第六問 年収を聞かれたんだけど、ゼロとは答えたくないもんです。
初めまして、仁奈です。
練習の一環として挙げていきます。ちなみに何の練習かは…秘密です。
よければ忌憚ない意見をくださいね。
※建前ですので、本気にしないでください。心閉ざすかも。笑。
お待たせしました。
第6話です。
男ってどうして年収にこだわらないといけないんですか?
不思議です。
全13話を予定しております。
短い間よろしくお願いします。
薄明の頃、僕は冒険者ギルドの2階に設けられた宿の一室の隅で膝を抱え、ベットの方を見ていた。
なんで、こうなる?僕の性別が…あれだからか?
僕はまだ夜が深い頃にふと目が覚めた時から、部屋の隅で一人悶々としていた。
正直すごい眠い。昨日は食事もろくに取らず野宿明けに数時間の道のりを歩いたので、本当はぐっすり眠れるはずだ。だが、再び眠りに落ちることはなかった。その原因は僕の視線の先にあるベットで今もぐっすり眠っている彼女、リディにある。
もう何度目かわからないが、状況を整理してみよう。
まず、彼女が寝ているベットは僕が昨晩、眠りに入ったものだ。そして、この部屋は、ギルマスに使っていいと案内された。…まあ、お金はしっかりと払っているが、ちなみに食事付きの3泊で1万5千シル。これは、案内される際、ベターからこっそり聞いた話だが、普通の宿はこれだけ払うと5日、同条件で過ごせるらしい。微妙に高い。このギルドならではのサポートというものがあるらしいが、長期滞在を考えるなら他の宿に移ることも視野に入れるべきだろう。おっと、思考が逸れた。とにかく、この部屋は、昨日、ギルマスにぼったくられるような形で使えと僕に案内した部屋だ。リディは外の空気を吸ってから休むといい、その場にいなかったが、こことは別の部屋を後でギルマスから案内される手筈だったはずだ。
そして、僕はその部屋のベットでふと目が覚めると布団の暖かさとは違う、やわらかい温もりに包まれていることに寝起きのぼんやりした中、確かに感じた。僕は、その違和感の正体を確かめるように目覚めたばかりでおぼつかない感覚がする腕をゆったりと動かすと、ベットマットとは違った微かな反発力を感じる柔らかいものがそばにあることに気づいた。同時に呼吸するたびに鼻腔をくすぐる甘い香りが僕の意識をだんだんと覚醒させ、それがリディだと気づいた時には声にならない悲鳴をあげた。
どういう経緯でこのようなことになったがわからないが、いやわかりたくないだけだが、僕の隣でリディが寝ていた。しかも僕が抱くように腕枕をしながら。
僕は、慌てて心の動揺と興奮を表に出さないように頑張り、彼女を起こさないよう、起きたら殺されると思うので、慎重に腕を外し、なんとかその状況から脱出することができた。
そして、今に至る。
僕はこんなにも無性になったことを悔しむとは思っていなかったし、それを喜んだことはなかった。とにかく、何がとは言わないがこんなに辛い夜を過ごしたのは初めてだ。この状況を作り出したと思われるギルマスには後で絶対に抗議してやる。そう、絶対だ!
