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アンケートから始まる異世界生活  作者: 仁奈
第二章 繋がりから始まる異世界生活
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第一五問 アンケートの主流はインターネットらしい③

第15話 最終パートです。


よろしくお願いいたします。

 静謐に包まれ、冷ややかな空気が肌を擦る。並ぶ商店の窓の奥から暖かな光が漏れ出した頃、ひらけた通りに三人の人影が映る。

 一人は胸と腕に細部まで装飾が施された金属製の防具に身を包み、背中には身長の半分ほどの長さのこれまた派手やかな装飾の剣を背負った青年だった。その青年は地平線から差し込み始めた光を背に煌めく髪を靡かせながら一歩前を進む女性に微笑んでいた。

 女性というよりは少女という方が正しいのかも知れない。まるで幼い子供が楽しみにしていた遊園地に訪れたように青年ともう一人の女性に笑いかけていた。青年と異なり、武具は身に付けておらず、その笑顔に浮かぶ双眸は氷のように透き通っており、白銀に輝く白のショートウルフな髪と相まって純白の雪のようだった。

 そんな少女を微笑ましそうに見る青年の隣には少しうんざりした表情を浮かべ、とほとほと歩く女性がいた。抱えるように身長と同じ長さの錫杖を持ち、黒と金色の刺繍があしらわれた白のコートに身を包み、頭には少し縦に長い帽子を被りそこから深く赤い髪が降りていた。


「ねえ、どうしてこんな朝早くから行かないといないの!」


 女性は隣を歩く青年に向かって声を張り上げながらそういった。


「そうだね。アーシェ。でも昨日済ますはずの予定だったし、早く行かないと」


「おねーさん。どうしたの?お腹でも空いたの?」

 

 青年が落ち着かせるように応えると下から覗くように少女が問いかけた。


 すると、アーシェと呼ばれた女性は肩を小刻みに震わせた。


「どうしたもこうしたも、あなたが道を間違えたせいじゃない!そもそもこの街の人たちは何の?私たちは冒険者ギルドに行きたいったのに…」

 

「宿に着いたね」


「そう!宿よ。案内された建物について時はギルドの併設かと淡い期待を抱いたけど、やっぱりただの宿だった。」


 彼らは昨日の昼前に、このスタディアの街につき目的の冒険者ギルドで用事を終わらすつもりだったが、初めて訪れるこの街の地理に詳しわけでも無かったため、道ゆく人に道を尋ねたが、どれも曖昧で、唯一詳しく教えてくれた二人組の女性の道も結局は違い、宿に着いただけだった。


「まあ、長い道のりで疲れていたし、ちょうどよかったじゃん。それに中々のおもてなしだったよ」


「そこよ!何が一番ムカつくかってそれは、こんな辺鄙な街のくせに王都に比肩するサービスを提供してきたことよ」


「おねーさんが一番くつろいでいたね」


 アーシェは顔を赤くしながら少女に向かって「うるさい」と吠えたが、それでもまだ怒りが収まらないのか、「何であなたが知っているのよ…」続けて小言を漏らしていた。そんな彼女を諌めるように青年が応えていた。


「朝食のビュッフェを逃したことがそんなに辛かったんだね。わかるよお姉さん。その気持ち。朝から満足するまで食べてよし、おしゃれな気分に浸るのもよし、全ての朝が詰まっているから…」


 アーシェに「うるさい」と言われ、楽しそうに悲鳴をあげて逃げていた少女がいつの間にか戻り、彼女の肩をポンと叩き、そして。


「そんなおねーさんに至高の朝をプレゼントしてあげる」


 彼女はそう言うとあからさまに神妙な面になり袂から今抜いたと言わんばかりの一輪の花を差し出してきた。


「「………」」


「ほら、甘いよ?」


ペシっ!


