はじまり 朝ご飯はバタートーストと一口おにぎり
私 一ノ瀬葵は33歳の主婦である。
これといった資格も学歴も無く、毎日のほほんと家族と過ごしている主婦である。
20代中盤で今の旦那に一目惚れをし、5年越しの猛アタックの上めでたく結婚。
すぐに可愛い娘と息子に恵まれて幸せの4人家族。
もうすぐ5歳になる娘の凛は長い髪を三つ編みにして毎日ご機嫌に幼稚園に通っている。目がくりっとして可愛いが最近口が達者になってきて困ったもんである。
あー言えばこー言う 正にこれだ。毎日何度起こっているか分からない。なのにくっつきたがりこ甘えん坊で可愛いもんだから更に困ったもんである。
私の娘、可愛すぎか。
2歳半になったばかりである息子の蓮は言葉がまだ少し遅れているのか、喋れる言葉はママ、パァパくらいだ。
ぽったりとしたほっぺたにふこふこのお腹。
どこを触ってもまだまだすべすべの赤ちゃんお肌が堪らなく可愛い。こちらも甘えん坊でずーっとひっついてきては顔中にチュウをしてくる。
私の息子可愛いすぎか。
旦那さんの竜は毎日朝早く会社に行き夜遅く帰ってくるサラリーマンだ。黒髪で細身のマッチョで切長の目。
友達が多く、会社でも部下に慕われる中間管理職だ。
嫁の欲目もあるが、普通よりはイケメン寄り、いや、イケメンだと思う。娘とはラブラブでよくひっついて寝ている。私の旦那可愛いすぎか。
兎にも角にも私は家族が1番、何よりも大好きなだけの普通の主婦なのだ。身長153センチ、体重少し多めの、、、普通の主婦。
漫画やアニメ、ドラマも好きだし、
お菓子作りやお料理も好きだ。
掃除は嫌いだけど、、それなりに頑張っている。
世界にはこんな主婦がどこにでもたくさんいると思う。
最近流行りの漫画とかアニメでよく好んで読んでいた、異世界転生や異世界召喚。
いいなぁ、面白そう!と読んだ後妄想する。
もし自分が召喚されたら、、
しかし、どの漫画やアニメでも転生したり召喚されるのは皆んな独身や子供がいない人間であり、子供有りの主婦が、と言う話はどこにもない。
確かに妄想しようにも、頭の中ですぐに
いや、私召喚されたら現実世界に残された子供と旦那どうなんの?旦那、炊飯器の使い方すら知らんぞ?お米1合ってどう測るの?って言うレベルだぞ?
召喚されてる場合じゃねぇ。
転生も結局は不慮の事故で死んで、、って、、
死ねねぇ、子供と旦那おいて死ねねぇ。
そう思うと妄想すら出来ない。
結局今が1番だな、と思い妄想そこそこに携帯の目覚ましアラームをセットし子供達を寝かしつつ自分も横になるというパターンなのだ。
そして今日も携帯のアラームで目覚める。
ピピピ ピピピ、、、
携帯アラームを素早く止めると私はまず旦那の竜を起こす。
「パパ、朝起きて。」
「、、、んあ。」
竜が腕を伸ばしながらだるそうに起き上がり、のそっと一階のリビングに移動する。
私は次に凛を起こす。
「凛!凛!起きて!今日幼稚園だよ!支度しないと!」
「、、、んんん、、、」
なかなか起きない凛の体を揺すり起こす。
「凛ちゃん起きてー!!」
ほっぺをすりころしつつ、ギュウッとハグをしてみる。
そうすると嬉しそうにニヤニヤしながら凛が目覚めこちらを見る。
「ママ、起きたよ、おはよう。」
私はもう1回ギュウっと抱きしめてから凛を離し、一階に先に移動するように言うと
「起きたばっかで歩けないからおんぶー。」
「いやいや、歩けるでしょ。蓮君も連れてかなきゃだからおんぶ無理だよ。ママの腰死んじゃうよ?」