僕は、部屋の隅で蹲り、そんな決意を心に決めていると陽の光が差し込んだのに気付き顔を上げると、いつの間にか起きていた彼女が、ベットに腰掛け、目を擦っていた。そして呆れたような声でこう言った。
「おはよう、カイ。ねえ、朝からそんな隅で何してるのよ?」
んっつつ!僕は言葉にすらならない憤りを感じたが、どう言い返しても殺される未来しか見えなかったので、何もなかったように立ち上がり、その問いをスルーするように彼女に声をかける。
「おはよう、リディ。朝食でも食べにいこ?」
僕らは、部屋から出て、階段を降りる。するとエプロン姿をしたギルマスがこちらに気付き笑みを浮かべて近づいてくる。
僕が部屋のことを問いただそうとしたら、彼女は先に声を出した。
「ふふ、昨晩は、お楽しみだったかな?」
こいつ、やはり確信犯か。僕は2度とこんな目に遭わないようにする為、強めの口調でいう。
「そんな事実はありません。ギルマス、こういうことはやめてください。お願いですから。」
すると彼女は、落胆するようなそぶりを見せ、信じがたいことを言う。
「お、お、それはとても残念だ。だが、部屋はあいにく空いていないんだ。だから今晩も一緒に寝てくれ。」
「そんな」と僕が肩を落としているとリディが揶揄うように言葉を口にし、酒場の方へかける。
「そんなに私と一緒がいやなの?私は気にしないわよ。」
僕が、困ったように「そ、そう言うわけじゃないけどさー」と独りごちているとギルマスが僕の肩に手をおき、ニヤニヤと笑みを浮かべて僕の顔を覗いていた。
酒場に向かうとまだ朝が早いからか、誰もおらず、空いていた。僕はリディが先に腰掛けていた席の向かいに座ると、しばらくしてギルマスが朝食を持ってきてくれた。
ギルマスは「残すなよ」と言い残し、奥の厨房の方に戻っていった。
どうやら、朝食は、ギルマスが作ってくれるようだ。メニューは野菜のスープとロールパンが2つに目玉焼きと燻製肉が添えられた一皿だった。そして、ジュースが入ったグラスが置かれていた。
僕たちはいただきますをし、朝食を口にする。
普通に美味しい。そう感想を言い合いながら食事を進める僕らに一人の女性が「彼女の隣に座ってもいい?」と声をかけてきた。
僕らは料理から目を離し、彼女の方を見る。
彼女は、魔法使いのようで、膝上までのスカートに袖がダボついた所謂ゆるふわ系のカーディガンを身につけ、全体的に少しガーリーな服装にローブを羽織り、大きめなとんがり帽子をかぶっていた。
僕とリディは互いに頷き合い、彼女に席を勧める。
「ありがと、私は、エリカ。見ての通り、魔法使いよ。彼女、えーとリディだっけ?あなた、魔法適性が全て最高値なんだって!?」
彼女、エリカは目を輝かせながら、リディに向かってそういった。
リディは、少し戸惑い、僕の方をチラッとみながら「うん」と小さく頷いた。
「…」
リディは人見知りの気があるな。
僕も人のことが言えたものではないが、仕方がないので、話をすすめる。
「リディは、すごいよね!僕なんか、一点張りだったのに。」
「えーと、確か、氷属性が突き抜けているんだっけ?それも十分にすごいと思うよ。」
魔法使いの人にすごいと言われた。僕は少し調子に乗りつつ、そのまま彼女と話を続ける。
「魔法ってどうやって使うの?こう腕を突き出せば使えるのかな?」
僕はそう言って、いつか見た光景を思い出しながら、テーブルの上のお冷に向かって「フリーズ」と唱えてみせる。
…しかし、何も起きなかった。
その光景を黙って見つめていた彼女は、笑いながら説明する。
「あははは、そんな簡単に魔法は使えないよ。あくまでも適性があるってだけで、最初から使えるわけではないんだよ。練習が必要なんだよ。そうだ!この後、暇?私が教えてあげるよ!」
「…」
僕は顔が熱くなったのを冷ますように、ジュースが注がれたグラスを呷る。
すると口の中に、あの恋しい味が広がった。これは…!
僕が、一息でゴクゴクとグラスのジュースを飲んでいると視線を感じた。
「ね、ねえ、それが何か…知っているの?」
エリカが目を見開き、何か信じられないものを見た様子でそういった。
「え!?スライムドリンクでしょ?」
僕は、キョトンとし、何ともないように答える。
そして、「エリカは飲まないの?美味しいよ。」と彼女に問いかけたが、彼女は固まってしまった。
そんな彼女に対して、リディが、うんうんと頷き彼女の方に体を向け、「その気持ちわかるわ、でもカイはこう言うやつなの」と僕に冷めた目を向けながら彼女に同情するように声をかけた。
そして、当のエリカはリディの手を強く握り、「あなた、相当苦労してるんだね」と口にしながら互いに頷き合っていた。
僕はその光景を見せつけられ、何とも言えない気持ちになったが、彼女たちが仲良くなったので、とりあえずよかったと思うことにした。でも、スライムは美味しいのに、ほんと、どうしてだろう?
