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救出   夕ご飯はパスタ

世界が変わってから四日目、午後3時。

皆んなで必要な物を買い込みセーブポイントに横付けした大型キャンピングカーの棚に色々詰め込んでいく。



凛と蓮はキャンピングカーを大層気に入りはしゃぎまくっていた。




「何ここ!すごーい!すごーい!!!」



「だぁ!だっ!だっ!」




中の至る所を覗き込み大興奮のようだ。



「あらまぁ、すごいわねー!」



静江さんもキャンピングカーを気に入ったらしくゆったりとソファにクッションを持ち込みくつろいでいる。




「これは確かにすごい!テンション上がる!」



パパ達も大興奮で車内を見て回る。

キッチンにはちゃんと備え付けのフライパンやお鍋セット、包丁などが付いていた。調味料やお皿やコップなどは無かったので購入して置いておいた。

食器用洗剤やスポンジ、スプーンやフォーク、キッチンペーパー、トイレットペーパーに枕用クッション、布団セットやら必要そうなものは全て購入、かさばるものはアイテムBOXにそのままにしておく。



全員乗り込んだところで私はマザーテレサが発動している事を確認すると運転席にいる荻野さんに合図を出した。




「準備オッケーです!いつでも行けます!」



「じゃあ出るぞ!アベル道案内とかよろしく!」



「ホウ。任せるが良い。」



荻野さんの横の助手席、クッションの上にぽすんとのっかったアベルが自信満々に返事をした。

アベルがマップ画面を確認しながら荻野さんに運転指示を細かく出す。という作戦。

マザーテレサでモンスターがキャンピングカーを襲う心配は無いので今のうちに皆んな精神と身体を休めていく。




荻野さんはアベルの他に特殊アイテムショップでR武器ウィンドアローを購入していた。風属性の矢を放つ弓でレベルを上げた状態なら素早く動く相手でも当てられるそうだ。

SRには進化させとかないのか?と聞いたら残りのポイントは奥さん用に取っておきたい。だそうだ。

優しく、頭が良くて、愛妻家。すってきー!

奥さんの真理子さんとは私も何度か会ったことがある。すらっと細くて儚げな美人さんだけど意外と大食漢の明るい感じの方だ。、、どうか真理子さんも無事でいて欲しい、、、。



私もポイントを注ぎ込みマザーテレサの能力をMAX10にまて引き上げた。MPも満タンな今200時間は発動可能!

しかとMP回復薬もあるからMP切れは心配なさそうだ。


レベルMAXの10まで強化したマザーテレサは何と200メートル四方の範囲の中でなら何人でも守れることが可能。

モンスターの攻撃はもちろんの事、私に殺意や敵意を持ってる人などは弾かれるというなんともチート的なスキルとなった。しかも今後は私のレベルアップに比例して更に性能の上限が上がるとアベルが教えてくれた。




パパもパワーグローブを上限のレベル10まで強化したし、はじめた頃とは違い皆武器や装備、スキルを持っているのでとても心強い。




パァンッ!!




マザーテレサの効果範囲外をウロウロしていたダークウルフを太田君が車の窓からディバインライフで撃ち抜いた。

SRまで強化されたそれは銃を今まで撃ったことの無い人でも容易に的に当たることが出来る。




「武器を持ってるってだけでこんなに心強いとは、、、。」



ゴブリンキングの特殊アイテムイベントの際、丸腰で何も出来なかった太田君は今はギルドメンバー内で頼れる遠距離武器持ちのスナイパーと化した。経験値も貯める為一生懸命モンスターを狙っている。