「大丈夫、死なない」
話してる時間が惜しい朝なので、とりあえずスルーして隣で寝ている蓮を起こす。
むにゃむにゃと可愛いほっぺを揺らしながら起きる蓮。
可愛すぎか、まじ私天使を産んだわ。
抱きついて無言で抱っこを求める天使を抱え、背中にいつの間にかひっついてきたでっかいもう1人の天使をおぶり一階のリビングに移動する。
「ほら、さっさと着替えて凛ちゃん。」
「ママ着替えさせてー。」
めんどくせぇと思いつつ、もう着替えさせた方が早いと思い蓮と交互に凛のお着替えを完了させる。朝ご飯を用意するあいだNHKをつけて時間稼ぎをする。
朝はあまりたくさん食べない凛用にトーストを焼く。バターを塗りトースターにぶち込んで3分。
焼き上がりを待つ間に朝からよく食べる蓮用に1口おにぎりを作る。
子供茶碗軽く一杯分のお米に野菜ふりかけを混ぜ、小さいお口用にラップで小さくおにぎりを作る。
「ほい、蓮くん。朝ご飯さきどーぞ。」
おにぎりを載せたお皿を渡すと蓮は無言で受け取り、てちてちと自分用の小さなテーブルセットに運び先に食べ出す。そしてちょうど焼けたトーストにハムをのせて半分に切ってから凛に渡す。
残り半分のトーストを自分の口に突っ込みながら2人のお茶をマグに用意して渡す。
そのまま幼稚園登園セットを用意するのだ。
月曜日だから荷物が多い。
スモッグ袋に給食袋、上靴に座布団カバー、水筒に歯磨きセットこれらを絵本バックに入れ、健康管理帳に体温を記入。凛の少し伸びた長めの髪を2つに三つ編みをする。園服と帽子を被せて支度終わり。
所要時間なんだかんだで20分。
そこから凛が朝ご飯を食べ終わるまで更に15分かかる。
トースター半分に何でそこまで時間かかるん??と毎朝突っ込んでしまう。その度に
「頑張って食べてる!」と逆ギレされる。
ちなみに蓮は既に食べ終わりリビング横の和室、今ではオモチャ部屋でミニカーを引っ張り出して遊んでいる。
「じゃあ先に行ってくる。」
会社の制服に着替えた竜はいつも朝ご飯は食べずに出社する。片道30分ほどなのだが朝ご飯を食べてお腹が痛くなりトイレに困った。と言うことが独身時代にあったらしくそれからずっと朝は会社に着いてからと決めているらしい。竜の会社は大きく会社の中にコンビニがある為そこで毎朝買って食べているのだ。
ちなみに竜は車のライトの設計技師をしている。
基本パソコン作業と会議の毎日だ。
ミニカーで遊んでいた蓮がパパに気付くと小さな手を振ってバイバイする。
それをニカッと見たパパと私は軽くハグをする。
「パパいってらっしゃい!ほら凛ももうすぐ幼稚園バス来ちゃうよ。早くチッチ行ってきな!」
「わかったー!」
パパを見送り、凛をトイレに行かせてやっと登園準備が終わる。
「葵さんー、おはよう!これ頂き物なんだけど、、」
そこへ珍しく敷地内同居の義理母の静江さんがやってきた。竜さんが建てた一軒家の横、庭と駐車場を挟んで静江さんが暮らしている。おっとりした性格で嫁姑問題も何も無く平和な関係だ。
「おはようございます!わぁ、沢山の野菜と果物!ありがとうございます!」
田舎なのでご近所の農家さんから頂くものをお裾分けしてくれるのだ。マジでありがたい。
「今日パートお休みなのよ。蓮君見てるから美容院行ってきたら?行きたかったんでしょう?」
「!!いいんですか!ありがとうございます!もう髪バサバサでカットとトリートメントしたかったんですぅ!」
本当にありがたい。姑に恵まれた!