僕はそうした疑問を口に出していた。
「ねえ、そんなに引かれることなの?メニューに出てくるってことは一般的なんだよね?」
「はー、そんなわけないじゃん。スライムって魔物だよ。モンスターなんだよ。誰が好んで食べるのよ。ここのメニューがおかしいんだよ!」
そう言いながら、周囲にギルマスがいないことを確認して、ここの朝食への愚痴、まあ大半はギルマスへの愚痴だったが、を続けた。
何でも、ここの宿が割高なのは、ギルマスが自ら、厳選した食材を使い冒険者の体に合った食事を提供しくれるかららしい。そして、その食事には毎食スライムドリンクが種類を変えて提供されるらしい。
僕は、数種類もあると聞いて、思わず喜びの声をあげたが、目の前に座る二人から「バカなの」と口を揃えて言われた。
何だろう?最近涙もろくなったのかな。
僕は鼻を啜りながら、「ギルマスは冒険者を思って食事を提供してるんだよね?スライムにも何か意味があるんじゃないの?」と問いかける。
「意味なんてないよ。あれはただのギルマスの好み。ギルマスが好きだから毎食提供してくるだけなの!ギルマスといい、あんたといい、あんなのを好んで食べるとか頭どうかしてるよ!」
あれ、僕まで、ディスられてない?初対面だよね僕たち…。
僕が戸惑っている中、彼女は、なおも愚痴を続けた。
「しかも、毎食提供する際に「残すなよ」と釘を刺してくるの。私がどれだけ苦労しながら誤魔化したと思う?…おかげで、闇魔法が得意になったよ!」
と彼女は後半ヤケクソにいった。そんな彼女の言葉に反応したリディが僕の方にそっとグラスを動かし、「ねえ、ぜひ闇魔法を教えて」と彼女に問いかけていた。
リディの問いかけに「もちろんよ」と笑顔で返すエリカに僕は、「そんなに嫌なら、宿を変えればいいじゃん。」と言った。すると彼女は、困惑そうな表情を浮かべ、小さく呟くように答えた。
「…できないよ。ここは私たちみたいな問題児にも優しいから。」
「ふーん、そうなんだ」
まあ、冒険者なんて荒くれ者の集団みたいなもんだし、そう言うものかと納得し、僕はリディから差し出されていた、スライムドリンクを口にする。
僕とリディは、朝食を食べ終わると、エリカの案内で、ギルドに併設されている訓練場に足を運んだ。
エリカは、約束通り、僕たちに魔法の使い方を教えてくれるそうだ。
「まずね、魔法は適性があっても使えるものじゃないの。さっきカイがやったみたいね。だから練習が必要なんだけど、そもそも魔法とは…」
彼女は、魔法初心者の僕たちに魔法の基礎理論をわかりやすく説明してくれた。ちなみにリディも魔法は使ったことはないらしい。彼女の街では一般的ではなかったようだ。
彼女の説明によると、魔法とは、体のうちに宿る魔力を使って世界に干渉する力のことを指すらしい。僕は、世界に干渉する力という言葉を聞いて、昨日、ギルマスから説明された「ギフト」を思い出した。
「エリカ、ギフトと魔法って何が違うの。同じように世界に干渉できるんだよね?」
「そうだった、あなたたちは[un known]だっけ。えーと、そうね魔力を使うか使わないかの違いらしく、ギフトは大抵一つのことに特化しているって聞いたことがあるよ。まあ、ギフト持ちって滅多にいないから、ほんとんど噂程度にしか知らないけどね。」
彼女はそう説明すると「とりあえず、次は魔法を実際に使ってみよっか」と明るくいい、魔力の扱い方を実演を交えて僕たちに教えてくれた。
その後、僕たちはエリカが見守る中、各々適正にあった魔法の練習を始めた。
リディは、流石というべきか、すぐに魔法をかたちにしていた。しかし僕は、未だ何もできていなかった。
そもそも、身のうちの魔力って何?
