[続続続] DJANGO
小屋を出た後、サンの跡をつけるととある建物にたどり着く。
そこはモンテクリストのダイヤモンド収集工場に違いなかった。
たった今サンの姉が工場に戻っていくところだ。
黒コートに黒ハットを被った女だ。
ギギギギ...
冷たく重厚な鉛色の門が閉められる。
手下達も付近には存在しない。
「(...)」
「(...行く)」
ツカカカカカカッ
ひょッ
ガサッ
門を飛び越え工場内部に侵入。
商品にならなかったであろう山積みのダイヤモンドの中に飛び込む。
引き続き姉の動向を追う。
「(とりあえずあの女が親玉だと仮定し追う。そして確証が持てた後、部下が消えてから殺害してその場を去る。これでいい)」
「(頭目を失った暴力団は事実上壊滅する。親を殺せば...全てが終わる)」
「________ゴス」
「後は任せる。私はもう部屋に戻るから」
「兄貴...大丈夫すか」
「あぁ、大丈夫だ。だから次馬鹿な口聞いたら殺すぞ」
「あ...兄貴...」
あのウルフカットの黒セーターの女が側近だろう。
金魚の糞のようについて離れない。
「_______それと」
「_________野良犬はいたか?」
...ッ!
「いえ...いねぇですよ」
「そもそもこんな寒い地域まで来る馬鹿なんて」
「そうか...」
「________警戒しとけ」
「...かしこまりやした」
ザッ ザッ ザッ ザッ...
側近は反対側を向き別れ、姉は工場内部へと続く細い道へと入ってゆく。
私は靴を脱いでその細道の天井をしゃがんで進む。
「(この通路の終わり付近にはダクトがある。そこから侵入して追跡再開だ)」
スッ スッ スッ スッ...
その通路、高さ200m長さ約400m。
歩くのに5分かかりそうだ。
「(靴を脱いだのは音が出ないから良かった...でもこの通路、滑りやすくて危ない...っ)」
「(靴下も脱ぐか...)」
とっ とっ とっ とっ...
「(ダクトが見えた...そこからあの女が抜けて一定の間隔で追えば...っ!)」
__________ゴンッ...ゴンッ...
「_____うーん...ここの建付けが悪いなぁ...」
「_____おいグリーフ!トンカチ持ってこい!」
後方約300m、通路の先端側。
床に耳を付け右人差し指の爪で床をなぞる黒セーターの女がいた。
「(なんでここに居る...ッッ!!気持ちわりぃッ!!)」
「(ダクト...ッ!!まだあの女は通らないのかッ!)」
カツ カツ カツ カツ...
瞬間、軽快な足音と共に黒の帽子が真下を横切る。
女と距離をとるために3つ数える。
________3
_____2
___1
ひゅっ
とっ...
「ふ...はぁ...あぶな...っ」
カーンッ カーンッ カーンッ カーンッ...
ゴゴゴゴゴゴゴゴッ...
甲高い何かを叩く音と通気口の轟音。
それが暗い室内から聞こえてくる。
全て前の歩いている女から響いているような錯覚に陥る。
カツ カツ カツ カツ...
「(...集中しろ...この状況に適応しろ...ッ)」
「(...狭い通路に入ったら...殺る...ッ!)」
________カリッ_______
「▅▅▅▅この壁...相当傷んでるな▅▅▅▅」
「▅▅▅▅本部から経費で直してもらうか▅▅▅▅」
ダッ...!
ガキィンッ!!!
予想もしない火花が散る。
高速で刃を抜いたのに黒セーターの女は自動拳銃で一撃を止めた。
「おぉ...やる気満々」
「(仕損ねた...ッ!)」
「お前潜入下手すぎ。もしかして、ウチ舐めてる?」
ジャギャッッ!!
ゴギィッ!!
「人のこと言えんのかよ。まず銃の点検から改めろ死に損ない」
パキョッ
「ッ!」
「ガバメントも潰すかよ...!」
ダッ!!
「(とった...ッッ!!)」
カシュッ
ドバンッ
「...」
「...」
▅▅▅▅▅...ぶべ...▅▅▅▅▅
「な...に...」
「残念ながら、早撃ちでは負けたことがないんでね」
クルクルクルッ
カショッ
腹からドス黒い血液が溢れ出す。
...なぜだ。
私の方が、速く抜いたはずなのに...
「この世で最も速いクイックドローが可能な拳銃、それはシングルアクションアーミー通称SAA。私は0.1秒でそれを発射できて」
「さらに不意打ちでハンマーを下ろした状態でこいつを隠し持ってた」
「負けるには十分な理由だろ」
「...ざけんな...ッッ!!!」
「________ごばぉえぇ...ッッ!!!」
ベチャベヂョア...
おかしい。
ただ銃弾を腹に受けただけでこんなになるものなのか。
胃に穴が空いて血が逆流したとしてもここまで...ッ
「そして、私のお気に______」
「______どじゃーん。拡張弾頭」
拡張弾頭。
それは弾丸の先端にナイフで十字の切れ目を入れたもの。
弾丸が発射されると同時に弾頭がショットガンのように散弾する。
「______そして、相手の臓器をズタズタに崩壊させる」
「ひぎょうだぞ...絶対に許ざねぇ...」
「それはこっちのセリフだ。何の権利があって兄貴を付け回してんだ」
「今衰弱しきった兄貴に付きまとうのはあーしが許さねぇぇ....ッ」
バギッ
「許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇ許さねぇッ...!」
ゲシッ ゲシッ ゲショッ ゲシャッ______!!
「絶対に、許さねぇッッッ!!!」
ベギョォッッ!!!
「ごぐぉあ...っ!!」
ガギっ
ガゴッ ゴシャァアン...ッッ!
奴の蹴りで5m先のゴミ山まで吹き飛ばされる。
頭上からネジや鉄クズが降ってくる。
「はぁ...はぁ...この世で最もムカつくのはな...お前みたいなどこの知らない馬の骨を相手することだ」
「そういう"他人"はいつもあーしらの領域にお構い無しに汚ぇ足を突っ込みやがる」
カチョッ
「さて...次は頭にぶち込む。拷問しないで殺してやるのは兄貴の仕事を増やさないためだ」
「わかったらさっさとそのガラクタの中から姿を見せろ」
「...」
「...」
「...ちっ...また消えやがった」
タッタッタッタッ
「_________ゴスさん!」
「ってうわっ...どうしたんですかその血...っ」
「あーしのじゃねぇよ」
「それよりかグリーフ。ソルジャー全員に伝えろ」
「_______野良犬が侵入したってな」