出発 夕ごはんは静江さん特製弁当
パパを迎えに行く為に私達は準備を始めた。
私は探索スキルでパパの現在地を確認、確かに会社にいる。アイテムボックスから移動用燃料を選択し、車に移すとガソリンタンクが満タンになった。これを使わないと車は使用出来ないらしい。
更にアイテムボックスはポイントを使って手に入れた物しかしまえない事が分かった。
私は少しでも生存確率を高める為、ポイント購入ページを隅から隅までじっくりチェックしては吟味をし購入、アイテムボックスを埋めていった。
武器の夢幻槌フライパン返しをタップすると
夢幻槌(フライパン返し)
レベル1
サブスキル A 無し
と出てきた。ランダムガチャで出てきた武器用サブスキルAってここで使うんじゃない?と思いアイテムボックスにあるであろう武器用サブスキルAをタップしようと探すも、無い、、、。
????
良く分からないので今までやってきたいろいろなゲームを思い出して考えてみる。
、、、、、もしかして武器用サブスキルAってサブスキルのAのスロットを獲得っていう意味のアイテムだったのか、、、?
じゃあスロットAに何かしらサブスキルをセットできるかもと思い武器のサブスキルAのところをタップしてみる。
サブスキルAにセット出来る
サブスキルアイテムを持っていません。
専用ショップで取得して下さい。
、、、、まじかぁ、、、。サブスキルアイテムって別売りなのかー、、、しかも専用ショップって何よ?
ポイント購入ページをどれだけ探してもサブスキルアイテムなんてどこにも項目が無かった、、、。
とりあえず一旦サブスキルについては諦めて次は武器の強化をタップしてみる。
夢幻槌(フライパン返し)
レベル1を強化致しますか?
強化1回に必要ポイント数 30
、、、ポイント数30も取るの??!多分、食料をポイントで取得した時に使用したポイントを現実に置き換えると1ポイント¥100くらいだから、、何強化1回に¥3000もとるわけ?!
、、、背に腹は変えられない、、ポイントも大事だけど、私達が死んだら意味無いし、今頼れる武器は私のフライパン返しだけだし、、、、。
私はポイントを使用してフライパン返しを強化した。1回強化すると、レベルが1から2に変化した。
とりあえず出来るとこまで強化をしてみようと強化ボタンを連打していくと、
夢幻槌(フライパン返し)
レベル2を強化致しますか?
強化1回に必要ポイント数 40
、、、、必要ポイント数増えてる、、、。
まじかぁぁぁぁぁあ。これまさかレベル1上がる事に必要ポイント数も上がっていくやつぅぅう!!!
お金めっちゃかかるやつぅぅぅ!!!
盛大にツッコミを入れながらも私は武器強化にポイントを注ぎ込み約650ポイントを使用してフライパン返しをレベル10にまで強化したのだ。
SR夢幻槌(フライパン返し)
レベル10
強化 ※上限です。
サブスキルA 無し
約10000まであったポイントも今では9350にまで減ってしまったが仕方がない。
なんか無駄に精神をすり減った感が半端無い、、、。
約6万、、現実のお金だと6万、、、、、。
私の月のお小遣いが1万だから、、6カ月分がフライパン返しの強化に消えたことになる、、、、。
6万あったらなんでも好きなもの買えるし、ご馳走だって高い店行けちゃうし家族皆で日帰り旅行にも行けるのにぃぃぃいぃぃ、、、、。
でも、これで外をうろついているモンスターは絶対に倒せるはずだ。私でも!多分!
