表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/21

狼舞

時に大昔。


私がまだケツの青いガキだった頃。


白い大層な髭を蓄えた汚ぇ老人は言った。



二日酔いには煎茶が一番だと。




________私はそうは思わない。今でも。







▅▅▅▅▅▅薔薇と拳銃▅▅▅▅▅▅


[____ダンス・ウィズ・ウルブズ____]




___________________


___________


_____





[クロスダウンのバー・カロリング]




その日、BAR・カロリングはいつにも増してガヤガヤと盛り上がりを見せていた。


黄色い照明が作り出す独特の雰囲気。


それは深夜21時には似つかない騒々しいものだった。





「マスター!もっとビールビール!」





「...」




そんなおっさん三人を横目に、私は水に生卵を割ってそれを飲む。




「ねぇ、それ何飲んでんの?」




横に座ってた小柄な有栖川(ありす)が顔を出す。


茶髪のミディアムヘアで、1950年代Leeのデニムジャケットにオレンジ色のスウェットを着込んでいる。


また綺麗な顔をしているものだから似合ってるのだ。






「ただの酔い覚ましさ...昨日お前とバカほど飲んだの忘れたのかよ...おえっ」




「朝っぱらからそんなキショいのよく飲めるなぁ。ま、僕はそんなの必要ないけどね」




「お前は強すぎんだよ。体の作りが違うってこと」




私は項垂れながら文句を垂れる。


今日も有栖川は元気なこと。香水つけて誰かを口説こうという気で満々だ。


船に女を乗せる気は無いってのに、こいつは関係なしに部屋に連れ込む。


クロスダウンの娼婦の喘ぎ声にはもううんざりだ。





「悪いが今夜は女は無し。私の睡眠の方が大事だから」




「え、えぇ!私だって多少気分悪いのにおめかししてきたんだぞ?それなのにナンパはなしだって!?」





「知るか。勝手にやってろ」


「それでも性欲にあぶれてるなら、どっか安宿にでも泊まるこった」




「...ッ!」


「あーはいはいわかりました。勝手にヤリますよヤりゃあいいんでしょ!」


「お前が性欲もない修道士だってんならこっちはどうせヤリマンだよ!ヤリマンならヤリマンなりに一人で女捕まえてくるよ!」





はい、面倒くさい。


先に言っておくが、有栖川は自分の予定が崩れるとこんな感じに拗ねてしまう。


有栖川が小柄じゃなければはっ倒すところだ。





「はいはいご自由に。あー、あったま痛ぇ...」






「ふん...じゃああの子に話しかけてくる」





「あーどうぞ...」


「...ん」





有栖川の目線のその先にはカウンターに座った長い黒髪の女の子。


黒スーツに赤ネクタイ。


そして隣の椅子に置いてあるのは________





「...長物...?」





_______明らかに鞘のついた刃物である。





「お、おい。待て、そいつは_______」




「今更言ったって遅い。あの子は僕がいただくから」





コツ コツ コツ コツ





「_______こんばんは、お嬢さん。もし良かったら、一杯奢らせてくれないかな」





「...」





「あれ、もう酔いが回っちゃってるかな。なら少し横になった方がいい。この店は来客用の休憩室があるから、そこまで連れてってあげるよ」





「_______この世には鳴かない鳥がいる」





「...あぇ?」





「例えばハシビロコウ。そいつは滅多に鳴かないし、じっと忍んで獲物を狙う」


「ただし、そんなハシビロコウでも求愛の時は大きな鳴き声を発する。性欲を丸出しにして雌にアピールするのだ」


「_______どの種族も性欲には抗えない。そうは思わないか」





「あ、あはは...おっしゃる通りで...っ!」






有栖川はもう相手に謙ってる。


これじゃナンパもクソもない。





「お前は私を狙ってきたのか」




「まぁ狙ってるといえば狙ってるというか...」





すうぅ...





パカッ





「...ッ!」





________その時、侍女のバーボンの入ったグラスが真っ二つに割れる。





「う__________」


「うわぁぁあああああっ!!こいつ抜いたぞおッ!」





「有栖川!」




座席の横にあるシングルアクションアーミーを有栖川に投げる。


薬層は45口径弾で満たしてある。





パシっ





「OKお嬢さん。二日酔いのキル・ビルと行こうか...!」





バギョッ バギョンッ





すっ すひゅんッ





「ば、弾よけんのかよ...ッ!」





「_______避けるさ」





ぴゅっ はひゅんッ





「うぉ、あぶな______ッ!」


「ちょっ、ウォーカー!助けろ!」





「おー頑張れ。二日酔いのキル・ビルなんだろ」





喧騒の中、虚ろな目で2個目の生卵をグラスに入れる。





「ちょ、おぉいッ!?」





ひゅっ がひゅっ





「逃げるな!貴様その銃は飾りか!」





「飾りなわけあるか...っ!」





バギュッ バガンッ





ひゅんっ はひゅんっ





カチッ カチカチっ





「まず____弾切れ____ッ」





ぐぐぐ...





「あ______死________」





___________バギャヤンッ






「「______ッッ」」





「....う________」





ドサッ





スタールアーミーリボルバーで女の右太腿を狙って撃ち抜く。


弾丸は命中。女は刀を落とし地面に崩れ落ちる。






カツ カツ カツ カツッ...





カチョッ






「...こんばんは、お嬢さん」


「君は______私の名を知ってるかな」





「...貴様...私に弾丸を...ッ!」





「私の名前はジョニー・ウォーカー。ろくでなし共を留置所に送るしがない賞金稼ぎさ」


「...では、私の船へ来てくれるかな」





「...ッ!」





「...」





カチョッ





カツ カツ カツッ________






「______ナンパってのはこうやるんだよ」





_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _




▅▅▅▅▅薔薇と拳銃▅▅▅▅▅


[____ダンス・ウィズ・ウルブズ____]





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