[終] 名無し草
[2658年度、第4回GOD杯の優勝者は______]
[______チーム"ハリトンボ"]
「「「「うぉぉおおおお_____!!!」」」」
ポンッ
プシャァアアアッッ!!
[______毎年恒例のシャンパンファイトです!]
[_____ご覧下さい!チーム全員が美酒でお互いを洗い流しています!]
「おーい名無し草!」
ぶしゃあっ
「ぶへっ!」
「ギャロ...っ!てめぇ...」
「お返しだ!」
ブシュシャァアッ!!
「ぐがゃぁあ目にぃいやぁあああッ!!」
「へっ、シャンパンファイトじゃゴーグルは常識だぜ」
ばしゃぁあッッ!
「ぶば...ッ!!」
「そういえば耳栓も常識だったね」
「そうでしょ、名無し草」
「...コーウェルっ」
「ほんとに、ほんとうに心配したんだぞ」
「もうお前と、...お前が死ぬんじゃないかと...」
「お前...」
シュゴォォア__________ッッ!!
「名無し草のバカヤロバカヤロバカヤローッ!」
「もうどうなってもいいだと!?ふざけんなバカヤロー!」
「お前が死んじまったら、ハリトンボのドライバーは誰が務めるんだよぉおおッッ!!」
「ぶばっ...!どっからそのバカでかいホース持ってきたんだよっ!」
「うるせいっ!運営が貸してくれたんだよ文句あるかよっ!」
シュゴォォオオッッ!
「名無し草のばーかばーか!お前なんか死んじまえ!」
「お前なんか、壁のシミにでもなっちまえっ!」
がばっ
「...う...ひぐ...っ」
「...悪かったよ...ほんとごめん」
「もう二度としないよ。誓ってこんな危険なこと」
「ぐす...っ...ほんどだな...っ」
「嘘ついたら針千本飲ますからなコノヤロー...っ」
「はいはい...」
「何やってんだよお前ら!早くバス乗れ!」
「ギャロ?お前こそなんだよ、忙しない」
「______宴会だよ!宴会!」
______________________
ゴォン ゴォン ゴォン ゴォンッ_______
重低音が鳴り響く会場。
そこは随分と賑やかなパーティーだった。
基本的に空間は真っ暗で、緑と赤のレーザービームまで交差している。
そんな中、私らを最初に迎えたのは美しい女達だった。
色々な国の、全世界からわざわざ取り寄せたような美女を会場に詰め込んだせいで淫靡な匂いがむせ返った。
逆にそれが俺らの酒を進めたのかもしれない。
次に食い物。
革でできた座り心地のいいソファーにどんな料理でも乗せてしまうでかいテーブル。
そしてそのテーブルに乗った色とりどりの料理たち。
西欧料理、東欧料理、中東料理、中華、和食、アメリカン、メキシカン________
ピザ、ミートボールスパゲティ、キャビア、ラーメン、寿司、チーズバーガー、ターキー、タコス、ケバブ、こんなの序の口だ。
凄腕のコック達が作った名前も分からない高そうな料理も食い尽くせないほどテーブルに運び込まれた。
そしてタバコ。
キューバ産の葉巻をメインに、チャーチルサイズの太く長い葉巻が山積みにそこにはあった。
私は執事のように構えるウェイターからコイーバのシグロⅡを受け取った覚えがある。
ずるずるずるずるッ
「むぐっ...ごれだよ、俺たちが求めてたものは...!」
「ごのラーメンっての、東洋の職人がやって来て作ってるらしいぜ名無し草...!」
ずるずるずるずるッ
「この豚骨で作ったスープと、麺の絡みがたまらんなぁッ!」
「でも絶対体に悪いだろこれ!」
「ったり前だろ!そんな味するぜ!」
カチャッ
「...ふぅ...美味かった」
「ちょっと外でタバコ吸ってくるわ」
「あ?ここで吸えばいいだろ」
「落ち着いて吸いたいんだよ。ここは騒がしすぎる」
カツ カツ カツ カツ...
「ったく、タバコ吸うやつの気が知れん。飯どころか酒もまずくなる」
「あウェイターさん、次ジャンバラヤ持ってきてー!あ2人前ね!」
コツ コツ コツ コツ....
コンコンッ
キィインッ
[えーどうもどうも、この度はチームハリトンボさんご優勝おめでとうございまーす!]
[私このレースの運営、また司会を努めさせて頂きますローズ・シャルプンテと申します]
[以後お見知り置きを]
「あ?なんだあいつ」
「あの人はこのレースの運営さんだよ。みんなからは兄貴って呼ばれてる」
「あんな若いのにお金もあって、凄いわよねぇ」
「けっ、あんなガキが兄貴か。じゃあさしずめ俺は親分ってとこだな」
「よくこんな少年に運営が務まったぜ」
「ギャロさん、あの人女の子だよ?」
「な...女ぁ?」
「お金もあれば権力もあるし、オマケに小柄で顔も綺麗」
「私らには全くかなわないわ...」
「だー!そんなガキなんかよりさぁ、俺はエブリンちゃんの方が気に入ってるぜ!」
「おっぱい大きいし!」
「決めた...君に俺の部屋を案内するよ。優しくな」
「えーほんとに優しくするの?」
「任せろって、かかか...っ」
カツ カツ カツ カツ...