静江さんと凛のアイテムボックスにも必要な物を入れておいた。
車に子供達の荷物を詰め込み、後ろのチャイルドシートに2人を乗せる。助手席に静江さんが座りしっかりとシートベルトをしめる。
私はマップ画面を出したままにして、車のエンジンをかけた。マップ画面でモンスターの点在地を確認しつつなるべく少ない道を選んでいくつもりだ。
私の残りMPは8 のまま。温存しておいたおかげであと8時間は使用可能である。パパの会社までは普段ならバイパスに乗れば30分くらいで行ける距離だ。
なんとか最短時間で行きたい。
今時計は4時を指している。
暗くなるまでにはパパの会社へ、、、。
凛にはしっかりとむやみに騒いだら危ないからママとばぁばの言う事を聞く事、絶対に離れない事を念押しして教えた。蓮君はとにかくグズらないことを祈る。
幸いお昼寝がしっかり出来たので今はご機嫌に座っている。
「じゃ、じゃあ、出発します!作戦が成功しますように!」
「、、行きましょう!!」
車を発進する。
田舎道は見通しが良い、止まっている車が何台かあったが、中には人もおらず乗り捨てられているように思えた。
きっと、お昼のイベントがはじまってすぐに車が動かなくなり、皆家の中に逃げ込んだに違いない、、。
たまに道路に血痕のような痕を見かけてドキッとする。
、、モンスターに襲われた人が何人いるんだろうか、、、。
車を走らせても警察や救急車などは1台も見なかった。
マップを確認しつつ、モンスター点在地を迂回しつつバイパス乗り口を目指した。近くのモンスターが移動したのを確認すると、バイパスに入ることに成功。
「ここまでは順調ね、葵さん!」
静江さんが嬉しそうにペットボトルのお茶を私に渡してくれた。一口お茶を飲み喉を潤した。
迂回したのもあり、いつもは5分の道を15分くらいかけて進んだ。緊張で私は手のひらに手汗をじっとりとかいていた。
「はい!後はバイパスを20分も走って道を下ればパパの会社まですぐのハズです。」
バイパスにも何台も車が停めてあった。2車線をゆっくりと車にぶつからないようにくねくねと進む。中には救助を待っているのか、動かない車の中に乗ったまま待機している人達を見かけた。
窓から 助けてくれ、乗せてくれと叫ぶ人もいたが、私達にはどうしようもないので進んだ。
「ごめんなさい、ごめんなさい、、助けられなくてごめんなさい、、、。」
静江さんが助手席で両手を擦りながら拝んでいる。
私は何にも考えないようにただアクセルを踏んだ。
どうしても車で塞がってしまっている時は車で車を押したり引っ張ったりして動かすしかなかった。
バイパス道路上にモンスターがあまりいない事もあり、時間はかかったが思ったよりは早く通過する事が出来た。
それでも一時間以上かかってしまった。車から外に降りたりして作業する時も念の為マザーテレサを発動していた為、
私のMPはすでに6まで減ってしまった。
更に問題だったのはバイパスを降りてからだった。
パパの会社の方向へ近づくに連れモンスターが増えてきているのだ。何度も何度も迂回したり、遠回りするのだが、必ずといって良い程モンスターがいる。
一旦隅に車を停めて、マップを拡大するしてみる。
ここまで近づけばパパな会社もマップ上に映るはず。
「あ、、ここですね、、、。静江さん、これ、、。」
「、、、竜の会社、三角マークがついてるじゃない!」
特殊なボーナスイベント地になっていると言う事。
モンスターがここに近づけば近づくほど多いのもきっとそのせいだ。
「、、急ぎましょう!パパが心配です!」
車を急発進させると同時にマザーテレサを発動。車全体をスキルで覆う。そのまま目の前に出てきたモンスター、ゴブリンを車でぶち当たる!
軽くドンっと衝撃はあったものの、スキルのおかげでゴブリンは弾け飛び道に倒れ動かなくなったのをバックミラーで確認した。何とも嫌な気分だ、、、。
それと同時にスターテス画面からピロンと音がしたと思うと文字が表示される。
モンスターを撃破しました。
経験値が入ります。
車での体当たり+マザーテレサスキルでモンスターを倒せるとは思わなかった。
轢いたりぶつかるのはイヤだがこの際手段を選んでられない、、、。
パパの会社までアクセルを踏込み次々とゴブリンを吹っ飛ばしていく。
凛には目と耳を塞いでお歌を歌っててとお願いした。
凛は小さな声で、アンパンマンのマーチを歌っている。
モンスターを撃破しました。
経験値が入ります。
モンスターを撃破しました。
経験値が入ります。
モンスターを撃破しました。
経験値が入ります。
ピロンピロンと文字が流れていく。
あと少し!
