オネエな魔導書に導かれ、意地っ張りを克服したら、第二王子に溺愛されました。
「オネエな魔導書」がほかのライバル令嬢を導いたら、というお話です。
導入の説明を大幅に省いていますので、
「オネエな魔導書に導かれ、婚約者とヒロインの裏切り回避を目指していたら、氷の公爵子息に溺愛されました。」
を先に読まれることをお勧めします。
果たして、ほかのライバル令嬢が魔導書を手にしたとき、どんな風になるのか。
お楽しみいただければ幸いです。
アレクシアはフェアクロフ公爵家の令嬢として礼儀作法を身につけ、相応しい振る舞いをするよう心掛けていた。
フェアクロフ家は王族の血筋を汲む由緒正しい家柄だ。貴族の子女ならば、家門の存続のために動く。その最たるものが結婚だ。
だから、第二王子と婚約したのも当然のことと受け止めた。
幼少のころ、身体が丈夫ではなかった兄はまだ婚約者を持たない。その分、自分が家門のために申し分ない身分の人間と縁付くのだ。
身体が弱いにもかかわらず、兄はアレクシアが物心ついたときから優秀で、お手本として身近にあった。アレクシアは家柄にふさわしい振る舞いを「心掛けている」。けれど、兄は自然とそういった振る舞いをする。いわば、身についているのだ。
フェアクロフ公爵子息ジェイラスは、流れる清水のような銀髪に、静かな湖水を思わせる青い瞳をしている。病弱なことが弱みにはならないほどうつくしく有能だ。
アレクシアは健康な身体に恵まれ、自由に動き回ることができるのに、兄ジェイラスは子供の時分はベッドの上にいることが多かった。そんな兄の慰めになればと思い、蛙を見せることを考え付いた。
「お兄さまはあまり外に出られないのですもの。生き物を間近で観察されれば外の世界を知ることができますわ」
すばらしい思い付きだと信じて疑わなかった。予想外だったのは、蛙が跳ねたことだ。アレクシアがバスケットにかぶせたハンカチを取り去ったとたん、それまでおとなしくしていた蛙がぴょんと大きく飛び跳ねたのだ。ジェイラスが上半身を起こすベッドの上に。
その後の大騒ぎによって、両親にも兄にもこってり絞られた。
しかも、よりによって、兄はエドワードにも話してしまったのだ。エドワードはエントウィッスル国の第二王子であり、兄の友人でもある。でも、アレクシアの婚約者でもあるのだ。そんな殿方に、お転婆な失態を話してしまうなんて。
兄にはそういうところがある。
有能なのだから分かりそうなものだが、地位と容姿と能力によって男女問わず人気が高いため、女性のデリケートな心理を推し量ろうとしないのだ。
逆に、第二王子という高い王位継承権を持つエドワードはそういった機微に聡かった。
陽光を集めたかのような金髪、青空を彷彿とさせる碧眼は白い肌に映える。眦が下がっているからか、整った相貌は威圧感を与えることはない。
頭脳明晰な兄は大人と話が合うが、同年代の子供とはあまり会話が弾まない。だが、エドワードとは馬が合うらしく、友人と言える間柄だ。
兄もエドワードも女性から秋波を送られることが多かった。それはアレクシアがエドワードの婚約者となっても、ふたりが長じても変わらなかった。いや、エドワードは成長するにつれ華やかさを身につけ、一層女性の視線を釘付けにした。一方、兄と言えば、煩わしいと言わんばかりに冷徹な態度を貫いている。それでも多くの女性に言い寄られるのだから、ある意味すごいものである。
アレクシアとしては嫉妬をせずにはいられなかった。婚約者に群がる女性たちを牽制するには完璧な令嬢となれば良いと考えた。
あのフェアクロフ公爵子息ジェイラスの妹なのだ。容姿は申し分ない。ただ、ややきつめに整っていることが女性としては難点と受け止められるかもしれない。しかし、それも、堂々たる立ち居振る舞い、礼儀作法と相まえば、他者を圧倒する存在感を持つことができた。
それでも、たまにエドワードに接近しようとする令嬢はいる。それだけ、エドワードの地位や彼自身の魅力があるということだ。
だから、アレクシアは完璧な令嬢として振る舞うのみだ。
「きゃっ! ドレスにジュースが!」
これみよがしに被害者であることを前面に押し出し、憐みを誘おうとした令嬢は可憐な容姿をしていた。確かに、殿方を味方につけやすいかもしれない。だが。
アレクシアは扇を広げて口元を覆い、ちいさく言い放った。
「まあ、騒々しいこと。はしたないですわね」
ジュースが入ったグラスを持って移動するなど、令嬢にあるまじき失態だ。礼儀作法がなっていない。
夜会の主催者や参加者から挨拶を受け終わったエドワードがやって来た。アレクシアはカーテシーをし、貴い人に礼儀を尽くす。周囲にいた者たちはみなそうしていた。ところが、ジュースをこぼした令嬢は両手を握り合せて胸に押し付け、上目遣いでエドワードを見つめている。