 アーシェはそれを見て無言で叩きおとした。ただ土を押し固めただけの無機質で冷たい地面に遅れて淡い赤色の花弁がひらりと舞いながら落ちた。


「な、なんてことをおお!せっかくの朝が……」


「「なんてことを」じゃないわよ!いらないわよ雑草なんて!そもそも私お腹空いてないし。ビュッフェを堪能したんだから!」


 それを聞いた少女は膝を折ったまま二ヤニヤと表情を浮かべた。そんな顔を見て恥ずかしくなったのか隣を歩く青年の方に目を逸らすと、その青年までもが微笑ましそうに笑みを浮かべてアーシェの方を見ていた。


「何よ。…ああそうです。満喫しましたよ!悪い?」


「ふふ、わかるよその気持ち」


 アーシェは青年の穏やかな黄金色の視線が合うと自分の心の機微を見透かされた気がし、次第に顔を赤く染めた。そしてそのどうしようもないもどかしさの捌け口は先ほどからふざけた言動を抜かす少女に向けられた。


「そ、そんなことより、あなたは何でいるの!昨日別れたよね?もう案内は必要ないんだけど⁉︎」


「ひどい!ひどいよ何でそんなこと言うの?私たち友達でしょ⁉︎」


 少女は大きく後ろにたじろぎ泣きはじめた。正直、アーシェは彼女に対してうんざりしていた。昨日、このスタディアの街を青年と二人で訪れていた。目の前でわざとらしく驚き悲しんでいる少女とはこの街からで、いつの間にか一緒に行動していて、その様はまるで最初からいたかのように馴染んでいた。当初はこの街の領主が用意した案内人かと思ったが、道を間違える始末。そんな彼女を隣の彼は大して問題視しておらず、むしろ人が多い方が楽しいと言うから今まで黙っていたが、これから一応大事な依頼を前にして邪魔である。ましてや、会って一日やそこらで友達なんてもっての外だった。


「友達?あなたの名前も知らないのにそんなわけないじゃない。もうあなたの用事は終わったんだから帰ったら」


「アーシェ、そんな言い方しなくても…」


 青年が突き放すような口調で少女を詰める彼女を嗜めようとすると、少女は彼に縋るよう胸ぐらに飛びついた。そんな少女の姿にアーシェはさらなる苛立ちを覚えた。


「フリーク!おねーさんが酷いこと言うの。フリーク私たち友達よね?」


「…僕の名前はサクマだけど」


「「………」」


「サクマ!おねーさんが酷いこと言うの。サクマ私たち友達よね?」


「やり直すなよおお!それでいけると思ったの⁉︎いや、そんな済ました顔しても無かったことにはできないからね。サクマさまもそろそろ怒ってもいいと思うよ。流石にこれ以上おふざけに付き合ってられる立場じゃないでしょ」


 そう言いながらアーシェは青年から少女を離すように動いた。青年、サクマは頬かきながら笑っていた。今更ながら昨日からいた少女のことは何も知らないなと気づき、楽観しすぎたとアーシェの言う通りだと自虐気味に笑った。そして今も楽しそうにしている少女に向かって緩んだ顔を引き締めた。


「最初に自己紹介をすべきだったね。僕はサクマ、見ての通り剣士をしていて、そして彼女は同じパーティーでヒーラーを務めているアーシェ。今は少し機嫌は悪いけど、ほんとは優しい人だから許してね。さて、僕たちはこれから冒険者ギルドに大事な用を済まさなければならないんだ。だから残念だけどここでお別れだ。ありがとう」


 サクマは、そう言うと少女の名前を聞くことはなく、お礼を言い彼女の隣をアーシェともに歩み通り過ぎようとした。しかし、去り際に見えた少女の顔がいまだに楽しそうにしながら口を動かしていた。


「知っているよ。サクマの用事が何なのか。先日の事件もあってほんと大変だよね。…ねえ勇者様!」


「「っ!」」


 少女は振り向きそういった。その口調は、先ほどまでと同じように明るかったが彼女の不雰囲気がガラリと変わったように感じた。サクマ達は瞬時に後ろに飛び下がった。そしてサクマは背中の剣に手をかけ、アーシェは彼をいつでもサポートできるように手に持った錫杖を突き出した。


 サクマが勇者のは事実だ。彼らは、前々から教会が出していたドリスの王都までこの街の領主を護衛の依頼を受けるのが目的だった。ついでに先日、この町で起きた事件の調査とその際捕獲されたオーガの処理に来た。彼は他の勇者と違い大々的に名前を出して活動しているわけではなかった。それが今回の護衛依頼では都合が良いと白羽の矢が立ちこの街に訪れたわけだったが、まさかそのことまで知られているとは思わなかった。そもそも先ほどまでの彼女の様子から今回の件とは無関係だと判断していた。


 サクマ達は注意深く彼女の次の動きを観察した。もし彼女が敵意を持って近づいてきたのならとても油断ならないからだ。同時にわざわざ事情を知っていることを明かしたことの狙いがわからない。


「君は一体何者なんだ?」


 サクマは困惑の中その答えを待った。すると少女が両手を前に突き出すように上げるそぶりが見えた。


(魔法か!)