パパの会社の敷地内に入った途端、ステータス画面に文字が現れた。
特殊ボーナスイベントが発生しています。
通常エリアの3倍の量のモンスターが
徘徊しています。沢山倒してポイントを
稼ぎましょう。ボスのゴブリンキングを
倒せばイベントクリア。ポイントが多い
順に特典が配布されます。
「、、確実にモンスターいますけど、、行きます?」
私は再度静江さんに確認する。
「ここまで来て帰れませんよ!例え死んでも孫と嫁と息子、皆んな揃って帰るわよ!!!」
腹をくくった女は何よりも強いんだと実感した。
「分かりました!行きましょう!!」
会社の正面玄関側駐車場にいるゴブリンをまず全部車で飛ばして何もいなくなったのを確認してから、私達は車から降りた。もちろんマザーテレサは発動したままだ。
静江さんが蓮を抱っこ紐で抱っこし、ベビーカーに凛を乗せる。
「凛、お利口に出来るね?お約束おぼえてる?」
「覚えてるよ!大丈夫!パパ早く探そうね!」
「うん、大丈夫!凛も蓮も、ばぁばもパパもママが絶対守るからね。」
私はリュックを背中に背負い、
夢幻槌、私にとっての巨大フライパン返しを構える。
何も知らない人からみたら気が狂った女としか見えないだろう、、、。
「、、入りますよ!行きましょう。」
そう言って私達は大きな20階建のパパの会社に足を踏み入れた。MPが残り5になったのと同時だった。
私が先頭に立ち、後ろから蓮を抱っこし、ベビーカーを押す静江さんがぴったりとついてくる。マザーテレサの効果範囲は3メートル、絶対に離れられない。
会社の一階フロアには人が1人もいなかった。皆んな逃げたんだろうか、、、
探索スキルでパパを探してもこのビルにいる事しか分からない、、一体何階にいるのか、、、、。
イベントが始まったのはお昼の12時ぴったりだった、、、。
会社のフロアガイドを確認する。
「静江さん、まずはパパの部署の12階を目指します。そこにいなかったら15階の食堂にいきましょう。」
「分かったわ!行きましょう!」
一階正面のエレベーターに向かいボタンを押す、、が、、反応しない。
「、、、、、、嘘でしょ、、。」
エレベーターが使えないとなると、、階段から行くしかない。でも、ベビーカーは階段は無理だ、、。
何でこんな事考えてなかったんだろう!抱っこ紐2つ持ってくれば良かったのに!!!
「、、凛、ごめん、ベビーカー乗れないの。ママと一緒に頑張ってパパのところまで歩いてくれる?」
歩くのが嫌いな凛は泣きそうな顔で私を見てくる。
「その代わりパパ見つけておうち帰ったら凛の欲しがるお菓子、ママぜーんぶ買っちゃう!」
「まぁ!凛ちゃん。良いわねぇ!ばぁば羨ましいわぁ〜。」
お菓子と、ばぁばの言葉に気を良くしたのか凛はコクンと頷いた。
「分かった、頑張って歩く。」
「お利口!凛ありがとう!絶対にママとばぁばと蓮から離れちゃダメよ?ゆっくり歩いていくからね?それとゴブリンが来たらばぁばにしがみついて目を閉じておきなさい。ママがやっつけるからね!」
「うん!分かった!」
本当は怖いだろうに4歳の凛が精一杯頑張って強がっている事に涙が出そうになる。
皆んなで帰る。
怖いけど、、すごい怖いけど、、怖がってなんかいられない!!!!
主婦の底力見せてやるわ!!!
夢幻槌フライパン返しをぎゅっと握りしめて私達は奥の階段へ続く通路を進んだ。
通路両側には何個か扉があったがどれも中が見えないように目隠しがされていた。
きっとどの部屋も中で人が籠城して救助を待ってるんだわ、、、、。
「、、!」
「、あ、、葵さん、、。」
階段からゴブリンが1匹降りてきた、私達を見つけ嬉しそうにニヤニヤと笑いながら駆け寄ってくる。
「凛!ばぁばにくっついて離れちゃダメよ!」
「うん!!」
覚悟を決めた私は、飛びかかってきたゴブリン目掛けて巨大フライパン返しを思いっきり右から左に振り抜いた。
パァンッ!!!!!