そう感動していると凛が私の服を引っ張る。
「ママ、もうバス来る?」
「!本当だ!あと5分で来ちゃう!静江さんちょっと蓮君見てて下さい。」
私はそう言うと脱衣場に駆け込み急いで寝巻きから普段着に着替えると、凛を連れ家の前に出る。
幼稚園バスが家の前まで来てくれるのはとてもありがたい。
「ママ、猫じゃらし〜。」
凛は庭に生えている猫じゃらしを抜きふりふりと揺らしている。
「バス来たらそれその辺に置いときなさいよー。」
「えー、でも先生が猫じゃらし見たいって言うかもだし。」
あー言えばこー言うな。この子は。
「、、、、、、??」
今日バス遅くない??もう来ても良い時間何だけどなぁ。どっかの子が遅れてるのかな。
今日晴れで良かった。凛が幼稚園行ったらまず掃除機かけて、洗濯物干してから美容院行って帰りにスーパーで買い出ししつつお昼はお弁当買って楽しちゃおうかな。
そんな事を考えていた。
そこだ。
そこで終わった。
いや、始まったのだ。
ずっと変わらないこの平凡な毎日が続くと思っていた日が。
「?ママ、お空変だよ?」
「ん?何?」
凛に言われて見上げた空に不可解な物。
?????
????
理解するのに時間がかかった。
、、、えーと、これはあれだ。
よくゲームとかで見る。ウィンドウフレーム的な。
そんなものが空に、遥か上空に巨大なスクリーンのように浮かんでいるように見える。
何かのイベント?パチンコ屋とかの?
それにしては大きいな、、
なんて考えていたらスクリーンに文字が浮かんだ。
GAME START
ゲーム スタート、、、って
何のこっちゃ。
いつも読んでるアニメとか漫画である、あれみたい。ゲームの世界入っちゃってぇみたいなやつ。
どうせパチンコ屋のイベント開始のお知らせでしょ。
「ママー、あれ何て読むの?」
「ゲーム スタートって書いてあるよ。何だろうね。」
、、それにしてもバスが遅い。9月でまだ暑いし確認の為幼稚園に電話しようかな。
「凛ちゃん、バス来ないし暑いから1回お家入ろうか。ママ電話してみるわ。」
「そっかぁ、分かった。もしかしてお休みなんじゃない?」
とりあえず凛を連れ玄関に戻る。
リビングの静江さんと蓮は仲良くミニカーで遊んでいる。
「あら?どうしたの?」
「何かバスが来なくて、今確認の電話してみます。」
携帯を取ろうとした時だった。
シュンッ!っと、
目の前にシュンっと光の線が走った。
「!?!」
気付くと自分の目の前に小さな箱があった。
何も無いところに箱が出てきた。降りてきた?
は?屋根あるのに?室内なのに?
こんな箱絶対知らない、絶対無かったし。小さな菓子折りくらいのサイズで何の外装も無い白色の箱だった。
「ママ、これなーに?」
「え?」
振り返ってギョッとした。
同じ箱を凛も持っていたのだ。
そして蓮と静江さんの前にも同じ箱が同じように置かれている。
「あ、葵さん、これ何かしら、、無かったわよね?こんなの。」
「、、、無かったです。」
茫然としてそんな返事しか出来ない。
何も無かったところに箱がある。漫画やアニメなら別にふーん、と思って次のページをすぐにめくるであろう。
でも現実にあると、ただただ不気味だ。怖い。
「マーマ、何これって言ってるでしょー!」
質問に答えなかった事に対して凛が口を尖らせて怒る。
「ごめん凛ちゃん、その箱とりあえず開けないでくれる?」
「えー?!なんでぇ?蓮くんは開けてるよ?」
「!?」
バッと見るとすでに好奇心の固まりの蓮が箱を開けてしまっていた。静江さんもあまりの速さに気付かなかったのか、今気付き慌てて蓮から箱を取ろうとするが、蓮は素早く箱の中にあった玉を取り出してしまった。
「蓮くん、駄目!!」
咄嗟に叫んだが蓮が玉を握り締めたその瞬間玉が消えた。いや、蓮の中に入ったように感じた。
