駅馬車
_______ボイラー室______
カチャカチャ...
「....」
カチャカチャカチャ...っ
「...ぬっぅ...」
カチャカチャカチャカチャ....ッ
「くっ....ぬ...!」
ベギョンッ!
「あ...っ!」
ビーッ
「おーい、ウォーカー。出発の時間だけど...」
「....って、なにしてんの?」
「...壊れた」
「え?何が?」
「ボイラー室の燃料タンクの燃料が...全部漏れちまった」
「ど、どこに?」
「...宇宙空間に」
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_____▅▅▅▅薔薇と拳銃▅▅▅▅_____
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「というわけで________」
「普通宇宙船用の燃料を60ガロン欲しいんだけど」
「あー、ねぇねぇ。そんなもんは」
「はぁ?ここガソリンスタンドだろ?」
「そんだけどお嬢さん。ここクロスダウンではね、政府に申請しないと宇宙燃料は買えないんだなこれが」
「しかもその申請っていうのもな、地元住民にならなきゃいけねぇってことなんださ」
「じょ、冗談じゃないよ!みんな仲良く木星で開拓農民しろってのかよ!」
「うーん...今クロスダウンでは宇宙燃料は枯渇してるんださ。よそ者にやるぐらいなら、地元住民にやった方がいいって言うのが政府の見解さあ」
「じゃあちょっと燃料分けてくれよ。あんた持ってるんだろ?」
「それは無理なお願いだべね。皆日頃あぷあぷの生活の中で、高い金払ってるんだから」
「じゃ、じゃあ本当にこのまま開拓農民になるしか...」
「...ぁ...」
「...うぅん」
「じゃあな、いいこと教えてやんよ」
「え?」
「ここから南に2時間ぐらい行くとな、よそもんでも宇宙燃料売ってくれる場所があるんだ」
「ほ、ほんとか...!」
「あぁ本当だとも。でもね、そこに行くには駅馬車一個しかないんだねこれが」
「酷く辛い道のりだろうけど...」
「辛い道のり、とは言ってくれるな」
「生憎修羅場はくぐり抜けてきた身だ。行かせてもらおう」
「これはほんの礼だ。受け取ってくれ」
「では、さらば...」
かこっ
「あ、あぁ...」
渡されたのは1964年製のケネディコインである。
「...んで、これなんだね」
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ガラガラガラ...
クロスダウンから少し離れた道半ば。
私、有栖川はウォーカーの言うことを聞いて駅馬車に乗車した。
豊かな草原、程よい温帯の気候、牧畜が盛んな地域性。
楽しい西部劇の始まりかと思ったけど_______
「う、ぉえ...なんでこんな...気持ち悪いんだ...!」
「乗り心地...最悪...ぅ"っ」
「おい、ここで吐くな」
「私までもらいゲロするだろうが」
「...なんでお前がまだここに居るんだよ...」
「もう追っては来てない...はずだろ」
「ここじゃ有栖川がご飯を作ってくれる。そりゃいるだろう」
「ふざけんな。食った分働け」
「僕はいてもらって構わないけどね」
「香澄ちゃんのために、一生をかけてもご飯を作り続けますよ」
「そうか。では頼んだ」
「...ふざけんな」
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_____▅▅▅▅薔薇と拳銃▅▅▅▅_____
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______第一停留所 シリンダーヘッド_____
ガタッ ガタガタ...
「うぉおえ"ッ!」
びちゃびちゃっ
「大丈夫かよ...」
すりすり
「えきばじゃなんで、にどどのぶかぉ"えッ(駅馬車なんて、二度と乗るか)!」
「何言ってるか分かんねぇよ...」
「...」
「飲め、酔い止めだ」
「か、香澄ちゃん。やさし...」
「勘違いするな。飯5日分と交換だ」
「おいッ!絶対に飯はやらないからなッ!」
「この薬も飲まないか...ゲボォエッ!」
「おいおい...」
「黙って薬飲んだら?この先まだ3回も停車するんだぞ」
「5日分なんて...暴利だ、あのガキ...」
「ちょっと情をかけてやっただけでつけ上がりやがって...これだから船に変なのは乗せたくないんだ...!」
「...香澄ちゃん、お前に認められたいんじゃないか?」
「...生憎弟子を取った覚えはねぇよ」
ザッ ザッ ザッ ザッ...
「おい、どこいくんだよ!」
「ソーダ水買ってくる...あとトイレ」
「...ったく...」
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______シリンダーヘッドを離れて______
ガタッ ガタガタ...
「_______はぁ...はっぁ...が...っ」
「ちょ、その汗...ッ!」
ぴたっ
「すごい熱だ...次の休憩場所まで2時間あるってのに、なんで言わなかったんだこのバカ...!」
「...」
「薬を服用しなかったのか...?」
「ふっ...ぅ...ッ」
「...ぐっ...」
バタッ
「おい、ウォーカー!」
「________ウォーカー_____!」
ガタッ ガタガタ...
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ガタッ ガタガタ...
シャボン玉飛んだ
屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで
こわれて消えた
[あと2時間だ。あらかじめディーラーに連絡しろ]
[それと、"味見"のために服を脱がして綺麗にしておけ]
シャボン玉消えた
飛ばずに消えた
産まれてすぐに
こわれて消えた
ギシッ...ギシッ...ギシッ...
[ふぅっ、ふぅっ、ふっ...!]
[おぉ...めっちゃ出た...締まり良いな...っ]
「...っ」
[いくらだ?]
「_____」
「_________」
「_____________っ」
バギョンッ
風、風、吹くな
シャボン玉飛ばそ
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