SR武器レベルMAXの威力は凄まじかった。
布団叩きで布団を思いっきり叩いたような音がフロアに響き渡った。
巨大フライパン返しで叩かれたゴブリンは壁に打ち付けられ粉々になっていた。私には衝撃の反動は一切無く、無傷。
何より攻撃力が凄まじい。
SR級の武器といえど、まだレベル1の私では攻撃力がたかが知れている。
だからこそ私はポイントを注ぎ込み武器の強化に使ったのだ。
その為当たりさえすればゴブリンごとき簡単に吹っ飛ぶくらいの攻撃力を取得出来たのだ。
本当にポイント注ぎ込んどいてよかったぁあぁぁあ!!!
現実のお金に置き換えると6万だからね、、、。マジで。
モンスターを撃破しました。
経験値が入ります。
レベルが上がります。
ステータス画面がピロンと鳴りモンスターが絶命した事を知る。
初めて、、自分の手で直接ゴブリンを殺した。不思議と罪悪感は無く、、ゴキブリを殺した時の気持ちに似ていた。
ああ、、そうか、ゴキブリだと思えば良い、、、。
これなら行けそうだ。私でも武器さえあればいける!
乱れた息を整えて、静江さんに目配せする。
静江さんがコクンと頷き後ろからまた付いてくる。
凛も頑張って歩き出した。
階段を一階、また一階と上に登っていく。
その度に現れるゴブリンを巨大フライパン返しでスパーン、スパーンと薙ぎ倒していく。ピロンピロンとうるさい画面の音は設定画面でオフに出来たので自分の行動に集中する。
ゆっくり登っているとはいえ、静江さんは10キロもある蓮を抱っこして、凛とも手を繋いでいる為5階フロアの階段の踊り場で息が上がってしまった。一時間かかり、5階まで来た。MPは残り4。
12階まであと7階もある。
「ご、ごめんなさいね、、完全に運動不足だわぁ。」
ふぅ、ふぅと肩で息をしている静江さんにペットボトルのお茶を渡す。
凛も少し疲れてきたのか眠そうな顔をしている。
実際私も普段運動なんてしていないから武器を振り回している両手も常に緊張しているからか体も重く感じている。
武器強化で最大まで軽くはなっていたが何せ大きいから、、。そして使用してる私はただの主婦だから、、、、。
レベルアップは確実にしている為か体力はまだ持ちそうだけれども、、、MPやHPはレベルアップでは回復しない使用のようだ。
ゲームのようにモンスターを倒して経験値が入ればすぐにレベルがアップしてHP.MP共に全回復。私はそれを期待していた。
それなのにレベルが上がっても一向にMPは回復しないままだ。考えが甘かったか、、、。ゴブリンを倒すたびポイントも増えていくがポイント購入出来る商品の中にはMPが回復できるようなアイテムは無かった。
しかしこんな所で休めない。MPにも限りがある。
マザーテレサのスキルが切れたら私達にとっては致命的になる。
「もう少しです。頑張りましょう!12階に着いたらパパがいてもいなくてもまとまった休憩を取りましょう。だからそこまで何とか踏ん張ってください。」
「だ、大丈夫!行けるわ!頑張りましょう!凛ちゃんだって頑張って歩いてるんだし!ばぁば負けないわよ!」
「凛もまだ頑張れるよ!ママ。」
「んだー、あぱ、んんん。」
ずっと抱っこされている蓮が抱っこ紐から出たそうにしている。本格的にグズる前に移動しないと、、、。
そこからまた一階、また一階と着実に進み、息も絶え絶えになんとか12階までたどり着いた。
途中から凛は動けなくなっめしまった為抱っこしたら登り、ゴブリンの気配がしたらすぐ降ろして倒し、また抱っことうハードモードになった。
蓮も抱っこ紐から降りて歩きたいのかバダバタと手足を暴れて静江さんを困らせている。お煎餅で機嫌を取りかろうじて時間を稼ぐ。
静江さんも私も凛も、もう限界だった。
休憩しないと、、、、これじゃあみんな倒れてしまう。
MPは3にまで減っていた。
12階、パパの部署の部屋まで最後の力を振り絞るように武器を振るい、ようやく部屋の前まで到着した。
足がガクガクする。
ドアの内側から鍵がかけてあるみたいで開かないので、ノックをして呼びかける。
、、、どうか、、どうかいますように!!!!!