慌てて蓮を抱き抱え様子を見るも特に変化は無く、本人は手にしたはずのおもちゃが消えて不思議そうな顔で手のひらを見ている。
「た、玉は?!どこにいった?何とも無い??蓮くん大丈夫?!」
「葵さん、何かしら?どうゆう事かしら??」
混乱している私と静江さんを横に
凛もさっと箱を開けて玉を握ってしまった。
「凛!」
「ママー、玉消えちゃったー。」
もう何も言えなかった、、。何で触るの、、。そんな得体のしれないもの、、。クラクラする頭を抱え蓮を下ろし凛に駆け寄りギュウと抱きしめる。
「ママ、消えちゃったけど、玉の色綺麗だったよー。」
「、、、色?」
何を呑気に、、。何で怖く無いのよと思いつつ冷静になって思い出す。確かに玉には色がついてたように思えた。咄嗟だったから自信はないけれど蓮の玉は赤、凛の玉は青だったように思う。
「、、何とも無い?どっか痛いとか気持ち悪いとかない?」
「?無いよ、それよりママ幼稚園はー?バス来ないの?」
「そんな場合じゃないよ、とりあえずバスも来ないしお休みして、、、」
「お休みしていいの?じゃあYouTube見ていい?」
「、、、、いいよ。」
よく回らない頭を動かしながらとりあえずテレビを付けてYouTubeを流した。
私の心配や不安をよそに凛と蓮は呑気にYouTubeを見出したのだ。
「、、はぁー、、」
深いため息をつき私は静江さんと顔を見合わせた。
このままじゃ何も分からないし子供達に何かあったんじゃ困る。
「葵さん、この箱どうしましょう、、子供達は、、病院とか行った方が良いかしら。」
オロオロとする静江さんを見ながら私は子供達の事しか考えられなかった。
何もわからない、、、なら
私はおもむろに自分の所に現れた箱を開けた。
中には虹色の玉が入っていた。
「、、虹色、福引とかなら特賞ね。」
そう言って恐る恐る玉を触る。途端に玉が自分の体の中に入っていく感覚が分かった。不思議と異物感や不快感はなく普段飲む水のようにただスルリと身体の中に浸透した感じだった。
子供達に異常が無いと確認したかった。なら自分も確かめるしか思い浮かばなかった。
「葵さん!!」
何の相談もなく箱を開けて玉を触った私を静江さんが心配をして叫んだ。
「、、、大丈夫みたいです。少なくとも今は。」
「何なのぉ、何なのよこれぇ。」
静江さんは怖がり箱を開けずにとりあえずテーブルの上に置くとヘタリと椅子に座り込んだ。
分からない。
全くわからない。
これが何で何が起きたのか。
空に浮かんでいたスクリーン
ゲームスタートの文字
急に現れた1人1つの箱
箱の中の色の違う玉
、、、、もしこれがアニメやゲームみたいな状況であるならば、、、、、
私はボソッと呟いた。
「、、、ステータスオープン」
ヴォンッ!!と目の間にA4ノートサイズのスクリーンか現れた。
「きゃあああっ!!?!」
思わず叫んだ。ありえないことだったから。だって漫画でもアニメでもない。異世界でもないし、召喚だってされてない。ここは私の家で、、、私はタダの主婦で、、なのに何なの、、、。
「!何なの?何が起きたの?葵さん、それ何?!」
静江さんが顔を真っ青にして驚くと私から少し離れた椅子に座り直しこちらをさも恐ろしい物を見るような顔をしている。
対象的に子供達は私に駆け寄ってきた。
「わぁー!!ママ!それ何?何て言ったら出てきたの?」
「っだっ!っだ!」
2人は興奮して私の前に現れたスクリーン画面を覗き込む。私はとりあえず心を落ち着かせスクリーン画面に出た文字を読んだ。
一ノ瀬葵 イチノセアオイ
職業 主婦
女 33歳
レベル 1
HP 10
MP 10
能力 無し ※ガチャ券(虹)1枚使用可能
ポイント 10
、、、、、、、ステータスだよなぁ、、、。
本当何これ。どうなってんの??