目線を下にしても、そのくらいは視界に入れ、周囲の様子を把握することは当然のことである。
「なにか問題でも?」
失礼な令嬢に視線をやったエドワードはアレクシアにそう尋ねた。
「いいえ、なにもありませんわ」
エドワードがわざわざ気に掛けるほどのことはまったくない。
「そうか。ならば、踊ろうか」
「はい」
今日の夜会のエドワードとのダンスも素晴らしかった。ドレスもプレゼントされた髪飾りも良く似合うと言ってくれた。でも、それだけだ。社交辞令だ。
最近、婚約者はそっけない。
昔はもっといろんなことを話した。
子供の時分とは違って分別を持つものだが、それにしたって、エドワードの考えていることが分からない。
彼の友人である兄に相談したいところだが、近寄りがたい。そのくらいのことを、自分で処理できずになんとする、と言われかねない。
思い悩むアレクシアはとにかく自己研鑽に励んだ。うつくしく有能なエドワードにふさわしい令嬢であるために、綺麗で優秀な兄に恥をかかせないために、完璧を目指そうとした。
なのに、あのジュースの令嬢がエドワードやジェイラスの近くに現れる。
つまづいた令嬢を抱き留めたエドワードを見て、アレクシアは言い様のない不安を感じた。
こんな心情を話せる友人はいない。令嬢たちはアレクシアをほめたたえるものだから、不安やもやもやする気持ちを吐き出すことはできなかった。
そんな折、アレクシアはフェアクロフ公爵家に伝わる魔導書について思い出す。
時にフェアクロフ公爵家を正しい道に導くのだという。
その魔導書ならば、アレクシアに助言をくれるだろうか。けれど、門外不出どころか、当主のみに閲覧を許されている代物だ。
三つ子の魂百まで。そのとき、アレクシアは幼いころのお転婆がよみがえった。こっそり保管部屋に忍び込んで、魔導書を手に取ったのだ。古書を開いてみても、どのページも白い。
「魔導書なんて、見掛け倒しでしたのね」
『アラ、失礼しちゃうわね!』
どうしたことか、白紙に古語が浮き出てきた。そこからは怒涛の勢いで文字が羅列する。
『久々に手に取ってもらえた、しかも若い女のコだってのに、ご挨拶ね!』
『貴族のご当主サマってなんでみんなおじいちゃんなのよ!』
『しかもぜーんぶ、イケオジ! だったら若いピチピチしたうちに寄越しなさいってのよ! 勿体ぶりすぎよ!』
『アタシ、動けないんだからもっと頻繁に会いに来て! 暇でしょうがないわ』
『ところでアンタがアレクシア? このフェアクロフ公爵家のご令嬢の?』
ずらずらと今までアレクシアが接したことがない口調、価値観を表す文字が並ぶのに、呆然としていたら、唐突に問いかけられた。
「わ、わたくしのことをご存じですの?」
驚いてふつうに応えてしまった。そうしたら、当然のように返答がある。
『もっちろん! 今のご当主サマから聞いているわよ。お兄ちゃんのベッドに蛙を投げ入れたって』
「あ、あれは! お兄さまをお慰めしようと!」
『でしょうね。アタシも聞いたときにそう思ったわ。兄思いのイイ妹ちゃんじゃないって。ご当主サマにもちゃあんとそう言っておいたからね!』
思い返してみれば、父には一件があった当日こそ叱られはしたものの、その後、蒸し返した母や兄に「あれは病床のジェイラスを元気づけようとしたのであろう」とかばってくれた。
「あなたさまが父に言い添えてくださいましたのね」
『そうよお。第一、蛙なんて飛び跳ねるものじゃない。ねえ?』
「そうですわよね」
分かってもらえたことから、アレクシアの心はほぐれ、魔導書と様々に話した。
『なるほどねえ。ご当主サマから聞いていて、ここがゲームの世界だって気づいたけれど、いよいよ本編が始まったのね!』
たまに理解が及ばないことを書き綴るが、魔導書であるのだから、そういうものなのだろう。
『んまぁぁぁ! 本当にやったのね、ドレスにジュース! わーお!』
その言い様、もとい表現の仕方に思わず笑った。
「驚きますわよね。あまりにもはしたなくて」
『いやあねえ、ヒロインちゃん。なりふり構っていないわね』
ヒロイン。そう言われれば、物語のヒロインのように可憐な令嬢だった。そして、魔導書が表現する通り、なりふり構わず、見目麗しい殿方に接触しようとしていた。
『アンタがもやもやするのも分かるわ。さすがは公爵令嬢ね』
「とおっしゃいますと?」
アレクシアの気持ちを理解してくれたという喜びよりも、不安が起きる。それは最近なにかと感じるものと同種の感情だった。
『アンタ、このままじゃあ、エドワードをヒロインちゃんに取られちゃうわよ』
「まさか! この婚約は王家と公爵家が取り交わしたものです。それにわたくしにはなんの瑕疵もございませんわ」
『そうなんだけれどね。でも考えてもみて? 常に完璧であろうとすると疲れちゃうのよ。少しくらい、抜けている人間の方が、肩肘張らなくて付き合えるってものよ』