[皆さん、今宵は盛大に楽しんでくださいよ!]
[_____もうこんな体験できませんから]
______________________
「すぅ...ふぅ...」
「(外は静かだ...精々車の走る音が遠巻きに聞こえる程度)」
「ここぁ...いいなぁ...」
「確かに、ここはいいねぇ...趣があって」
「一句読みたいくらいだぜい」
「お、コーウェル。お前今までどこに...っ」
「色んな人に話しかけられてたんだよ。地球のどっかの王様の宇宙船整備してくれってさ。そしたら毎月80000$やるって」
「なっ...それで...!」
「...ははっ、断ったよ」
「俺の居場所はここだけさ。いままでも、これからも」
「...」
「...そうか」
「...へへっ」
「そろそろ一杯やろうよ。ジョニーウォーカーをさ」
「...ふっ」
「そうだったな」
______________________
その後、私たちは会場内に併設してるバーカウンターに向かった。
ギャロのいる会場は隣だったが、壁が厚いのか会場は妙に静かだった。
「ごめん名無し草、ちょっとトイレ行ってくる!」
「ああ。待ってるよ」
タッタッタッタッ...
ドカッ
「マスター、ここって禁煙だっけ」
「...」
「いえ、ご自由にどうぞ」
「(...なんだ、こいつ)」
「お連れがお戻りになる前に、こちらをどうぞ」
コトっ
「シャンディ・ガフ。酒言葉は_______」
「______"無駄なこと"」
「______全て、"無駄なこと"なのです____」
「▅▅▅▅▅▅ぎぁ▅▅▅▅▅▅っ」
「________ッ!」
「コーウェル________ッ!!」
ダッダッダッダッ
「(今、確かにコーウェルの声が...!)」
「(何か...何か嫌な予感がする...ッ)」
ガチャッ
「コーウェル______!」
「あ__________ッ」
「名無し...ぐ...さ...」
血。
鮮血。
白いトイレに赤い血液の河ができてる。
それは、壁に力なくもたれかかっているコーウェルの腹からだった。
「コーウェルッ!!!」
「動くな....今止血する...!」
「痛...なにこれ...おなか、切れてるじゃん...」
「う...腸でちゃってる...」
「ッ...!」
「待ってろ...今救急車を...ッ!」
ダッダッダッダッ
「ウェイトレスッ!警察と救急車呼んでくれッ!」
「緊急なん________」
カチカチっ
カチャッ カチャッ
「________」
「________え_______?」
「______そいつも対象だ」
「______殺せ」
_________バヒュンッ
「...は?」
バババババババババババッ
「...ッ!」
余りの衝撃にトイレへ逃げる。
訳が分からない。
ウェイトレスが一斉に銃を...撃ってきた...?
「こ、コーウェル...逃げなきゃ...逃げるぞ...ッ!」
「...逃げるって...どこに...」
「く...」
「ま、窓だ...そこの窓から...ッ!」
「むり...腸が...全部でちゃう...」
「....ッッ!!!」
「仰向けにしてでも連れてく...ッ」
ガッ
ぐぐっ...
「_______あ」
「あ"あ"あ"あ"あ"い"だい"い"い"ッッ!!!」
「ああクソッッ!!」
「痛いよな...!ごめんな...!」
「______ぎぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"ッッ!!!」
「あともう少しだ...頑張れ...ッ!」
ズルォ...
ドサッ
「ゔ...ぁ...っ...!」
「いだい...いだい...ごれ...」
「ねぇ...なだし...草...な"んなの、ごれ...」
「ふ...ふ...っ...俺も...わからない...わからねぇ...」
「ね"ぇ、夢...だよね...?ごれきっと夢なんだよ、きっと...」
「もう喋るな...!血が...血が...ッ!」
「止まらねぇ...ッ!!」
「怖い"よ...怖いよ...怖い"...お母...ざん...」
「お母さん...お母ざん...ッ!」
「...大丈夫...!俺がいる...絶対手離さねぇ...ッ!」
「名無し...草...怖いよ...くら...い...」
「俺はここだ...大丈夫...ここにいる...」
「...ななし...ぐさ...そこに...いる...の...?」
「ね"ぇ...まだ...い"る...?」
「ああ、いるとも...!ずっとここにいる...!」
「ずっと一緒だ...ッ!」
「う"...ずっと...いっしょ...」
ぎゅっ
「ああ、ずっと一緒だッ!」
「だから死ぬな...頼む...」
「な...なしぐさ...まだ...いる...?」
「ああ、ここだ...」
「...ななし...い...る...?」
「...ああ...ここだよ...」
「...なな......し....」
「...」
「_____だ...い...す__き」
「...」
ずる...