「すいません!開けて下さい。今近くにゴブリンはいません!私、一ノ瀬竜の嫁の一ノ瀬葵と申します。」
中からガタンっと音が聞こえた。
ガタガタと物をどかす音が続くとガチャっとドアが開いた。
「入ってください、早く!」
見覚えのある男の人に促され私達は急いで部屋に入り込んだ。そこへすかさずまた数人の男の人達がドアの鍵を閉めたあとに沢山の机を扉の前に動かしてバリケードを築いた。
「葵!!!」
部屋の奥から、愛しい声が聞こえてきた。
「、、パパ!」
「パパァ!!!」
私より先に凛がその声の先へと走っていく。
凛は思いっきりパパに抱きついた。
凛を抱き抱え致しそうに頬に自分の顔を擦り寄せる
一ノ瀬竜、私の最愛の旦那様の姿を確認すると同時に視界が真っ暗に鳴り私はその場に倒れこんだ。
あ、やばい、、、これ、、だめだわ、、、、。
「!大丈夫ですか?!奥さん!!」
「葵!?!」
周りの声が遠くから聞こえてくるような感覚の中私は意識を失った、、、、。
「、、、、、、あ、、。」
どれくらい意識を失ったいたのだろうか、、、。
私は重い瞼を開けた。
「あ!奥さん起きましたよ!一ノ瀬さん!」
「良かった、大丈夫ですか!?」
周りには見覚えのある人達。パパの会社の同期や後輩達だ。私と竜の結婚式にもきてくれたし、定期的に家の庭でやるバーベキューにも参加してくれる良い人達だ。
「山梨さんに、荻野さん、太田くんに、内田くん、、皆無事だったんだね、よかった、、、。」
「葵さんこそ、子供連れでここに乗り込むなんて!何考えてるんですか!!!」
パパの後輩の内田くんが声を荒げる。
「大声だすな!葵、大丈夫か?!」
奥からパパが来て私の手を握る。どんなに、、どんなに会いたかった事か、どんなに心配した事か。
会えて、生きてて本当によかった、、、、。
安心した私は涙が溢れて止まらなくなってしまった。
竜は私の背中を宥めるようにさすってくれた。
「驚いたよ、葵がここに来るなんて、しかも母さんと子供達まで一緒だなんて、、。大まかな説明は母さんから聞いたから大丈夫だ。ここはガッチリバリケードしてあるからゆっくり休んでくれ。」
「、、パパ、凛と蓮は?静江さんも、、」
慌てて辺りを見渡すと、1番奥のソファーで静江さんと凛が寝ているのが見えた。
蓮はその近くでパパの後輩の太田君に遊んでもらっている。
「、、良かった、、。」
ふと時計を見ると夜の11時だった。12階に着いたの確か7時頃、、私4時間も気を失ってたんだ、、、。
「パパ大丈夫だった、?」
パパは私の顔を心配そうに覗き込みながら頷いた。
「俺たちがさ、異変に気付いたのは12時半ごろだったんだよ。12時に変な画面が急に目の前に現れたけどすぐに消えてさ、気にも止めなかった。お昼になったら食堂が空く時間帯までここで待ってたんだ。それで、さぁ食堂行こうかって時に別のフロアからすごい悲鳴が聞こえてきたと思ったら通路に気持ち悪い化け物みたいなやつが沢山現れたから慌てて鍵をしめて、皆でバリケードはったんだ。」
竜に続いて竜の大学時代からの付き合いの同期の荻野さんが話し出す。
「部署メンバーの半分以上はもう食堂に移動してて無事か、どうかも分からない。この部屋に残ってたのは俺たち5人だけで、、、、もう何が何だか分からなくて、、」
「それでもここにいる皆に怪我が無くて良かった、、、。」
、、、、グゥぅう〜
隣にいる竜のお腹から盛大な音が鳴った。
苦笑して竜が腹を抑える。
「俺たち、昼飯から食いそびれてんだ。だから腹ペコなんだよ。」
