[続] DJANGO
暗い部屋。
病院に設けられているパソコンのキーボードを叩く。
私は不安と同時、好奇心が湧いていたのだ。
ウォーカーのあの話を聞いてから、彼女についてのあれこれを調べずに居られなかった。
カタカタカタっ
[ジョニーウォーカー、検索]
[検索結果: ジョニーウォーカーというスコッチ・ウィスキーは...]
「(流石に出ないか...)」
カチカチっ
[2658年 GODレース チーム、検索]
[検索結果: 消えたGOD優勝チーム、彼らは何処へ?]
[________GODレースの都市伝説]
「...っ!」
カチカチッ
[過去30年以上も続けられている死亡遊戯、Game Of Death レース。このレースは死人多数の______」
「...」
スッ スッ...
[さて、ここで本題である2658年の優勝チームハリトンボについて]
[今回都市伝説と言ったのは彼らの消息が優勝セレモニー後から一切確認されていないのだ。しかしチーム全員分のレースカーは製造され、賞金も公平に配当されたとGOD公式は発表している]
「...嘘つき」
[行方不明となった名簿と顔写真は以下の通りである]
[ヤキシー・リン]
[ハリス・キートン]
[モンテリ・サカスティネス_______]
「...」
スっ スっ...
[シャレード・ギャロ]
[コーウェル・シティズーン]
[______不明]
「不明...?」
カチカチっ
[この不明、という人物はハリトンボの正式なドライバーである。文字通り経歴も素性も知れない、突然チームに現れた"名無し草"だ。巷ではマフィアとの関連性が高いとされている]
[ここでもうひとつ都市伝説がある。実は優勝セレモニー後ハリトンボは全員マフィアに殺されていたという説だ]
[数ヶ月前にネットに投稿されたとある動画がなによりの証拠だ]
「動画...っ」
ピッ
ザザ_____ザ_______ッ
_______________________
[...撮れてるか?]
[ええ、バッチリです兄貴]
[...そうか]
[毒を飲んだ奴、腹を裂かれた奴...あとそこの、蜂の巣にされた奴]
[全部記録しろ。証拠のためだ]
刹那、薄暗いパーティー会場の映像が映し出される。
荒れた動画のその先に、手ブレが補正されていない雑な動画の先に血の臭いが醸しでる。
毒を飲んで口から血を吐いて倒れている裸の男。
腹を裂かれ、中から内蔵がこぼれ落ちる彫刻のような少女。
そして体を蜂の巣にされたうつ伏せの_______
__________"不明"___________
______________________
「は"あ"...ッ!!」
ガシャンッ
画面を床に叩き落とす。
胃液が込み上げてくる。全身が薄ら寒い。
とても、気持ちが悪い。
「はぁ...はぁ...」
「...っ」
______________________
「デライラ」
「起きてください」
時刻は0時。
デライラの部屋、院長室は暗闇を月明かりのみが残っている。
そんな中、椅子に項垂れている人影に声をかける。
「こんな夜中に奇襲とは無粋だな」
「クソガキ」
椅子を一回転させ立ち尽くす私の方を向く。
そして、右手には琥珀色のシェリー酒を。
「...」
ギィ...
「これは奇襲じゃない」
「情報を聞きに来ただけです」
「情報?」
「教えてください。ウォーカーを破滅に追い込んだマフィア共の所在を」
「へぇ...」
「なんで?」
「今日、知ったのです。彼女が悪魔共の食い物にされてきたことを」
「そして彼女が...今も苦しんでいることを」
「▅▅▅▅それを私は許すことができません▅▅▅▅」
「...」
「所在を知って、どうするつもりだ?」
「▅▅▅▅▅殺します▅▅▅▅▅」
「...」
「ぶっ...かかかっ...!」
「...何笑ってんだ?」
「いやいや...くっ...ごめん、ただのクソガキかと思ってたけど、意外と根性あるんだなぁ」
「...お前...っ!」
「いいよ。その根性と引き換えに情報をくれてやる」
「私もあの人の生涯は可哀想だと思っていたよ。だから殺してやるって意見には賛成だ」
「(...ちっ...最初からそう言え糞医者...)」
「まず12歳のウォーカー様を奴隷として誘拐・売買しハリトンボを皆殺しにしたのは、地球から火星に移住してきたスペイン系のシンジケート、"モンテクリスト"」
「奴らは小さい組織でかつ頻繁に集団で移動する。ウォーカー様が見つけられないのはこれのせいだ」
「奴らは強盗なんか大きな騒ぎは起こさない。目立つことを避け、常に裏で身を隠し賭博や臓器売買、人身売買などで莫大に金を稼ぐ」
「何故それが可能か?秘密は奴らの異常なまでの忠誠心さ」
「構成員は全て身内で固め、誰も裏切らないようにお互いがお互いを監視し合う。こう言っちゃなんだが...」
「______異常だよ。人としてな」
「それで...奴らはどこに」
「その前に対価を寄越しな」
「シンジケートマフィアの詳細な情報とその所在。合わせて1000$ってとこか」
「宇宙燃料30ガロン5つと交換だ」
「闇市で売り捌けば2000$はくだらない」
「...燃料か。お釣りは出ないがよろしいか?」
「あぁ、取っておけ。燃料は後で持ってくる」
「よし...交渉成立だ」
「奴らの拠点は現在天王星にある。というのも、その惑星では年中ダイヤモンドの雨が降るんだそうで」
「それを売って金にしているらしい」
「ダイヤモンド...?そんなもの、それこそ天王星が開拓されてから価値がなくなって鉄クズ同然の代物だ」
「その鉄くずは今現在地下鉄の窓や建物の柱になってるよ。つまり、天然物は鉄と同じ価格で取引されている。またはそれ以上か」
「情報は以上だ。さて...隠し通せるのか?」
「何が?」
「ウォーカー様にさ。ここから天王星まで往復で2日はかかる」
「バレたくないんだろう。色々と」
「ふん...バレて欲しいなんて思う奴がどこにいる」
「それでも行かなくちゃ治まらないんだ...私は...っ」
「...ふふ...傾慕する者のために命を張る、か」
「全く美しい...一体それをなんという?」
「...」
「"愛"だよ。正しくそれこそが"愛"だ」
「1カラットの純粋な愛情。光を放ち、エネルギーを含み...」
「それでいて、情熱的だ」
「...」
「私はもう行く。対価は後で払う」
カツ カツ カツ カツ...
「No matter how many times you fall in love, you will never reach eternal love(どれだけ多くの恋をしようと永遠の愛には決して届かない)」
「viva amore(愛よ万歳).viva amore(愛よ万歳)...」
「...」
カツ カツ カツ カツ...
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_____▅▅▅▅薔薇と拳銃▅▅▅▅_____
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