「...」
「コーウェル...?おい、コーウェ...」
「________」
「...あ?なんだ、これ」
「_______なんなんだよこれはぁッッ!!」
ダッダッダッダッ___________
「_____ギャロッ!エンジニアッ!リーダーッ!どこだッ!!」
「みんなどこにいるんだよぉぉおおおッッ!!」
「(_______185号室...ギャロの部屋_____!)」
バタンっ
「_________ギャロッ!」
パンッ パンッ パンッ パンッ
「_______はぁ...っ、は...っ」
「あ...優しくって...!言ったのに...!」
「な、なんだよ...ギャロが女抱いてるだけじゃないか」
「やっぱりこれは夢__________」
「________けぱ_______っ」
「_________」
ぶつかり合う汗と汗、肌と肌。
男と女の淫行。
それは至極当然の行為だった。
でも
______でもなぜ、男の口から赤い血が滴っているのだろうか。
「ぎゃ______ロ_____?」
「_______あぁっ、出る、出すぞエヴリン...!」
「いいよ____きて______」
様子がおかしかった。
何もかもが、不自然で気持ち悪いと感じた。
ふとベッド横のテーブルに目を移す。
「(黄色のカクテル...バーで出された物と同じ...ッ!)」
「お前_____まさかあの酒を______!」
ビュルルル ビュピュゥ...
「はぁ...はぁ...あぁ、まだ_________」
「_______げぇぶぁ_______っ」
びちゃびちゃびちゃッッ
_________バタッ
ガクッ ガクガク...
「...」
「...あーあ...壊れちゃった」
「ねえ、あなたも見てよ。この人死にかけてるのにまだ腰振ってるよ?」
「これね...虫が死に際に子孫を残そうとする様に似てるんだって。ほんとに...」
「▅▅▅▅▅▅▅可哀想▅▅▅▅▅▅▅」
「...てめぇが...」
「______て"め"ぇ"か"殺"し"た"ん"た"ろ"う"がァ"ァ"ッ"ッ"_____!!!!」
「▅▅▅▅▅違うよ▅▅▅▅▅」
「▅▅▅▅▅君が殺したんだよ▅▅▅▅▅」
「...あ"ぁ"!?」
「あなたは兄さんの命令に背きレースに勝ってしまった。少なからず兄さんに拾われた野良犬の身でありながら」
「______あなたがレースに勝ったから皆死んだのです_______」
「...」
「...兄貴...」
「_____ア"ニ"キ"ィ"ぃ"ぃ"ぃ"ッ"ッ"!!!」
ダッダッダッダッ__________
「どこだッッ、どこいきやがったクソ野郎ッッ!!」
「______ぶ"ち"こ"ろ"す"ぞ"ぁ"ぁ"あ"あ"ッッ!!」
「______大方片付きました、兄貴」
「あとは野良犬だけです」
「...ッ!!」
「そうか。じゃあ親父に連絡しといてくれ」
「_____"全員殺しました"ってね」
「▅▅▅▅ア"ニ"キ"ィ"ィ"イ"イ"ッッ!!▅▅▅▅」
「______知ってるよ」
パシュッ
「...がぁ...ッ!!」
ドサッ...
「...ふぅ...君さぁ...」
「_____あんまダルいことしないでくれよ」
「_______ッッ!」
「負けろって言ったのに負けないし。そのせいで八百長狂っちゃって親父にすごい怒られたんだぞ」
「てめぇは俺に"勝ち取れ"って言ったじゃねぇかッッ!!!」
「嘘こいてんじゃねぇぞクソ野郎ぉッッ!!!」
「親父の命令だ。私もハリトンボを応援してたし、今回レースを勝たせるつもりだった」
「ただな。親父がハリトンボ飽きちゃって違うチームに力入れ始めたんだ。挙句の果てそのチームを優勝させろなんて命令された訳だから」
「どんな手を使ってでも勝ちを阻止せざるを得ないだろ」
「お前らマフィアはクソだッ!みんなを、みんな殺しやがって...ッ!」
「お前らにとっちゃ俺らはみんな野良犬かよ...ッ!」
「当たり前だろ、舐めたこと抜かすな」
「_________」
「私らマフィアは血縁こそが真実。他は虚像に過ぎない」
「だからお前らは野良犬で、私らは人間。この真実は全く変わりはしない」
「...」
「...てめぇ...ッ」
「というわけで、どうやらこれでお別れのようだ」
「さようなら"名無し草"。これが君の」
「_______夢の終わりだ_______」
「____て"め"ぇ"は"絶"対"俺"が"こ"ろ"す"___ッ」
▅▅▅▅▅▅バシュッ▅▅▅▅▅▅