「あああ〜空腹辛いっす〜。」
奥でパパの後輩の山梨さんもお腹に手を当てへたりとその場に座り込む。
「あ!食べ物!あります!沢山持ってきましたから!!」
私は傍にある自分の背負ってきたリュックを引っ張ると中から弁当箱やらタッパーやらをいくつも取り出していく。
それをみたパパ達が わぁっ!ととても嬉しそうに喜んでいる。
どれも出発前に静江さんがせっせと作ってくれたものだ。
私がポイントでのアイテム購入やら武器強化をしている間、凛と一緒にパパの為に頑張ってくれたのだ。
「皆んなで食べながら今まで事を詳しく話し合いましょう。情報を共有しないと。」
静江さんも、凛もちょうど起き上がり私に気付いて駆け寄ってくる。
「ママ!もう大丈夫なの?!」
凛を思いっきり抱きしめる。
ふんふんと凛の匂いを嗅ぐと癒されるから不思議だ。
「心配かけてごめんね、凛。階段登るのすごい頑張ったねえ!!ママはもう大丈夫だから安心してね!」
「うん!凛すごい頑張ったよー!足のね、こことここが疲れちゃったの。」
凛は右足と左足を交互に指差していかに足が疲れたかをアピールする。アピールの仕方可愛すぎか!
私は再度思いっきり凛を抱きしめて無事を喜んだ。
蓮も私に気付き、ダダダッとこちらに走ってくる。
「っま!っま!」
抱きつくというよりほとんど体当たりに近い突撃を私は全身で受け止めるとまた思いっきり抱きしめる。
ぷにぷにのほっぺにすりすりして、両方のほっぺたにチュウをする。
「エハハハハァっ!きゃぁぁあっ!」
くすぐったかったのか笑いながら身を捩る蓮。それも可愛すぎて更にすりすりしてやった。ああ、、癒される、、。
「葵さん、気が付いたのね、よかったわぁ、、。」
「静江さんも子供達2人連れての階段突破お疲れ様でした。
1人じゃとても無理でした、、ありがとうございます、、。」
「何言ってるの、あなたが頑張ったからここまで来れたんだし、竜にも会えたんじゃないの!ありがとうはこっちのセリフよ。顔色もまだ悪いわ。何か食べて休みなさいな。さぁ、とりあえず皆食事にしましょう!お腹空いた状態じゃ何にも出来ないわ。」
静江さんはそう言うと出したお弁当箱やタッパーをテキパキと開けて割り箸を皆に配る。
バリケードの為机を使ってしまっているので床に直置きだがこの際しょうがないだろう。
梅干しやおかかのはいったおにぎりに唐揚げ、卵焼き、ウインナー、野菜の煮物、プチトマト
それを見て凛やパパ達がお弁当の周りに円になるように座る。
「わぁ!遠足みたいだねぇパパ!」
凛は大喜びでパパの膝に座りおにぎりを頬張った。
蓮もおにぎりをむしゃむしゃと夢中で食べている。
他のみんなもよほどお腹が空いていたのだろう。ガツガツと食べ始めた。
「う、うまいっす〜!!」
「餓死すると思ってた、、。」
「本当に良かった、、うう、美味しい、、。」
皆半泣きで夢中に食べている。こんな状況なのに何だが可笑しくて私は自然に笑顔になっていた。
あっという間にお弁当箱が全て空になってしまった。そりゃそうだ、大食らいの男の人が5人もいるんだもの。凛と蓮を最優先にみんなおかずやら何やら譲ってくれた。
「もっと作ってくれば良かったわねぇ、、、。どうしましょう。」
「あ、大丈夫です。静江さん。パパ、ここってお湯沸かせる??」
「お湯なら給湯器があるからそこにあるぞ。」
「じゃあ大丈夫だね。」
私はアイテムボックスからポイント購入しておいたカップ麺を大量に出した。
「うおおおおおおおっ!?」