魔導書が綴った言葉は、それまでのアレクシアの価値観や努力を突き崩すものだった。
「わたくしは常に完璧な令嬢であろうと努力していますわ。なのに、」
アレクシアは言いよどむ。けれど、魔導書は斟酌してくれない。
『なのに、なによ?』
「エドワードさまのお気持ちが分からないのですわ」
あれこれ考えて、そう答える。
『ううん、よくわからないわね』
「そうなのですわ」
『違うわよ。アンタの言っていることが曖昧だっての。アンタ、もっとちゃんと思っていることを言ってごらんなさい』
「その、エドワードさまの笑顔が取り繕っているようなもので」
『ああ、なるほど。ほかのご令嬢たちに向けるのといっしょだってのね。婚約者なのにね』
自分が漠然と引っかかることを、明確に表現して見せる魔導書に、アレクシアは驚く。
「そ、そうですわ」
『そりゃあ、アンタが悪いわ』
「な、なんですって!」
一方的な言葉に、思わず声を上げていた。
『だって、アンタも取り繕った「完璧な令嬢」としてしか接していないじゃい。そんなんじゃあ、彼だって心を開かないわよ』
「そうかもしれませんが、」
そんなことはないと言いたいところだが、明晰なアレクシアはきっぱりと否定することができなかった。魔導書の綴る言葉に一理あると理解が及んだからだ。
『誰だってね、自分の痛いところを突かれたくないし、弱いところを見せられないわ』
「わたくしたちは婚約者同士ですのよ!」
『だからなによ』
にべもない。しかし、アレクシアも負けていない。
「それに、幼いころからともに過ごしてまいりましたわ」
『ああ、そうだったわね。ジェイラスともいっしょに幼馴染だったわね』
教えていないことを知っている。やはり、魔導書は本物の予言書だ。
そう。幼少のころから少なくない時間を共に過ごした。なのに、彼は変わってしまった。
知らず知らずのうちに魔導書を持つ手に力が入る。
『アンタはどうなりたいの?』
「わたくし? わたくしは、フェアクロフ公爵家のアレクシアですわ」
それは生れてから今まで当然のことで、さらりと口から出た。
『そうね。公爵家の令嬢としてふさわしいように努力しているわね。それで?』
「それで、とおっしゃいますと?」
掘り下げられてアレクシアは戸惑う。けれど、動揺は外に出さない。令嬢として常に優雅に泰然としていなければならないのだ。
『中身が伴わない家柄自慢なんてね、結局は劣等感の表れよ』
「なんてことを!」
アレクシアはあまりの言葉に優雅さをかなぐり捨てる。
このフェアクロフ公爵令嬢アレクシアに向かって、よりにもよって劣等感の表れとは!
『公爵家の立派な令嬢となってどうしたいの? 目標はそこではないわ。それは手段にしか過ぎないの。公爵家の令嬢として身に着けた様々なことでもって、なにを成すか。それが大切なんじゃないの? それにね。単なる公爵令嬢としてではない、フェアクロフ公爵家のアレクシアとして、できること、したいことを考えるべきなんじゃないの?』
アレクシアは望む未来を引き寄せるために、努力してきた。それだけではだめだったのか。
そうは思っても、プライドが高い彼女は魔導書の言葉を認めることはできない。理があると分かっていてもだ。
『みんなそうよ』
みんな、そう。望みを叶えるために頑張っている。
自分だけではない。
自分だけが頑張っているのではない。自分だけがすごいのではない。
魔導書が綴る言葉に、アレクシアは少しずつ心を変容させていく。
『アンタ、本当に意地っ張りねえ。なんのために頑張っているのよ』
魔導書が綴る言葉は直截でなんの遠慮もない。公爵令嬢として受けてきた斟酌の類は一切なく、さすがのアレクシアもたじたじとなる。
「そ、そうおっしゃられましても」
『ちゃんとね、言葉にして伝えなければ相手には分からないわよ。そうね、上級者なら、身振りや表情で通じるわ。でも、それってそうなるまでに積み重ねがあるのよ』
「わ、わたくしではその領域には至らないと?」
『ぜっんぜんダメね!』
一刀両断とはこのことだ。
魔導書はだんだん言いたい放題になってきた。
『この、意地っ張り! つべこべ言わない! やるのよ! アンタみたいなコはね、やってから後悔しなさい!』
そんな風に言われたのに、ちょっと嬉しかった。今まで高位貴族の令嬢として礼節を持った接し方しかされてこなかった。でも、魔導書はアレクシア自身に沿った助言をくれる。
そうだ。いろいろ思い悩むよりも行動する方が自分の性に合っている。
ときには、なんとなく意味が分かるけれど、風変わりな表現をすることもある。
『「推し」はね、応援してナンボよ。「推し」は「推薦する」の「推す」からできた言葉なのよ。相手のためになってこそなのよ! アンタの持てる力をすべて使ってエドワードが望みを叶えてみせなさいってのよ』