今回はモンスターを気にせずとにかく最短で目的地に向かう。目に入るモンスターは全て太田君のディバインライフルと荻野さんのウインドアローの遠距離武器で倒す。




「すごい!皆武器持ちってこんな頼れるのか!」




すいすいと道路を移動しすぐに山梨さんの自宅の近くまで着いた。




「あっ!あそこ!」




道の脇に家の塀に突っ込んでいる私の軽を発見した。

横と前に車に道連れにされたであろうダークウルフが2匹死んでいるのが見えた。



「うわぁ、、山梨さん丸腰でよく無事にここに辿り着いたよね、、、。」




「メッセージでは1階から2階へは外からじゃないと入れないみたいだ。車をなるべく近づけて、窓から車の上に降りて移動してもらうか。」




「そうだね!、、でもそんなに寄せれるかな?」



「大丈夫、大丈夫。」




パパがそう言うと車から降りて、外にある室外機やらゴミ箱やらをパワーグローブでポンポン動かしていく。

大丈夫って、、壊してない?確かに車がギリギリまで寄せれるようにはなったけども、、。寄せた車の上に上がったパパはそのまま窓に向かって叫ぶ。




「山梨ー!聞こえるかー?下にいるから窓から出てこいー!」




パパが大声で叫ぶと2階の窓から山梨さんが顔を出した。




「一ノ瀬さん!本当に来てくれたんですね!!ありがとうございます!皆荷物を持ってこっちへ!」




山梨さんがそう言うと部屋の中から柚月ちゃんを抱っこした奥さんと、リュックを背負った葉月ちゃんが出てきた。

山梨さんも大きな荷物を担ぎ、順に窓からパパへとゆっくりと子供達と荷物を渡していく。最後に奥さんの絵里子さんと山梨さんが車に飛び乗った。





「なんすか、この車!」



「すげぇだろー?!皆んなで買った大型キャンピングカー!入れ入れ!」



「お邪魔しまーす!」



「あ、葉月ちゃんー!」



「凛ちゃーん!!」



バーベキューの時などによく遊んでいる凛と葉月ちゃんは互いに喜び、きゃっきゃっとはしゃぎはじめた。




「絵里子ちゃん!」



「葵ちゃん!」




私と絵里子ちゃんも互いの手を取り合って無事と再会を喜んだ。




「本当にありがとう!ごめんなさい、、翔吾が車をダメにしてしまって、、、。」




「無事で何よりだよ!車より命でしょ!この車の中からモンスターに襲われる心配一切いらないからゆっくり休んでね、すごい疲れてる顔してるよ。」




「本当にありがとう、、。モンスターがいつ家の中から2階に来るんじゃないかって気が気じゃなくて、。、、お言葉に甘えて座らせてもらうね、、、。」



絵里子ちゃんはそう言うとサイドのソファにもたれかかった。精神的にだいぶ疲れているみたいだ。



静江さんがキッチンでお湯を沸かし暖かい紅茶を淹れ絵里子ちゃんに出した。



「うわぁ、嬉しい!温かい飲み物、飲みたかったの!」



「お砂糖もたっぷりどうぞ。」



パァッと明るく笑って絵里子ちゃんは角砂糖を3個カップに入れるとゆっくりと噛み締めるように味わった。




「、、家の中は昨日から電気も使えなくなってしまっていて、、、この車の中は電気も火も使えるんですね。」



「どこから説明したらいいか分からないけど、この車はこの変な世界のルールの中で購入したものだから全部普通に使えるみたい。、、そうか、もう家では電気も使えなくなったんだ、、、、。」




「電気を作る人がいなくなったのか、、。」



「自衛隊とか警察とかはどうなってるんですかね、サイレン1つ聞いてないですね、、、。」




「、、とにかく自分たちが生き残る方法を第一に行こうか、、。電気も動かないなら籠城してる人達もどうなるか分からないから急ごう。」




荻野さんがそう言うとアクセルを踏み込み車を動かした。




「アベル、次はここの住所だ、行くぞ。」



「ホウ。承知した。」




予定通り次は荻野さんの自宅。お嫁さんの真理子さんがいるはずだ。

荻野さんの家に向かいがてら私達は絵里子ちゃん達に今まで事やセーブポイントの事など細かく説明していった。

はじめは信じられないといった表情だった絵里子ちゃんも話の終わり頃には真剣な顔で頷いていた。



覚悟を決めたと言うか、心が据わると言うほうがぴったりだろうか、、。子供達を守りながらいかに生きていくか、母というものはそこを第1に考えると思うから。




「、、話は分かったわ、。葵ちゃん、図々しいとはおもうけど、私と葉月、柚月もギルドに加えてもらえる?まだ何の力もないけれど食事の支度や子供達の世話くらいならやれるわ。」




