閑話 アンケートする側にも事情がある。
とある世界にある一室。
そこには、あたりに物が散乱する中、何かをつまみながら画面に目を向ける女性がいた。女性は、画面に映し出された映像を見て、「なんとかなったな」と独りごちた。
しばらくすると、トンと部屋の扉が開くとともにこの部屋のもう一人の住民が入ってきた。
彼女は部屋の有り様に「はー」と深いため息をしながら横になり映像を眺めている彼女に話しかけた。
「アケディス様。ただいま戻りました。その相変わらずのようで…何よりです。」
横になっている女性、アケディスは扉の前に佇む女性にこっちに座るようにと振り向きながら言葉を返す。
「おかえり、そっちはどうだった?うまくいった?」
問いかけられた女性は申し訳なさそうに口を開く。
「いいえ、やはりダメでしたね。勇者の助長を執りなすことはできませんでした。今後もっと荒れると思います。そちらの方はどうでしたか?」
「そっかー、シルでもダメだったか。こっちは、まあ、うんと、えー上手く養殖場から引き抜くことはできたよ。」
彼女は何かを誤魔化すそぶりを見せそう言った。
「何か問題でもあったのですか?」
「いや、問題ってほどじゃないけど、ちょっとした手違いがあって」
アケディスにシルと呼ばれる彼女が詳しくと問いかけるが、アケディスは黙り込んだ。
「いや、怒らないので、正直に言ってください。何かあっては対処ができないじゃないですか?」
「いやでも、シルティアに苦労させるかもしれないし。知らない方がいいよ?」
「ほんと、何をしたんですか!?いいから、言ってください。」
アケディスはやれやれと観念したそぶりを見せて、先ほどまで見ていた画面の先の出来事を彼女に説明した。
「は?あの世界の状況についてなんの説明もせずに、挙げ句の果てに着の身着のままに魔物の巣窟に放り投げたんですか?何しているんですか、あなたは。」
「いや、だって、あいつすごい帰りたそうにするから、先に部屋に案内することにしたんだよ。で、私はその部屋で待ってると思って行ってみたらさ、あいついなくて。はは、すでにあっちの世界に来ていたんだよね。うう、私どうすればよかったのかな。」
「いや、そこで泣かないでくださいよ。でもその人無事なんですよね。」
「う、うん、不幸中の幸いだった。」
「あなたが言わないでください。それで、どうするんですか?」
シルティアが彼女に問いかけると彼女はじっと見つめ返した。
「…そんな目で見ても、行きませんよ私。さっき、下界から帰ってきたばかりですし、勇者に顔を割れているから無理ですよ。」
すると彼女は画面の方を指差し、大丈夫とシルティアに言った。
「ちょっと待ってくださいよ。私を封じ込める気ですか?」
彼女は、何かを察して、困惑したように慌てて問い返す。
「大丈夫、ちょっと意識を繋げるだけだから。私がそんな誰得なことすると思う?シルがいないと誰が私の世話をするの?ちょっと、あなたがいないだけでこのザマだよ?」
「頼ってくださるのは嬉しいですけど、それはそれでどうかと思うのでその点については考えてもらってもいいですか?私のために。…それで、本当に大丈夫なんですよね。失敗しないですよね。」
「大丈夫。安心して。私を誰だと思っているの?さあ、扉の前のスペースに立って。準備するから。」
シルティアは諦めたように「信じますからね」と言い、扉の前に立つ。
彼女が立ったのを見計らうと、アケディスは呪文の詠唱を始める。そして、シルティアの足元に魔法陣が描かれ、強い光を放ち始める。
詠唱が終盤に差し迫りもう直ぐ終わるというところで、バンッと部屋の扉が大きく開かれる。ピンクの艶やかな髪を靡かせそこに立っていた少女はドアノブを握りながらこう言った。
「アケディス、聞いたわよ!ついに異世界人を呼んだんですって!?」
「え?」
「あっ!」
「…あれ、取り込み中だった?」
少女はシルティアとアケディスを見て、困ったような表情で彼女たちに問いかける。
アケディスは、額に冷や汗を滲ませながら、戸惑った様に言う。
「え?あー、うん、今終わったところかな?よし、きっとなんとかなるよ。」
「アケディス様、きっとなんとかなるって何ですか?明らかにまだ詠唱の途中でしたよね?まさか、そんなわけ…ないですよね。」
そう言ったシルティアの体が先から段々と消えていた。
「う、うん、大丈夫。私の方でも…まあ何とかしてみるから。その…頑張って?」
「え!?いやだ!ちょっと待ってください。え、こんなの…。さっきあなた、失敗しないと言ったじゃないですか。え、待って、いきたくない。いやああああああああああああああ」
後には、彼女の悲痛な叫びだけが残った。
次回? アンケートの主流はネットらしい