そしてまた、それが的を射ているのでぐうの音も出ない。
『いいこと? アンタの理想のエドワード像に近づけるんじゃないわよ? エドワードがこうありたいと願う姿を目標にするのよ』
その通りだ。なぜ、今まで気づかなかったのだろう。これでは兄にその他大勢と同列視されても当然だ。
「わたくしはフェアクロフ公爵家のアレクシアですわ。目標を目標のまま終わらせません」
『その意気よ!』
エドワードのことばかりではない。
なんと、兄ジェイラスが令嬢の名前を出すようになったのだ。
『アラ、あのセシリア・カーライル?』
魔導書は宰相の令嬢のことも知っているようだった。
セシリアは金茶色の波打つ長い髪にうす紫色の瞳といった、良く言えば清楚、悪く言えば地味な容姿だ。
「地味なご令嬢ですわ」
『アラ、そうでもないわよ』
魔導書はセシリアが病弱な弟のために薬を煎じていると綴った。
「令嬢らしからぬ振る舞いですわ」
『べつにいいじゃない。相手が自分にないものを持っていると認めなさい。相手に張り合うんじゃないの。自分が及ばないところを補ってもらうの。いわば、協力関係を結ぶのよ』
ひとりではできないこと、自分よりも優れた能力を持つ者と協力し合う。
そうすることで、より多くのことをなすことができる。
魔導書が言うことは理解できた。
『自分を大きく見せる必要はないわ』
プライドを持たないというのとは違う。
そう諭されて、アレクシアは素直に教えを乞うことにした。
「お兄さまは時折咳が止まらなくなることがありますの」
夜会でセシリアを見かけてさっそく話しかける。もちろん、挨拶や名乗り、当たり障りない話題、という貴族特有の手順を踏んだ後に本題に入った。
「それでしたら、ゴマノハグサの根を乾燥させた粉末を入れたお茶が喉の調子を整えます」
ほとんど話したことがないアレクシアにも丁寧に説明してくれる。
「ゴマノハグサというのは簡単に手に入りますかしら?」
「我が侯爵家で育てておりますわ。よろしければ、ひと鉢、差し上げましょうか?」
「まあ、ぜひ!」
よくよく考えてみれば、あの兄が名前を覚えた令嬢だ。兄と同レベルの知性ある会話ができる、希少な存在である。これが男性ならば多少はいる。だが、貴族の子女は兄が好むような知識を身に付ける機会はほとんどないのである。なお、兄と同レベルとは学者が持つ水準の知識、知性だ。
アレクシアはセシリアと会って話してみて、好ましい性質の持ち主だと感じた。
ならば、この令嬢を逃すなどもってのほかだ。しかし、ひとつ大きな問題がある。
『アンタ、なんでジェイラスの婚活に乗り出してんのよ! 大体、セシリアってハロルドと婚約してんじゃないの?』
そうなのだ。イームズ侯爵家の嫡男ハロルドと婚約している。
「あら、わたくし、お兄さまとセシリアさまとの仲をどうこうしようとは思っておりませんわ。お兄さまが同年代の人間と話が弾むなど珍しいことですもの。だから、会話する機会を設けようとしただけですわ」
『アンタ、狙いを定めたら行動が速いわね!』
魔導書はそんな風に言っていたが、その実、アレクシアはすぐさまフェアクロフ公爵家で茶会を催し、セシリアを招待した。
「そのときにその薬草をお持ちいただけるかしら?」
その席に兄も同席するよう手配する心づもりだ。
「もちろんですわ」
聞けば、病弱だとされていたセシリアの弟ギルバートが奇跡の回復を果たしたと言う。
「もしよろしければ、弟君もご一緒に。わたくしの婚約者である第二王子殿下もいらっしゃいますが、うるさ方はいらっしゃいませんわ」
「まあ」
あけすけな表現に笑ったセシリアは、アレクシアの言わんとすることを読み取り、丁寧に礼を述べた。
面倒な客は呼ばないから、ギルバートが社交界に慣れていなくても心配する必要はないという意味合いをしっかりと理解したのだ。やはり、聡明だ。
さて、そのギルバートはセシリアが長年薬を煎じていたにもかかわらず、病床にあった。けれど、エアハート子爵令嬢アンジェラが手に入れてきた目覚ましい効果を発揮する薬草によって、回復したという。
「そんな都合の良い話があって?」
それまでのセシリアとギルバートの苦労をないがしろにしているように思えて、関係のないアレクシアが憤った。
「わたくしは良いのです。ギルバートが回復したのですもの。いわば、わたくしの望みを叶えてくれたのですわ」
些末な出来事に捉われず、本質を見失わないセシリアに、アレクシアは素直に感心した。
「実は、少々面白くないと思っていたのですけれど、こうしてアレクシアさまが怒ってくれたのですもの。それで十分ですわ」
そんな風にささやくものだから、ふたりで顔を見合わせてどちらからともなくふふっと笑い出した。
『アンタ、なんでセシリアをコウリャクしてんのよ! ライバル令嬢同士だっつーのよ!』
