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47 聖女お披露目の宴4


「わぁ! ジェラート様、とても素敵ですわ!」


 今回の衣装もお揃いにすると決めていたので、デザイン段階から双方のデザイナーに参加してもらい、前回よりもより一層、夫婦に似合うデザインとなっている。


 シャルロットの希望も入れてもらい、夫の衣装はいつもより雰囲気の柔らかいものにしてもらった。

 ジェラートは容姿だけでも貴族から恐れられているというのに、服装もシャープな印象なので、さらに威圧感がある。それだけでも改善したいという気持ちと、夫の内なる可愛さを広めたいという気持ちから、今回の衣装が作られた。


 思ったとおりに、雰囲気が柔らかくなった夫。満足しながら見つめていると、ジェラートのほうもシャルロットのドレスを見回して微笑む。


「シャルのほうこそ、いつにも増して、可愛い」


 こうして衣装を褒め合うのは初めての経験なので、シャルロットは嬉しさのあまり、ふにゃりと頬が緩む。

 今までは現地集合だったので、ジェラートの衣装は会場に入る直前でしか見ることができなかった。こうして着替えた直後に見せ合うと、新婚のようでくすぐったく感じられる。


「ジェラート様に褒めていただけると、天にも昇るほど嬉しいですわ」

「天の神にシャルを奪われないか心配だ……。しっかりと繫ぎとめておかねば」


 こんな例え話でも、ジェラートは心配らしい。天に昇らせないためなのか、抱きついてくる夫が可愛い。


「まぁ。ジェラート様ったら、大げさですわ」

「大げさではない。シャルはもう少し、自分の可愛さを自覚すべきだ。それでなくとも、シャルは皆から愛されているのだから、俺はいつも気が気ではない」


 夫は寝室を共有したことで、またも一段階、シャルロットに慣れたらしい。今までは、ぼそぼそと呟いていた感情も、躊躇(ちゅうちょ)なく話すようになった。

 それにより気づいたのは、夫はいつも心配が尽きないこと。そして、シャルロットに対して、いつも全力投球なことだ。


 夫を知れば知るほど、夫に愛されていたことに気づかされ、シャルロットは毎日が幸せすぎて眩暈を起こしそうになる。


(それにしても……、本当にこのデザインで良かったのかしら……)


 シャルロットは自分が着用しているドレスを、改めて見回して首をかしげた。

 このドレスのデザインは、ジェラートの希望がふんだんに盛り込まれているが、シャルロットが入手していたジェラートの好みとは、随分とかけ離れている。

 フリルやリボンが程よく使われており、肩も露出していないどころか、首元まできっちりと布で覆われているデザインだ。


「ところでジェラート様は、フリルやリボンがあしらわれたドレスの女性は、苦手だと伺っていたのですが……」

「俺のことを、特に恐れる女性に多い服装だったというだけだ。シャルに似合う装飾はどれも好きだし、もっといろんなシャルを見たい」


 今まではジェラートの理想に近づこうとして、少ない情報を必死に集めていたが、夫の好みは意外と簡単なものだったようだ。

 夫に好かれたい一心で空回りをしていたと気がつき、シャルロットは苦笑する。


「そうでしたのね。ではドレスの型にも、こだわりはなかったのですか? 肩を露出した服装がお好みと伺っておりましたが」


 今後の参考にしようと思い、尋ねてみると「誰がそんな情報を……、フランか?」とジェラートは眉間にシワをよせる。


「はい……。私が無理を言って、教えてもらったんです。フランを叱らないでください」

「案ずるな。怒っているわけではないし、その情報は間違いでもない。――ただ、他の輩を喜ばせる必要もないだろう? シャルは、俺だけを喜ばせてほしい」


 この布の量は、ジェラートの独占欲の象徴らしい。

 これからは、露出を抑えたドレスをたくさん仕立てなければ。とシャルロットは張り切るのだった。




 用意を整えて玄関へ向かうと、ちょうどショコラが、クラフティにエスコートされている場面が目に入った。


 現在、ショコラは王太子宮で預かっており、シャルロットが手取り足取り教育を施してきた。

 そのかいあってか、何かの陰に隠れていなければ安心できないような性格だったショコラも、だいぶ貴婦人らしい振る舞いができるようになっている。

 エスコートの場面を目にしたジェラートは、「ほぅ」と感嘆の声をあげた。


「ショコラも、堂々と振る舞えるようになってきたな」

「はい。知らない人の前ではまだ緊張するようですが、感情が表には出ないようにはなりましたわ」

「これも、シャルの教育の(たまもの)だな。短い期間でよく頑張ってくれた、感謝する」


 ジェラートは労うように微笑みながら、シャルロットの頭をなでた。


 小説のシャルロットは、ジェラートを含め、誰からも感謝されることはなかった。小説と異なる展開を迎えるたびに、未来を変えられたと実感させられる。


(後は、側妃問題さえ乗り切れば、きっとハッピーエンドを迎えられるわよね?)


 小説どおりならば、王妃は聖女お披露目の宴の際に、側妃についての提案をするはずだ。

 シャルロットとジェラートが夫婦の寝室を作ったことで、王妃の気持ちに変化があれば良いが。


 これからおこなわれる宴に対してシャルロットが少し緊張していると、王太子夫婦に気がついたクラフティが、にこりと笑みを浮かべた。


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