[続続] 名無し草
______2650年 5月1日 火星:ロマネ
「______ぐっ...あぐっ...はむ...っ!」
ガチャッ
「...ッ!!」
「あ、この雌犬またゴミ漁りやがって...っ!」
ダッ...!
「二度と来るなッ!死ねッ!」
タッタッタッタッ
...走る。
タッタッタッタッ
ただ走る。
タッタッタッタッ
_______...ただ、走る。
ズシャアッッ!!
「う、げっほぇほあ...ッ!」
「(...泥の味...)」
「(...また、泥の味...)」
「...ん...はは...っ」
「げはぁ...っ!ぉ"えっへ...っ!」
「ぜぇ...はぁ...っ!」
カツ カツ カツ カツ
「_______ねね、今度クレイチア行こうよ。クレイチア!」
「_______クレイチア。どこ?それ」
「______駅前の喫茶店だって!ほら、いつも白いのぼり上がってるレトロ調の!」
「______あぁ、あそこね!いいよ、来週あたり2人で行こうか」
「_______いこいこーう!」
カツ カツ カツ カツ...
「...」
「(____なんで、助けてくれないの...?)」
「(私が何をしたの...?あなたたちに何かしたの...?)」
「(__あなた達に...人の心は無いの...?)」
カツ カツ カツ カツ...
「...ちっ...汚ぇ...」
「_______かぁっ、ぺぇっ!」
ベチャッ
「(...)」
「(...あぁ...そうか...あぁ、今理解した...)」
「(____この世は所詮、弱肉強食なんだ___)」
「(こいつらは所詮、人間だとか語ってるけど所詮は動物そのもの)」
「("所詮"は獣。どこまでいこうが醜いケダモノ)」
▅▅▅人の心なんて、一体どこにあるのだろうか▅▅▅
...ぐぐっ
「...許さねぇ...っ」
「あ!?てめぇいまなんつった!?」
「野良犬が人間様に話しかけてんじゃねぇぞ!」
カチョッ
パン パンッ パンッ パンッ パンッ
ドサッ...
カチッ カチッ カチッ
「...」
「...獣くせぇ」
「_____あ、あいつ人を撃ったぞッ!」
「早く警察呼んでよッ!」
「ばかっ、早く逃げるぞ!車乗れ!」
キキキキキキッ
ブォン...ッ
「...」
パシュッ パシュッ パパジュッ
「ごぁっ...!」
「ぶ...げぇ...!」
「...」
それはあまりに汚い音を垂れ流したので2匹撃ち殺した。
雄猿が意識のあるうちに雌猿の吹き飛ばされた脳みそを見た時の歪んだ顔はとても気持ち悪かった。
直にエテ共がけたたましいサイレンの音と共に近づいてきたからその場を去った。
結果的にエテの死骸は違うエテが片付ける習性があるから、好都合だった。
路地裏を歩くこと5分程。
やがて開けた通りに出た。ゴミが溢れかえった宿無し猿共の縄張りだったに違いない。
そこに、とある風呂敷がかかった大きい何かがあった。
「...」
ガバッ
俺は興味本位でその風呂敷を取ると、中から予想外のものが出てきた。
「...フォードGT40マークⅡ...」
「(俺はこの車を知ってる...一昨日ゴミ捨て場の雑誌で見たからだ...)」
「(そして知ってる...この車が何百年も前のレースカーだということを...)」
「...」
バリンっ
「(精々乗り潰してやる)」
バゴッ
「ぶ...ッ」
ドサッ
「...こいつ...やりやがった...」
頭に残る鈍痛と宿無し猿の捨て台詞。
俺の意識は痛みと共に遠ざかっていった。
_____________________
バッシャアッ
「ぶはっ、はぁ...!は...ッ!」
「起きました、兄貴」
「あぁ、もういい」
「手荒なマネをして悪かった。ひとつ君に聞きたいことがあってな」
「私の車を壊したのは、君か?」
「...」
「...え...」
「...ん?」
「_________エテ公_____」
バギッ
「ぶっばぇ...ッ!!」
びちゃ...ぽた...