魔導書はそんな風に綴っていたが、新しい友人を得て、アレクシアは少しばかり浮かれていた。その軽やかな気分はすぐに吹き飛ぶこととなる。
ギルバートを本復させるに至ったアンジェラの気質を見極めようと招待していた。だが、まさか狂態を演じるとは予想だにしなかった。
「よりにもよって、我がフェアクロフ公爵家の茶会で!」
アレクシアの怒りはぼうぼうと燃え上がる。
さらには、アンジェラはセシリアに嫌味を言った。
アレクシアが依頼したゴマノハグサの鉢とともに、育て方や茶にするレシピを記したメモまで用意してくれていたのだ。にもかかわらず、アンジェラは案内されてもいないテーブルに割り込もうとした。驚いたセシリアをギルバートが気遣ったのに、アンジェラは言い放ったのだ。
「あら、セシリアったらそんな繊細ではなかったでしょう? 大丈夫よ」
アレクシアの怒りはアンジェラが注いだ油でものすごい勢いで燃え盛った。
「我が家の正当なお客さまが容認できるかどうかはそちらが判断することではありません。連れて行きなさい」
怒りを抑えながら、ともかくこの場から退場させることにした。
ギルバートは本当に病弱だったのかと目を疑うほど、若木のようにすらりとし、礼儀作法に則った振る舞いをした。会話においては当意即妙の受け答えをする。なにより、姉を気遣い、さりげなく会話に加える。
アレクシアはなんとなく既視感を覚える。
『ああ、そりゃあね、コウリャクタイショウシャだもん。ほら、エドワードやジェイラスと同じレベルなのよ』
魔導書に言われ、納得する。アレクシアの身近にいた素晴らしい才能や知識を持つ者たちと同じものを感じ取っていたのだ。
ともあれ、まったく問題がないように見受けられたので、第二王子のテーブルへカーライル侯爵家の姉弟を呼び寄せた。
その際、またアンジェラがついて来ようとしてひと騒動あった。
「やだ、そんな地味な鉢。公爵家のお茶会にはふさわしくないわ」
よりにもよってそんなことを言ってアンジェラは殊更声を上げて笑ったのだ。許すまじ。
「いいえ、わたくしが心底欲しているものですわ」
セシリアはアレクシアの話を聞いて自分から譲ろうと言った。そのやさしい気持ちを踏みにじるような真似を、決して許すまいと思った。
しかし、アレクシアは悠長に怒っていることはできなかった。エドワードが幼少のころ、兄に蛙を見せようとしたエピソードを語ったのだ。
「あ、あれは! もうその話はやめてくださいませ」
「わたくしも病床の弟にいろいろ見せたいと思っておりました」
セシリアがアレクシアもきっと同じ気持ちだったのだと擁護してくれた。
「でも、蛙はないだろう」
そう言うエドワードには険はなく、茶会の席は笑い声に包まれた。その後は始終和やかに会話が弾んだ。たまに、アレクシアの理解の及ばない話題にもなったが、その際にはさり気なくセシリアやギルバートが説明してくれる。
そんなカーライル侯爵家の姉弟に気づいたのか、エドワードやジェイラスも噛み砕いて話してくれるようになった。
嬉しかった。それもセシリアが気を配ってくれたからだ。だから、彼女の弟もまた、自分によくしてくれる。
そんなセシリアに事あるごとに絡んでくるアンジェラが許し難い。
『馬鹿ね。そんなに攻撃的でどうすんのよ』
「ですが、許せませんわ」
『そうね。言い方を変える。令嬢なら令嬢らしい戦い方をなさい』
「令嬢らしい?」
戦い方。
魔導書の言葉は、アレクシアの心を掴んだ。
「そうね。わたくしはフェアクロフ公爵家のアレクシアでしてよ。公爵令嬢の品格を貶めることなく、やってのけてみせますわ」
『アンタ、高笑いが似合いそうねえ』
魔導書は呆れていたが、いっそ、そうしても良いかもしれない。
アレクシアは今までどんな令嬢よりも優れているという自負があった。家柄、容姿、立ち居振る舞い。令嬢として評価されるであろう事柄は網羅していると思っていた。
「けれど、違いましたの。それを、セシリアさまが教えてくださいましたのよ」
「まあ、素晴らしいことですわ」
そう言っておっとりほほえむのはコフィ伯爵令嬢ブレンダだ。アンジェラがブレンダの婚約者ガードナー伯爵子息エリオットにもちょっかいをかけていると知り、夜会で声を掛けたのだ。
「恐れ多いですわ」
セシリアは頬を染める。
そんなセシリアに、アレクシアはブレンダと顔を見あわせて笑い合う。
ブレンダも話してみると好ましい令嬢だった。おっとりしているように見えて、芯が強い。
「そうですか、セシリアさまの弟君もエアハート子爵令嬢が」
「とおっしゃいますと?」
「実は、孤児院で」
なんと、アンジェラは孤児院で毒草を見つけ、大事になるのを未然に防いだのだという。
「何事もなく、ようございましたわ」
セシリアはそう言うも、アレクシアはなんとなく釈然としない。