「すげぇ!何か出てきた!!」
「カップ麺だぁぁぁぁあ!!!」
「沢山あるから思う存分おかわりしてくださいっ!!」
私がそう言うと皆いっせいにカップ麺を掴み給湯器に並びはじめる。そして3分待つ、、皆待ち切れないのか2分ほどで一気に食べ始めた。
内田くんと山梨さんは3つもおかわりした。
「いやー、、、ほんっとにご馳走様でした!!」
「ご馳走様でした!まじでありがたいっす!!」
「ご馳走様でした!さっきのカップ麺出したの何ですか?!」
皆揃ってもお腹いっぱいになった所でようやく話し合いが始まった。
そこで色々分かったけれど、そもそもパパ達はステータス画面の事も知らなかったのだ。もちろんアイテムボックスの事と知らなかった。
「箱が、、無かった?玉の入った。」
「全員の机に気づいたらあったから誰かの出張土産だと思ってた。腹空いた時開けて見たけど食べ物じゃなかったからすぐに蓋閉めてそのままだった、、、。」
「とりあえずバリケードで机使う時に邪魔なもの全部どかしたからそこに全部あります。」
指差しをされた方を見ると壁側にパソコンやら書類やらの荷物がぐちゃっと積まれていた。
そこにあの白い箱がまとめて積んであった。
おおおお、、これじゃもう誰が誰の箱か分からないけどしょうがないよね、、、、。
多分食堂に移動してここにいない人達の分の箱もある。
ざっと見て10箱くらいはあった。
とりあえず私はパパ達に朝からあった事を全部細かく話し始めた。もちろんSSRスキルの事やポイントの事、イベントのこと私が分かること全部。話終わるまでに1時間もかかってしまったけれど、皆とても信じられないといった表情をしていたが、話が進むにつれ、自分のステータス画面を開いたりポイント購入ページを確認したりして話を信じてくれた。
凛と蓮はお腹が膨れて眠くなったのかソファーで静江さんが寝かしつけてくれた。すでに時刻は午前1時をまわっている、、、。夜中までごめんね、おやすみなさい。
あああ、、子供達の歯磨きすっかり忘れてたぁ、、、明日家に帰ったら念入りに磨いてあげないと、、。
9月とはいえ朝方は冷えるのでブランケットをかけておいた。静江さんも子供の近くですでに休んでいる。
私たちは暗くなった部屋で子供達を起こさないように相談を続ける。
どうやってここから脱出するのか、、、。
「自分は、、家族が気になります、、。でもここを脱出したとしても話を聞く限り車動かないんじゃ無理ですし、、。嫁もきっと仕事場で、子供達は俺の実家のところにいるはずだから、、、。」
山梨さんは4人家族だ。お嫁さんは看護師だし、お子様は4歳、2歳の女の子2人、、。
「俺も、、家で嫁が1人のはず、、、。」
「俺もです。」
内田くんと荻野さんは結婚しているが子供達がまだいない。夫婦で暮らしている。
「俺は、母ちゃんが心配です、、、。」
太田くんは独身だけどお母さんと2人で暮らしている。
皆それぞれ守りたい人がいて、その人達をすごい心配しているんだ。
でも実際問題、各自武器もスキルもなくポイントも10のみ、移動手段も無い。家族どころか自分1人生き残れるかも分からない状況なのだ、、、。
私のマザーテレサのスキルを使って全員このビルから出れたとしても、、私の軽じゃ全員乗れない。
車を2台に分けるとしても移動用燃料がポイント購入欄に出てこないため手に入らないから動かせないし、よっぽどぴったり並列運転でもしない限り私のマザーテレサの有効範囲かははみ出てしまう、、、。
これ、、無理じゃない、、?