 咄嗟に間合いを詰めるため足が動いた。後ろではアーシェが防御魔法の詠唱を初めているが聞こえた。


 間合いに入りその腕を切り落とそうとした時、少女は頭を抱えしゃがみ込みその剣を躱した。そして震え焦る声を出した。


「ま、待って。死ぬ死ぬ死ぬ。ほんと死んじゃうよ!いきなり斬りかかるのはなくない⁉︎私はとても悲しいよ」


「いや、誰目線だよ。それに仕掛けてきたのあなたでしょ」


 アーシェがそう問いかけると少女は首を傾げた。どうやら本当に敵意はないらしく、サクマは謝罪の意を込め事情を説明した。


「私が魔法?魔法の適性ないんだけど…。それにどっからどう見ても一般人じゃん!」


「いや、それでも僕が勇者だって知って近づき、尚且つ今回の目的まで知られていたら疑ってしまう。この街にとってはいいことではないからね」


「…今の私に敵意なんてないよ。私はただのフリーの記者だし。あ!私の自己紹介がまだだったね。私はシェル。あなたを記事にしたいの。いいかな?いいよね?」


 彼女はそう言うと肩から下げていた鞄から紙とペンを取り出した。


「あなたが記者?サクマさまの名前間違ってたじゃない。サクマさまこんな怪しいやつはほっといて早く用事を済ませようよ」


「な、名前?なな何のことかな?…あ。待っていかないで。雨後の筍のように現れる勇者の名前なんて全部把握できるわけないじゃん。おねーさんがフリアシティ教の祭服を着てたからそう思って近づいたんだよ。ねえ、お願いだから取材させてよ!」


 サクマは自分の手を引っ張るアーシェの足を引き留め、少し思案した。


「君といる時間はとても楽しかったけど、取材はお断りするよ。先方に了解を得ないといけないからね。まあ、それでも来るなら好きにしたらいいんじゃない?何だか君は止めても無駄な気がするし」


「さっすが!勇者様。心が広いね」


 それを聞いたアーシェはため息をついたが、サクマが認めてしまったので、それ以上文句を言うことはなかった。そして勇者と共に冒険者ギルドに向かって再び歩き出した。


「さあ!早くいこ!きっとみんな待ってるから」


 冒険者ギルドで緊張が走っていると知ってか知らずか、シェルは鼻歌混じりに弾みながら彼らの先頭を進んだ。






お読みいただきありがとうございました。



絶賛、冬眠期に突入した仁奈です。


 いや、ほっっっんとうに寒いですね。

 この冬の時期になると寒すぎて起きていられないですよね。目が覚めてもすぐに眠りについてします。しかしながら仕事とかやることはたくさんあるから起きないといけない。もし、人間にも冬眠という習性があることが証明されたら、冬眠休暇とか用意してくれるんでしょうか?割と合理的配慮とか言ってくれそうな気がしなくもないですよね。あーこの時期だけクマに生まれ変わりたいです。確か、そんな転生スキルがあったような?気のせいかな。

 さて、私のクマになりたい願望は置いといてですね、やっと15話を書き終えることができました。一ヶ月弱かかりましたね。ほんとうに申し訳ないです。次からは多分?こんなに長い期間かかることはないと思います。防具を直してもらったので。

 15話はインターネット。ついにスマホに意思が⁉︎宿ました。機械に意思が宿る展開は好きなので、個人的にはすごく描きたかった部分です。それに勇者も本格的に登場し、多くの人が関わるようになってきました。物語の中で勇者は悪みたいなイメージでしつこく書いた気がするのですが、別にそうでもないかもしれません。今後どのように展開するか楽しみにしない程度で期待してください。何だって多角的な視点で物事を書いていくのはとても難しいので、まだまだ私の技量では無理ですね。それでもなるべく自分が表現したいことが文字に起こせるようにします。

 では次回もよろしくお願いいたします。


改めて、お読みいただきありがとうございました。

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