「ママ!何て言ったの?何て言ったの?」
「、、ステータスオープンって言ったんだよ。」
「凛も!すてーたすおーぷん!!」
ヴォンッ!と、凛の前にもステータス画面が出てきた。
急いで覗き込んで確認する。
一ノ瀬凛 イチノセリン
女 4歳 ※6歳以下は保護者モード適応
職業 無し
レベル1
HP 3
MP 3
能力無し ※ガチャ券(青)1枚使用可能
ポイント 10
凛にも私と同じようにステータスが表示されている。
「ママー!何て書いてあるの?」
「、、お名前が書いてあるよ。」
「凛って書いてある?」
「書いてある、書いてある。不思議だねぇ。」
「っだ!ママ!っだ!」
ステータスオープンとはまだ言えない蓮のは確認出来ないか、、、、
「葵さんー、、それ何なの?大丈夫なの??」
離れた椅子から眺めていた静江さんがようやく何とも無いと判断して近づいて来た。
「大丈夫みたいです。何ともありません。よく分からないんですが、ステータスオープンと言うとこれが出てくるみたいです。」
静江さんは私のステータス画面と凛のステータス画面を覗き込み、一通り目を通した上で
「こ、こうかしら?ステータスオープン。」
そう唱えると静江さんの前にもステータス画面がサッと浮かんだ。
一ノ瀬静江 イチノセシズエ
職業 パート員
女 51歳
レベル1
HP 8
MP 8
能力無し ※ガチャ券無し
ポイント10
「あら?私だけガチャ券?ていうのが無いのね?」
そう言われてステータス画面を覗き込むと確かにガチャ券無しと表示してされている。
「、、多分箱の中の玉がガチャ券なんですよ、きっと、色が凛とわたし一致してますから。」
「へぇー、何も問題無いみたいな、よく分からないけれど、異常無しなら良かったわ。新しいゲーム?の宣伝とかじゃないかしら??すごいんでしょ?最近のゲームってMRとかなんとかだったかしら?」
「それとは何か違うとは思いますが、、TVニュースでも何もやってませんでしたし、、。」
「まぁ、いいじゃない、すぐ分かるでしょ。私はゲームとか全く興味無いからあの箱の玉?ガチャ券って事は何かもらえるんでしょ?あれ、葵さんにあげるわ。」
そう言って静江さんはテーブルの上にあった箱を私に押し付けてきた。
「でも、これは静江さんの分で、、」
「いーの!いーの!どうせ私ゲームやらないから!ほら開けてさっさともらってちょうだいよ。」
そう言うと箱をさっと開け私の手を握り玉に触らせたのだ。青い玉が私が反応するより早く私の中に入り込んだ。途端に私のステータスの能力のところが変更したのだ。
能力なし ※ガチャ券(虹)使用可能
※ガチャ券(青)使用可能
「はい!終わり終わり!もう訳が分からなくて朝からクタクタだわ、、、一旦家に戻って休んでくるわ。TVで何か分かるかもしれないし。さて、葵さん何時に美容院行く?ラインでまた教えてくれる?その時間にまた来るから!」
静江さんはそう言うとささっと立ちあがり、そそくさ
と玄関から出て行った。
とてもじゃないけど今日美容院に行く気にはなれない。
TVを確認したいけれど子供たちがYouTubeを見てるから今変えたら怒り狂うだろうしな、、、、。
取り残された私はとりあえずステータス画面を消そうとステータス終了、とかステータス閉まれ!とか叫んでみたけれどなかなか消えない画面に焦り、よく見たら画面右上の×印をタップしたら消えることに気付き画面を終うことに成功した。YouTubeに夢中の凛のステータス画面も×を押して終了させた。、、、、凛のステータス画面、私が触っても反応するんだな。
ちょうどまた静江さんが画面の消し方を教えてくれ!と再度玄関にきたので教えてあげるとまたすぐ戻って行った。
凛はまたステータスオープンしたい!とうるさく叫んでいたがよく分からないまま触らせるのが怖かったのでおやつで気をそらそうとした。
「今日は特別ね、まだ午前中だけど、これ食べて良いからちょっと待っててね。」
私はそう言って凛にじゃがりこの封を切り渡した。
凛は大喜びで蓮とじゃがりこをむしゃむしゃと食べ始めた。
その2人を眺めながら私不安でいっぱいだった。
本当にこれは何なのか、、
ゲームの宣伝、、こんな事があり得るのだろうか、、、、
携帯で検索して、、、そうだ、、