「うん、もちろん入ってもらうつもりだよ!」



私はウインドゥ画面を開き、絵里子ちゃん達のギルド加入申請を受け入れた。



「本当にありがとうございます。俺も、頑張るのでまたよろしくお願いします。」



山梨さんが皆に頭を下げると全員に突かれ始める。




「勝手にいなくなるなよ。」



「はじめから相談してから行けば良かったのに。」



「バカ。」



「アホ。」



「、、、ひどい。」




そんなふうに言われながらもとっくに許されているのを感じた山梨さんは目から涙を流しながら笑っていた。




その後荻野さんの家に着いた私達は自宅に籠城していた真理子さんとも合流を果たした。

荻野さんは真理子さんを抱きしめて再会を喜んだ。

真理子さんは元気そのもので家にあった食料がたくさんあった為事なきを得たと言っていた。




荻野さんは真理子さんの無事を確認してから思いっきり抱きしめて喜んだ。ずっと心配で不安だったのだろう、目には涙が滲んでいた。

真理子さんはニッコリと微笑んで抱きしめ返す。



落ち着いた後、キャンピングカーに乗り込むとやはり興奮してすごいすごい!とはしゃいでいた。




「葵ちゃん!絵里子ちゃん!!」




「真理子さん!無事でよかった!!」




会社のバーベキュー会などでたびたび顔を合わせていてすっかり顔馴染みの奥さんメンバーが揃った。



お互いに再会を喜び真理子さんにも私と絵里子ちゃんから色々と説明をした。





次の行き先を決めようと皆で話し合うが、太田くんと内田くんは暗い顔で自分のウィンドウ画面を見ている。






「、、マップ上に検索しても出てこないんですよね、、母さんの名前で調べても、、何にも、、、。」




「、、、え?」




向かう途中何度も太田君が検索ボタンからお母さんの位置を調べるも1回も出てこなかったのだ、、。




今までは検索して出てきたらそこに向かえばその人はいたのに検索しても出てこない事は、きっとこの世界での死を意味している事は皆すぐに理解した。




「、、、そんな、、。」




「、、太田、、。」




「、、俺もっす。嫁の、、千晶の反応が、、無いです、、。」




「、、、、。」




皆、言葉を失った。

絵里子ちゃん達や真理子さんのように無事に会えた人がいれば、検索に反応も無く探せない人もいるのだ、、。







「、、内田、、、。」






太田くんと内田くんはそのまま車の中で下を俯いたまま何も喋らなくなってしまった。




1人になりたいのだろうと、パパや荻野さんが相談して一度別のセーブポイントにも寄ってみようと言う事になりマップで確認する。しかし、セーブポイントはどうやら一県につき一箇所らしく1番近い所でも隣の県になるので時間がすごくかかってしまう、、。今日のところは朝までいたセーブポイントに戻りそこで休もうとなった。





時間ももうすでに夜の7時をまわっていてあたりも暗くなってきていた。





「ママ、、お腹空いた、、。」



走り出した車の中で凛が私の服を引っ張り空腹を訴えた。

それに同調するように葉月ちゃんや柚月ちゃんも絵里子ちゃんの服を引っ張る。




「ママー、私もお腹すいたよー。」




「お腹、空いた、、。」





慌てて山梨さんがアイテムBOXからおにぎりやパンを出して2人に見せるが




「それもう食べたから嫌。」



「他の食べたいー。」



「ママのご飯がいーいー!」




とグズリ出してしまった。





「あ、じゃあパスタとかなら車の中でもすぐに作れるよ?パスタは好きかな?」





パスタという言葉に子供達がぱぁっと顔を輝かす。

絵里子ちゃんと真理子さんが、ささっとキッチンの棚を確認してお鍋や湯切りザルの準備をする。

こうゆう時主婦は早いから良い!