パパだけ、、、
いや!パパの会社の同期、後輩だとしてもこの人達は私にとってももう長い付き合いの友人と言える。
そしてパパも絶対この人達を置いて自分だけ逃げるなんて事は考えたりなんかしない。そして私はもこの人達は置いていけない。
考えないと、、なんとか全員無事に、なんとか、、。
「、、とりあえずその箱を全部開けてみましょう。」
壁側に積まれていた白い箱を全部並べて蓋を開けていく。この場にいない人の分も全部。使えるものは使わなくては。
全部で11箱あった。
「きっと玉の色でレア度を表しているんだと思います。私は虹色でSSRでしたが凛と静江さんは青色でポイント購入で手に入るような救急セットや食料セットでした。蓮は赤だったけれど、また喋れないのでステータス画面開かないですし、、、、。」
「とりあえず、今みたところ11個中 、青が8個、赤が3個か、、、ゲームとかだときっと青色がノーマルランクの物で赤がきっとレアランクの物が出てくるんじゃないか?」
パパはまだ玉に触らないように慎重に箱を動かした。
問題は誰が赤玉を使うか、、、
静江さん私、凛と蓮を除外して玉を分配するのはパパを含めて男の人5人。
11個の玉を5人で分ければ1人2個だけど、、そのうちの3つしか赤玉は無いのだ、、。
ノーマルとレアでは生存確率が全く違ってくるだろう、、、。
全員が無言のまま箱を見下ろして動かなくなった。
「、、、、赤玉の1つはまず一ノ瀬さんが使って下さい。」
沈黙を破るように、山梨さんがそう言った。
「、、そうですね、1つは一ノ瀬さんで決まりだ。」
「そうだな、一ノ瀬さん使って下さい。」
内田くんと、太田くんもそれに続く。
「、、、、いいのか?」
パパが皆んなを見渡すと、大学時代からのパパの友人でもある荻野さんが赤玉の入った箱をすっと持ち上げてパパの目の前に差し出す。
「お前、嫁さんがわざわざ命かけて子供連れて迎えに来てんだぞ、良いとこ見せたいだろ。」
パパはみんなの顔を再度見渡してたら頷くと
「、、ありがとう、、。」
そう言って赤玉を握りしめた。すぅっとパパの手の中に赤玉が消えた。
それを確認すると荻野さんが明るい声で他の箱を指差す。
「よし!じゃあ残りの赤玉は残った俺たち4人で公平にジャンケンな!」
パパは本当に良い人達に囲まれてお仕事してるんだなぁ。と思う。声に出さないけれど、今とてもありがたく嬉しいと思っているはずだ。パパは皆んなが大好きだから。お休みの日しょっちゅう皆で釣りに行く程仲が良いもんね。
ジャンケンの結果、赤玉は
内田くんと、荻野さんに決まった。
青玉は話し合いの結果赤玉を取れなかった山梨さんと、太田くんが2人でそれぞれ4つずつ分かることになった。
すぐに2人は玉を握りしめ、スターテス画面からガチャ券(青)をタップ、結果はやはり緊急救急セットと緊急食料セットが各自2つずつ出た。そして青ガチャ1回につきポイント10。2人は40ポイントずつポイントが加算された。
はじめから持っていたポイントと合わせて太田くんと山梨さんはそれぞれ所持ポイントが50ポイントになる。
「、、じゃあそれぞれ赤玉ガチャやってみようか、、。」
パパ、内田くん、荻野さんがそれぞれスターテス画面からガチャ券(赤)をタップしてみる。
それぞれの画面に宝箱が出現し開く。
R武器 パワーグローブを取得しました。
R装備 スピードシューズを取得しました。
Rスキル 叡智の書を取得しました。
パパの予想通り赤玉はRランクのガチャ券だったようだ!
パパが武器、内田くんが装備、荻野さんがスキルをそれぞれ取得した。そしてそれぞれにポイント100が追加された。
どうやら青玉 ノーマルランク ポイント10
赤玉 Rランク ポイント100
?玉 SRランク ポイント1000
虹玉 SSRランク ポイント10000
ではないかと予想される。
「やった、、これで、、。」
私たちはこの後更に取得した物を調べたり考えたりで朝方までずっと話し合いが続くのであった、、。