「口に気をつけろ、野良犬」
「次そんなマネしたらこんなんじゃすまねぇぞ」
「_______雌犬」
「...許さねぇ」
「...あ?」
「エテ公がよ...気安く人間様に口聞いてんじゃねぇぞ」
「かぁ、ぺっ」
べちょっ
「...」
「兄貴ぃ...こんガキぶっ殺してもいいすか...?」
「ダメだ。まだ話を聞いてない」
「...く...それよりハリー...早くそれ、拭いた方がいいぞ...くくっ」
「...チッ!覚悟しとけよ、てめぇ...」
「...ぷははっ」
「...おい、何がおかしい」
「ふっ...あのねぇ、君が痰を吐いたそいつはマフィアの幹部だぞ。怖くないのか?」
「猿に怖がる人間はいねぇ」
「づははっ!本物だよこいつ!おもしれ〜!」
「兄貴!真面目にやってくださいよ!」
「あーごめんごめん...!つい面白くてさぁ」
「はぁ...」
「______シス、レイプしろ_______」
「ッッ...!!」
後ろでリードを掴まれていた犬が近づいてくる。
「い...いやだ...それは...」
「それだけは...ッ!いやだ...ッ!」
「どうした、野良犬。まさかこのハンサムなシスのお誘いを断るはずもあるまい」
「だからさっさと股を開き、その腐りかけの性器でシスの子種を子宮に満たせ」
「_______早くしろ______」
大型の赤い目をしたピットブルが息を荒くして近づいてくる。
「ご...ぉう"え"...ッッ!」
びちゃびちゃっ
「おい、ゲロ吐いたって許さねぇぞ」
「犬の子供孕むまでま●こ使わせるからな」
「ぁ...ッ」
▅▅▅▅▅▅▅ゾワッ▅▅▅▅▅▅▅
「______す________」
「______...すみませんでした_______」
知らずと私は、その兄貴と呼ばれる女に頭を垂れていた。
「...」
「_______ぷはは!」
「え?」
「冗談だよ何マジになってんのさ!うちのかわいいシスがそんなことするわけないだろ!」
「ぁ...え...?」
「くく...鼻水まで垂らしやがって」
「シス、戻ってこい」
[へっへっへっへっ...]
「シス?」
[グルル...]
「...」
________ボッギャアッ!!
[キャヒンッ!]
「こいつは...ダメだな」
「道に捨ててこい」
その女が発すると、後ろにいた男達は痙攣した血まみれの犬をドアの向こう側へと運んでいく。
女は自分の可愛がっている犬の首を全力で蹴ったのだ。
「...ふう...」
「いいよ、じゃあ車の件は水に流そう」
「ただし、ひとつ君に条件がある」
「条件...?」
「今度開催されるGODレースの運転手をやってもらおうか」
「GOD...レース...?」
「うちが八百長やってる賭け事だ。今回はチーム"ハリトンボ"を勝たせる予定だったが」
「ドライバーがアルコール浸りになって使い物にならなくなった。だから君にドライバーを任せることにするよ」
「なんで私が...運転なんて...」
「________君からは希望を感じるから」
「...私...から?」
ゴミ山を這うように生きているこの私から...?
「優勝者にはそのレースカーのレプリカがチーム人数分贈呈される」
ペラッ
「これが、そのレースカーだ」
「私が...これを...」
「_____今度は自分で車を勝ち取れ____」
「______速いのが好きなんだろ______」
「ぁ...あぁ...」
「まぁ、その分君にはキツイ訓練を受けてもらうが」
「そのために汗を出せ、血を出せ、全てを犠牲にしろ」
「汝求めよ。さらば与えられん」
「...や」
「_______...やらせて...ください...」
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▅▅▅▅薔薇と拳銃▅▅▅▅
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