「大体、そんなになんでもかんでも上手くいくものですの? 都合よく簡便に」
『そうよねえ。ヒロインちゃん、やっぱり……。まあ、いいわ。それより、アンタ、人の恋路にちょっかいをかけるんじゃないわよ』
聡明で落ち着いているセシリアを、兄も気に入っている様子だ。しかし、兄もセシリアも理性的だから、ハロルドという婚約者の存在を忘れていない。兄とセシリアが友人として徐々に親しくなるのを慎み深く見守っていたアレクシアはすぐさま反論した。
「わたくしはなにもしておりませんわ」
しかし、魔導書は違う考え方をしていたらしい。
『そうそう。こういうときはそっとしておくのがイチバンだからね。そして、こっそりデバガメして逐一報告してちょうだい!』
「そんなはしたないこと、できませんわ」
『なに言ってんのよ! アンタだってオニイサマのことが気になって仕方がないくせに! このブラコンめ!』
ぶらこんとやらがなにを意味するのか分からないが、アレクシアは胸を張って言い返す。書を手にしていなければ、髪を払う仕草を付け加えていたところだ。
「あら、だって容姿にだけかまけるような令嬢を、お姉さまと呼びたくありませんもの」
『まあねえ。小姑のアンタのきつさに耐えられるコってそうそういなさそうだもんねえ』
ひどい言われようである。
『他人の恋路より、アンタはどうなのよ』
「最近はエドワードさまと和やかに過ごしておりますわ」
以前のよそよそしさは霧散している。
『そうなの? 良かったわ。エドワードはねえ、』
そうして魔導書が並べてみせた文字に、アレクシアは目を見張った。
自分はなにも分かっていなかった。
どのくらい、エドワードが思い悩んできたのかを。
でも。
エドワードは第二王子なのだ。高い王位継承権を持つ高貴な存在だ。
自分のすべきことは、そんな彼を支え励ますことではないか。
そう思うと居ても立っても居られず、アレクシアはすぐさまエドワードとの面会を申し入れた。
「エドワード殿下、捉われているのはあなたさま? それとも母上さま?」
会って挨拶が終わったとたん、待ちきれないとばかりに切り出した。
「?!」
あまりの唐突さに、常に泰然としているエドワードが絶句する。
「あなたさままで捉われて、いかがなさいますの! エドワードさまは次代の王の片腕となるべきお方。些末なことを考えなくても良いのですわ」
言いたいことを言ったらさっさと帰って来た。
魔導書に報告したら、いまだかつて見たことがないほど大きな文字が浮き出てきた。いわく。
『暴れ牛かっつーのよ!』
じゃじゃ馬どろこではない。魔導書にこてんぱんに言われるのももはや慣れた。そう思っていたら大間違いだった。
『アラ? じゃあ、エドワードはマタドール? イイわねえ、垂れ目イケメンマタドール!きらびやかな衣装も着こなしちゃいそう! でもねえ、その牛って勇猛果敢な「雄牛」なんだけれどね。令嬢なのにねえ。つか、そもそも、人間ですらないわよ』
とんでもない言われように、当然のごとくアレクシアは噛みついた。
そうやって、魔導書とぎゃあぎゃあ言い合っていたら、気持ちがすっきりする。
さて、エドワードに関しては、アレクシアもちょっと言い過ぎたかな、と思っていた。
『ちょっとどころじゃないわよ! 反省おし!』
ところが、その後、頻繁にエドワードから誘われるようになった。しかも、なんだか距離が近い。というか、大抵どこか触れている。手を握るとか、腰に手を当てられるとか、頬にかかるほつれ毛を払うとか、その際、耳にさっと触れるとか。
そんな風にされると、どうすれば良いのか分からなくなる。
「ま、負けませんわ!」
『勝ち負けの問題じゃないわよ』
心なしか、魔導書の綴る文字が気が抜けている感じだった。呆れているのだ。
『アンタ、本当に意地っ張りねえ。それにしても、エドワードってば、アンタにはサドッ気が刺激されるみたいね』
「サド……?」
『ええとね、つまりアンタの向こうっ気の強さを気に入ってはいるみたいってことね』
それは良いのかどうか、判断に迷うところである。
『もっちろん、いいに決まっているじゃない! アンタはそのままの路線でオッケーってことよ! じゃんじゃんイチャイチャしなさい!』
いちゃいちゃ!
『あらぁ。真っ赤になっちゃって』
文字が躍っている。面白がられている。それが分かっても、腹は立たなかった。なぜなら、まったく険がないからだ。
サドモードのエドワードに負けたくない。が、真っ赤に赤面してしまう。それを隠そうと俯いているとなにも言わず沈黙が流れる。顔を上げると、エドワードは真顔で、つい、びくりと身を震わせた。なんだか食べられそうな気になったからだ。まさか。猛獣でもあるまいし。それに、エドワードはすぐに笑み崩れたので本能的な恐怖は一瞬だった。魔導書が言っていたイチャイチャというのはこれかしら?!