パスタの麺はすでにキッチンにたくさんあるし、オリーブオイルやニンニクなどもある。調味料もあるし、、


私はウィンドウ画面からポイント購入欄にいくと、合い挽き肉とトマト缶、卵、パン粉、玉ねぎ、じゃがいもにケチャップ、ウインナー、それにサラダに必要な野菜を購入。ポンポンっとキッチンに出し並べた。




「子供達もいるし、肉団子のトマトパスタとウインナーのペペロンチーノにしましょうか。」




「いいね!わかった。じゃあ私はペペロンチーノとサラダやるから絵里子ちゃんと葵ちゃんはトマトパスタの方お願いね。」



「はーい!」



最年長ママの真理子さんの指示で絵里子ちゃんとトマトパスタを担当する。



玉ねぎをみじん切り、合い挽き肉と卵、牛乳に浸したパン粉少々、塩を加えてまとまるまでこねる。

こねたら一口サイズに丸めてフライパンで軽く焼き目をつける。そこにトマト缶1缶とコンソメ、ケチャップと水を少々加えて煮詰めたらソースの完成だ。


茹でたパスタと絡めて大皿に盛る。



横には真理子さんが作ったウインナー入りペペロンチーノとシーザーサラダが出来上がっていた。




「荻野さん、ご飯出来ましたから一旦運転休憩して食べましょう。」



「おう!」



「ホウ、、人間の食事か、、良い香りだな。」



「アベルも食うか?」



「ホウ、、少しだけもらおうか、、。」




そういうとアベルは荻野さんの肩に止まったままお皿に取ったトマトパスタの中の肉団子を美味しそうに啄んだ。



、、スキルなのに、食べれるんだ、、。

梟って肉団子食べれるんだ?

そんな事を思いながら凛や蓮にパスタを取り分ける。

みんなでいただきます。をしてから一緒に食べる。

暖かな場所で温かな食事がありがたかった。




「、、内田、太田、、食えるなら食っとけよ。」




「、、はい、ありがとうございます。」



「はい、、、。」



車のソファ席の隅にいた2人も元気は無いがゆっくりと少しずつ食事を始めたので少しだけみんなが安心した。






「美味しい!美味しいねー!」



「美味しいー!」



「これも美味しいんだよー!」



「んま、んまー!」



「あらあら、蓮くん口の周りすごいねぇばぁばが拭こうねぇ。」



ニコニコと食べる子供達の顔を見るとそれだけで何が救われる気がした。




こんな世界になっちゃったけど、こんな状況になっちゃったけど、、子供達が笑って生きていけるように私達親が頑張って生きていかなくちゃいけない、、。





「美味いっす!」



「うん、おかわり!」





パスタ大盛りを平らげて行く山梨さんやパパ、荻野さん、ここにいる全員がどうやったら笑ってこの先生きていけるのか、、、。




今後この世界を生き抜いていくのならポイントは必須だ。

だから必ずみんな武器やスキル、装備を持って戦わなくちゃいけない。




このキャンピングカーだってかなり広いけど所詮車だ、、。ずっと住むには限界がある。何より仲がよくても他家族なのだ。プライベートだって必要だろう。




皆自分の安全を確保出来たらきっと次は親達や兄妹、親戚の心配や検索をするはずだ。



助けに行くにしろ乗れる人数は限られてしまう。

助けに行きたい人は沢山いる。

私のお母さん、お父さん、、お姉ちゃん、、お兄ちゃん、、

親友のはるかは少し遠くに住んでいるし、、検索自体まだ怖くて出来ていない、、。







そうなると次に必要なのは、、、、





私はご飯を食べながらずっとこの先の事を考えていた、、、。








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