幕間
式典会場へと向かう間、カリンの後方にてラウは思案する。
(先程まで、部屋にいたとき__ )
何か胸騒ぎがした。部屋の中や近辺に見張りがいたわけでもない、なのに何故か。そして、その胸騒ぎは会場へ近づいていくにつれて、段々と強くなっていくような気がしてならないのだ。
(何事も起きなければいいのだがな……)
だが、もしこれから先で何が起きたとしても、カリンのことだけは絶対に守らなければならない。それだけはラウが彼女の従者になったときから、ずっと覚悟してきたことだった。最近、カリンと二人きりであの部屋にいるとき、彼女の雰囲気が微かに和らいでいるように感じる。……きっと、俺の夢なんかじゃないはずだ。
日毎、式典への日数が減っていく内、拭い切れない懸念があったことは確かだ。カリンと出逢った日からの全てが俺の夢の中だったのかも知れない、なんて。でも、夢なら夢のままで構わない。だから今だけは、俺にとっての優しい夢がずっと続いてほしいとか、みっともなく願ってしまう。
考えを巡らせるうち、ラウの視線は正面にいるカリンへと向いた。深紫のマントを羽織る小さな彼女は、ラウには理解しきれぬほどの重責を一人で抱えている。
(君は、この夢を夢のままで終わらせてほしいと思ったのだろうか)
だが、カリンの願いは誰にも届くことはないのだろう。彼女が手にした偽りは、彼女自身を陰らせてしまった。だから、せめて自分だけは何も知らないふりをして、彼女の隣で能天気に笑っていよう。カリンの心が一時でも晴れるのならば、ラウという名の獣はどんなことでもしてみせる。
引きつった口角から鋭い犬歯が覗き、彼の瞳は昏い光を湛えていた。