と思って話したら、『なるほど。そりゃあ、真っ赤な顔で上目遣いされちゃあねえ』と文字が躍った。
『しかも、ふだんは意地っ張りの暴れ牛、じゃなかった強気令嬢が! 自分のちょっかいに真っ赤になって俯かれちゃあねえ。そーこーかーらーの! 上目遣いだもんねえ』
「な、なんですの! なにをおっしゃりたいの!」
『しかも無自覚! うんうん、垂れ目王子がしっかり楽しんでいるのが目に浮かぶわあ。ツボったのねえ』
「ですから! わかるように説明して下さる?!」
エドワードがなんだと言うのだ。
『アンタはアンタらしく、エドワードを虜にしたってことよ。きっと、付け入る隙はないわね。だって、ヒロインちゃんにはアンタと同じ真似はできないでしょうから』
魔導書が綴るヒロインちゃんとはエアハート子爵令嬢アンジェラのことだ。
「そのエアハート子爵令嬢ですが、どうも、お兄さまやガードナー伯爵子息エリオットさまに何度も接近しているのですわ」
『手あたり次第ねえ』
「ガードナー伯爵子息さまの婚約者はブレンダさまですわ」
確かな立場が約束されている。けれど、兄とセシリアは単なる友人だ。
「お父さまも、そろそろお兄さまの婚約者を探さなければとおっしゃっておられましたわ」
その候補にアンジェラが選出されたら。
外見は愛らしい令嬢だ。立ち居振る舞いなどは追々身に付けて行けば良いと考える者もいるかもしれない。
そんな風にアレクシアが気をもんでいたとき、その情報が舞い込んできた。
「セシリアさまが婚約破棄なさった?」
「どういうことなんですか?」
父の言葉にアレクシアだけでなく、兄も思わず声をあげる。
夕食の後、サロンでアレクシアと母は茶を、父と兄はブランデーを楽しんでいたときのことだ。アレクシアは一瞬、茶器の存在を忘れそうになったが、身に付いた令嬢としての振る舞いによって、粗相をすることはなかった。
「カーライル侯爵令嬢の婚約者、イームズ侯爵子息は別のご令嬢と不貞を働いていたそうなのだ」
しかも、それがエアハート子爵令嬢アンジェラだという。
「なんですって?」
「おや、知っているのかい?」
思わず声を上げたアレクシアに、父が尋ねる。答えたのは兄だ。
「先日、フェアクロフ公爵家の茶会に招待しました」
それだけでなく、その前後でも強引に接触を図ろうとするアンジェラに、兄は眉を顰めている。とはいえ、アレクシアも兄も、まさか実際に不貞を働くなどとは思ってもみなかった。しかも、相手は友人の婚約者である。
「イームズ侯爵の嫡男は後添えとその子に対し、あまりの仕打ちを積み重ねたこととカーライル侯爵令嬢との婚約破棄によって、廃嫡されることになった」
アレクシアは絶句する。身分社会の価値観では、爵位を受け継ぐことを取り上げられるなど、死の宣告にも等しい。
「そんなことが可能でしょうか?」
「家門を揺るがしかねないとあれば、嫡男とて切り捨てねばならんだろう」
懐疑的な兄に父はさらりと言ってのけてグラスを傾ける。そして、続けた。
「事実とは言え、様々な証拠を揃え、的確な時機に開示したからこそ、廃嫡などという大事をなさしめたのだろうが」
意味ありげな言い様に兄が片眉を跳ね上げる。
「カーライル侯爵の主導により行われた、と?」
「まあ、そう考えるのがふつうだろうな。聡明な娘が不幸せになる結婚をさせる愚を、宰相殿は犯さない。ほかに誰が数々の証拠を掴み、宰相殿を動かし、イームズ侯爵に決断を迫ることができる?」
父の言う通りだ。しかし、兄はふと小さく笑った。
「ひとり存じ上げております」
今度は父が片眉を跳ね上げる番だ。
「ほう? お前ではなく?」
「はい。実はわたしもイームズ侯爵子息の婚約者を裏切る行為を掴んでおりましたが、彼の方が迅速に動いたようです。カーライル侯爵令嬢に対する仕打ちとして、腹に据えかねたのでしょう」
誰のことだろう。兄よりも早く行動し、しかも見事に成し遂げてしまえる傑物など、そういない。
しかし、ともかく、これは好機だ。アレクシアは大きく息を吸った。
「わたくし、カーライル侯爵令嬢セシリアさまとは最近親しくさせていただいております。とても聡明でおやさしい方で、教わることが多うございますわ」
「あら、殊勝なおっしゃりようですこと」
フェアクロフ公爵家の名に恥じぬ令嬢としての矜持を持つがゆえに他人に向ける目が厳しいアレクシアに、珍しいこともあったものだと母が笑う。
「わたくし、お姉さまと呼ぶ方はセシリアさまのような方が良いですわ。知性のかけらもないご令嬢をお姉さまと呼びたくありません」
後に、魔導書は綴った。
『やりおった。コイツ、やりおった!』