エリカは魔法や魔力について優しく説明してくれた。そしてそれは納得のいくもので、理解もできないことはなかった。でも、自分の体のどれが魔力に当たるのかが全く見当もつかない。このままだとどうしようもないので僕は素直にそう彼女に伝えることにした。
「それなら、私が、魔力をカイに流すね。そしたらカイも魔力がわかるんじゃないかな?」
エリカはそう言って、僕の手を握った。
その様子を見ていたリディが、駆け寄り「私も交ぜて。」と言ってきた。
どうやら、仲間はずれが嫌だったようだ。
僕たちは、三人で輪になるように手をつないぎ、エリカが合図するとともに、何かに押されるような感覚が僕の体に感じた。
そうか、これが魔力か。
僕らはしばらくの間、輪になり、互いに魔力の感覚を確かめるように魔力を回し続けた。終盤になると、魔力の流れに強弱をつけれるようになり、皆、遊ぶように魔力を流していた。
そうして、魔力の感覚をつかんだあと、魔法の習得は順調だった。魔力にイメージを込めることは想像していたものと同じで、少し理論的なものはあったが、エリカが冒頭にわかりやすく説明してくれていたので、昼前には、いくつかの初級魔法を使えるようになった。まあ、全て氷属性なんだけど。
魔法の練習が様になり始めた頃「今日はこれぐらいにして、明日からも教えてあげるよ」とエリカは言ってくれた。僕らは練習を止め、ちょうどお昼だったので、一緒にご飯を食べることにした。
ご飯を食べている時、エリカは僕たちの姿を見て、ふとこう言った。
「あなたたち、その服装は何とかならないの?よければあげるけど。」
僕らの服装は、2日前から変わっていない。汗や土埃でだいぶ汚れていた。
でも、着の身着のままで、僕らはやってきたし、この街についてからもそんな余裕はなかったので、しょうがないじゃん。
僕がそんなそぶりを見せるとエリカは「リディは女性なんだからそういうところ気をつけなよ。」と僕の方を責めるように見つめそう言った。そしてリディまでもが、そうだ、そうだと言わんばかりに首を縦に振り加勢してきた。
僕は言い返したかったが、無駄だと悟り、素直に反省した。女性二人から攻められると僕にはどうしようもない。
昼食を食べ終わり、湿ったタオルで軽く身を清めた僕らは、エリカの部屋に来ていた。
初めて入る、女性の部屋にドキドキしたが、同時に嫌な予感がしていた。
そして、嫌な予感は的中する。
「それ、今おろしたところだから安心して」
といい、エリカは下着を含む女性ものの服を一式手渡してきた。もちろん下はスカートだった。
僕は顔を引き攣りながら「女性ものしかないの?」と聞く。
「何を当然のこと言ってるのよ」と言った彼女の顔は満遍の笑みを浮かべていた。
僕は、リディに助けを求めるように視線を向けると、彼女は「観念しなさい」と言わんばかりの、笑みを浮かべた。
あ、これ知ってる。着せ替え人形にされる流れだ。
僕は血の気がひくのを感じ、扉の方に振り返った。そして全力で走った。
彼女たちは「あ、逃げた。」と口を揃えていってきたが、追いかけてくることはなかった。
全力で逃げようとする僕にエリカは「街の東にある服屋がおすすめだから」と大声で声をかけた。
僕は、一人街を歩きながら、勧められた服屋に向かった。
道中、街の人に道を尋ねると、「あー、あそこか」となぜか僕を見て納得するように優しく教えてくれたが、皆口を揃えて、あそこはやめておけという。
どうやら、よくない意味で有名な店のようだ。でもせっかくエリカが勧めてくれた店だからとりあえず向かうことにした。
案内された場所は、中世風の住宅が並ぶ中にある路地裏で、そこには廃れ、営業しているかどうかも怪しいお店が一軒佇んでいた。
僕は恐る恐るオープンと看板のかけられた扉に手をかけ、中を覗く。
「え!」
するとそこには、元いた世界と兼色ない可愛らしく綺麗な服が陳列されていた。
