひっくるめて"悪人"なんだ」





「...だがその善行も...全部自分のためだ...」


「...それは善行とは...言えない」





「...」


「そうかもな」





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