「ええ、そうですわよ。やってやりましたわ!」
アレクシアは続ける。
「セシリアさまが婚約破棄なさったのなら、ちょうど良いではございませんか。なにしろ、お兄さまと会話が弾むご令嬢なのですもの」
「まあ、貴重なご令嬢だわ」
母が思わずという風につぶやく。母もまた兄の優秀さを認めつつ、だからこそできないものに対する冷淡さを知っている。似た者同士の兄妹である。
「ふむ。セシリア嬢か。ジェイラスはどうなんだい?」
その声音でアレクシアは悟った。父はアレクシアの案を、なかなか良いものだと感じている。
「素晴らしいご令嬢で尊敬できる女性だとは思いますが、」
珍しく兄が戸惑い、歯切れの悪い物言いをする。しかし、それはつまり、一言の下に切って捨てることはなかったということだ。
父と母が顔を見合わせる。
両親の行動は早かった。
『アンタの爆走ぶりはご両親の血を受け継いだのねえ』
あれよあれよという間に、父はカーライル侯爵と内密に話を取り付け、婚約を整えてしまったのだ。
「破棄したばかりなので、公表するのは時を経てからにしよう」
父は満足げに言い、母はセシリアを迎え入れる準備を早速始めようと浮き浮きしている。兄は平静そうだが、ちょっと耳が赤かった。アレクシアは緩みがちになるほほや唇を懸命に引き締めなければならなかった。
そんなこんなを報告したら、魔導書は綴った。
『やりやがった。やりやがったわ、この暴れ牛。なんなの、猛獣なの?』
「ほーほっほっほっほ!」
いつぞや揶揄された通り、高笑いをしてみせる。自然と腰に手を当て、胸を逸らし、顎を上げる格好となった。
『アンタ、それじゃあライバル令嬢じゃなくて悪役令嬢よ! なんなのよ。悪役令嬢が周囲を幸せにしてちゃっかり自分も幸福になっているなんて! こういうのもイイわよね!』
そうだ。望む未来のためにアレクシアは奮闘した。そして、婚約者の心を掴み、兄と和解し、友人を得た。これからも、周囲の人間を大切にしようと思う。
「意地を張らずにそうしますわ」
アレクシアは後にエヴァレット公爵夫人となる。夫を支え、ふたりは仲睦まじく寄り添った。
魔導書に導かれて、望む未来を手に入れたのだ。
そして。
魔導書は受け継がれる。
フェアクロフ公爵家当主ジェイラスに。
ある日、小さな手がページをめくる。
『あらあ、ご当主サマじゃなく、かわいい女のコじゃない。ジェイラスってば、一回こっきりで来なくなっちゃったのよ。アタシの軽快なトークを読んでいるとめまいがするんですって。失礼しちゃうわよね。それで? アンタはなにを悩んでいるの?』
「わたくしはフェアクロフ公爵令嬢リディアですわ」
魔導書の力を必要とするリディアがこっそりと手に取った。こうして、新たな物語が紡がれる。
魔導書は多くの者を導き、紐解いた者の望む未来をもたらす。
いつも応援してくださり、ありがとうございます。
お陰様でこのたび、
「オネエな魔導書に導かれ、婚約者とヒロインの裏切り回避を目指していたら、氷の公爵子息に溺愛されました。」
が電子書籍化することとなりました。
2014年1月26日エンジェライト文庫さんにより配信されます。
イラストレーターは東茉はとりさんです。
なんの実績もないわたしに電子書籍のお声がかかったのも、みなさまの応援、評価があってこそです。
加筆したことで、本編で欠けていた部分を補完できたと思います。
みなさまのお力のおかげで、加筆したエピソードにより、この物語は完成する機会を得ることができました。
ありがとうございます。
お礼の気持ちを込めて「オネエな魔導書」アレクシアVerを書きました。
(もうひとりのライバル令嬢ブレンダはどうなのか、と思われるかもしれませんが、ブレンダVerに関しては、電子書籍用に加筆した内容と重複、リンクする部分が多いので、投稿は控えます。ご了承ください)
アレクシアVerも加筆分と多少リンクするところがあります。よろしければ、電子書籍と合わせてお楽しみください。
なお、「暴れ牛令嬢」なんてのは出てきません。
なんでこうなったのか。
これはもう、アレクシアと魔導書の組み合わせによるものです。正直なところ、高笑いさせることができて楽しかったです。
ちなみに、ブレンダVerは電子書籍の方を読まれればなんとなく想像がつきそうなお話となりました。
(なのでお気になさるほどのものではありません)
せっかくほかにもイケメンがいるのだから、加筆部分ではジェイラスだけではなく、彼らにも焦点をあててみました。繰り返しとなりますが、マタドールは出てきません。
Web版の1.4倍くらいのボリュームになりました。
お楽しみいただければ幸いです。