僕は、こっちにきてからそんなに経っていないのに懐かしく感じながらそれらの服を手に取る。
そういえば、エリカの服は現代でも通用するようなおしゃれな服だったなと思い返しながら、男でも着れるような服を探す。
すると、店主と思われるお婆さんが声をかけてきた。
「おや、可愛らしいお客さんだね。ここは世間では怪訝な目で見られるが、どれも私の自信作だ。どのようなものをお探しかい?」
僕は、男でも着れるものを探していると言うと案内してくれた。
僕は世間話をするように「それにしても、すごいですね。ここまでおしゃれなものを作るなんて」というと店主さんは「お、わかるのか!お主!そうじゃろ、なのに街の人たちときたら…」そう言って、愚痴をこぼし始めた。
僕は、気持ちはわからないことはないが、正直めんどくなったので、うんうんと適当に頷きながら案内された棚を見る。
そこには、ゆったりめのパーカーやパンツが並んでおり、僕はそこから、肩が見えるほど大きく襟元が空いたフード付きのパーカーと黒のシャツ、下はくるぶしが見えるぐらいの長さのゆったりめなズボンを選んで、あとは適当に下着とか最低限必要な服を購入した。値段が思ったほど高くならなかったのは、とても良かった。
僕は店主さんにお礼を言い店を出る。
今度、リディと一緒にこよう。
そう思い、満足した表情を浮かべ、帰路に着く。道中、美味しそうな甘いに香りを漂わせるお菓子屋があったので、お土産に少し購入して帰った。
ギルドに帰ると、リディとエリカが出迎えてくれた。
リディは黒と白を基調としたレイヤード風で、腰にリボンを巻き、裾がスカートのように見えるロングシャツワンピースに身を包んでいた。
「っかわいい」
僕は彼女の姿を見て思わず、身がたじろぎ、素直な感想を口からこぼしていた。
するとリディは恥ずかしそうに顔を赤らめ俯き、隣にいたエリカが笑みを浮かべて「やるじゃん」と言ってきた。
僕も恥ずかしくなり、誤魔化すように、お土産で買ったお菓子を差し出した。
その日の晩は、エリカとともにご飯を食べた。そしてデザートとしてお土産のお菓子を三人で分け合い口にした。彼女たちは大いに喜んでくれたので、僕は今後も通い詰めようと思った。
そして、2度目の夜がやってきた。
部屋に戻り、寝巻きに着替えた僕は「部屋の隅で寝るから大丈夫」と、同じく寝巻きに着替えたリディにいった。しかし、彼女は「風邪を引くわよ」といい僕の手を引き、ベットに連れ込んだ。
僕は、イヤイヤながらも彼女の隣で仰向けに横になり、彼女に「おやすみ」といい、目を瞑る。
「……」
や、やばい、眠れる気がしない。この静けさが逆に僕の思考を加速させてしまう。どうしよう。あ、こう言う時はもう羊を数えるしかないな。
僕が血眼になって羊を数えていると隣で横になるリディがこちらに顔を向け話しかける。
「ねえ、カイ。起きてるんでしょ。少し話さない?」
僕は仕方なく目を開け、彼女の方を見る。すると暗闇の中、彼女の表情がはっきりと見えるぐらい近くに彼女の顔があった。
僕の心臓がバクバクという音を奏で始める中、何を話そうかと戸惑っていると「あの後どこにいってきたの?」と彼女は問いかけてきた。
僕は、今日訪れた服屋のことやお菓子屋のことを話し、最後には自然と笑みを浮かべて「明日、一緒にいこ。」と言った。
すると彼女は、「レーズンサンドも良かったけどあのお菓子、美味しかったわ。カイは甘いものが好きなの?」と問いかけた。
僕が、「うん、そうだね。よく食べるよ。」と答えると彼女は何かを思い出すように口を開く。
「私の友達もね…甘いものが好きで、よくお菓子を作って持ってきてくれたわ。」
「そうなんだ。」
「彼女はね、私が部屋にこもって一人勉強していると、いつも明るい声で「一緒に食べよ」と部屋の窓から私を誘ってきてね。私はこっそり抜け出して彼女といつもお菓子を食べたわ。」
「それって、大丈夫なの?」
「うーん。大丈夫ではなかったかもしれないけど、彼女は私と違って、きらびやかな銀髪の明るい子で、領主になるための勉強詰で忙しい私の…唯一の友達だったから。」
「それで、お菓子は美味しかったの?」
「ううん、全然。見た目は今日食べたお菓子みたいに綺麗なんだけど、味が絶望的に不味いの。彼女、類を見ないほどのドジっ子でね、いつも「材料を取り間違っちゃった」って言っていたわ。」
「それは、良かったの?」
「聞いて、彼女のドジぶりはそれだけじゃないの。何もないところで躓くことは私たちの街では珍しいことでもないんだけど、彼女の場合は違くて、なんというか連鎖的に物事が進むの。彼女の躓きが原因で、街から少し離れた私の部屋の窓が割れることもあったんだから。
しかも、その原因の彼女に問い詰めると、「え!?何かあったの大丈夫?」と本気で恍けるもんだから、その場は皆凍りついたよ。」
「え、それって、彼女、呪われてるんじゃない?大丈夫?」
「うん、そうかもしれないね。でね、まだそう言うのがあって…」
彼女は楽しそうに、友達について話し続けた。
…けど僕は、僕たちはその結末を知っている。
「…でね、お菓子。たまに美味しいのがあって、それが………」
彼女はそう言うと、大粒の涙を紫に輝く瞳からこぼし、表情を隠すように僕の胸の内に顔をうずめた。
「…ごめん、そういうつもりじゃなかったの…けど…」
「うん、そうだね」
僕はそう頷き、彼女の頭にそっと手を置き、優しく撫でることしかできなかった。
翌日、いつの間にか寝ていた僕が目が覚めると、リディは昨日着ていた服に着替え、何やら出かける準備をしていた。
僕が起きたことに気づいた彼女は、申し訳なさそうに、だけど大きく笑みを浮かべて
「昨日は、カイ…ありがと」
といった。
僕はそんな彼女に「気にしなくていいよ。いつでも胸を貸してあげる」と茶化すように言った。
すると彼女は「変態」と口にした。
僕は予想外の言葉にダメージを受け、目に涙を浮かべ固まる。
彼女は、固まる僕に近づき「冗談よ」とくすくすと笑い、僕の手を取った。そして
「昨日の約束覚えてる?さあ一緒にいこ!」
と言って、握った僕の手を引っ張るように歩みを進め、扉を開いた。
お読みいただきありがとうございます。
見事、心臓が復活した仁奈です。
正直言って、仕事との両立がつらすぎます。
心臓そのままだと思いました。
世の中、仕事しながら小説を書く人たちがいるから私もできるかなと思い手を出しましたが荷が重すぎます。それで、面白いものを書いてくるんだからほんとすごいですよね。心から尊敬します。
すみません。少し弱音を吐いてしまいました。8月中には完成させたいと思いますのでよろしくお願いします。
謝ったついでにもう一つ謝ります。感想機能に制限を設けてたことに今更になって気づきました。ただのウザいやつでしたね…すみません。
さて、気を取り直して本編の話に触れたいと思います。
本編、長かったですよね。書きたい日常が多くてつい長くなってしまいました。しかも最初にしか書けないからタチが悪いです。
どうでもいい日常シーンがお嫌いな方は、ラストの部分だけお読みいただければと思います。
今回、服装についての描写が多く出てきましたが、表現するの難しいですね。主人公の肩が出るパーカーてなんだよ!構造上無理があるだろと思われた読者の皆様。一応、イメージを載せておきます。モデルとか柄とか色は重要ではないので、想像にお任せいたします。
次回、ついにクエストに出ます。
どのように描写すればいいか悩みどころでございます。
では、今回はこの辺りにして私もクエストに行ってまいりますので、帰ってきたらまたお会いしましょう。
次回 質問は選択式でお願いします。
参考
みてみん
URL https://44944.mitemin.net/i876210/