パパ、、パパに連絡、、
携帯を慌てて見るも愕然とした。携帯画面は真っ暗なまま何の反応も返ってこなかったからだ、、、。
「、、、え?何で?!」
携帯の充電は満タンのハズだし、ぶつけても壊してもいないハズ、、これじゃあパパに連絡出来ないじゃん、、。
「凛、蓮、ちょっとごめん。ニュース見せて。」
YouTubeを変えようとすると反射的に2人はリモコンに群がり私を阻止しようとしたが、無視してチャンネルを変える。今はそれどころじゃない。
「、、あれ。こっちもだ、、。」
TV画面も真っ暗だ。どこの局も映らない。
しょうがなくまたYouTubeに戻して子供達に謝る。
YouTubeは映るのかよ、、助かるけど。
そう思いながらテーブルに戻り冷蔵庫からほうじ茶を出して一口飲み込む。
、、、これはどうしようか、、、。
携帯は繋がらないし、TVのニュースは映らないし、一体どうなってしまったのか、、。
子供達を連れて実家に移動しようか、、。幸い地元結婚だなら私の実家は車で約10分の近場にある。お父さんとお母さんの所に行けばまだ少し安全な気がする。
私はいつものトートバッグにオムツセットやお着替え、子供用水筒、おやつを入れてまず荷物を車に積み込みに庭に出た。車を開けようとリモコンキーを押すが全く反応しなかった。
「?」
リモコンキーが反応しないので鍵で直接開けようとすると刺した鍵が回らない。
「、、マジで?車も駄目なの?」
脱力した体を引きずるように家の中に戻り頭を抱え込んだ。
これはおかしい。
どう考えても普通じゃない。
漫画やアニメのように何かしらあのステータス画面が絶対関係してるんじゃん。
どうしたら良いのよ。小さな子供2人も抱えて車無しで移動も出来ないとか詰みじゃん。
しかも月曜日の今日に買い出しするつもりだったから冷蔵庫には全然食料も入ってない。あ、朝に静江さんからもらった野菜と果物がある!
2.3日くらいは何とかなるとしてもそれが終わったし前歯どうする?お菓子が無くなってしまえば子供達は怒ってぐずるだろうし、、、。
子供達だけは飢えさせるわけにはいかない。
そうだ、子供達は何としても守らなくては。
私はいろいろ考えたあげく、今確認出来る事を何でもしようと思った。
「ステータスオープン、、」
私の前に先程のステータス画面が現れる。
とりあえず今出来ることは現場を理解しないと、少しでも調べてみよう。これはもう普通の出来事ではないのだ。
私はステータス画面をゆっくりと見てみる。
一ノ瀬葵 イチノセアオイ
職業 主婦
女 33歳
レベル 1
HP 10
MP 10
能力 無し ※ガチャ券(虹)1枚使用可能
ガチャ券(青)1枚使用可能
ポイント 10
私の事だ。名前も年齢も合っている。
うーん、漫画とかアニメだとこれタップしたりすると動くんだよね。、、、じゃあまずはこれか。私は画面の
※ガチャ券(虹)1枚使用可能
ガチャ券(青)1枚使用可能
をタップしてみた。
途端にステータス画面の文字が変わった。
あなたはガチャ券(虹)と(青)
を所持しております。ガチャ券を使用されますか?
はい いいえ
私は はい を選択する。
ガチャ券(虹) 1
ガチャ券(青) 1
私はとりあえず青を選択してタップした。
すると画面に青い宝箱が現れて開いた。
緊急用応急処置セットを獲得致しました。
ポイント5ポイントを獲得致しました。
緊急応急処置セットはアイテムボックスに
自動的に送られます。
私は画面右上の×の横に増えた 戻る という文字をタップした。前のステータス画面に戻って見る。
一ノ瀬葵 イチノセアオイ
職業 主婦
女 33歳
レベル 1
HP 10
MP 10
能力 無し ※ガチャ券(虹)1枚使用可能
ポイント 15
ポイントが10から5に増えてる、、。
アイテムボックスの項目も増えていた。
試しにアイテムボックスをタップすると、先程ガチャで出てきた緊急応急処置セットの名前があった。
緊急応急処置セットをタップしてみる。
緊急応急処置セット
傷薬 消毒液
包帯 絆創膏
はさみ 刺抜き
頭痛薬 鎮痛剤
などなど、お薬箱みたいな内容の物が入っているみたいだ。
試しに 絆創膏をタップしてみる。
緊急応急処置セットの絆創膏を取り出しますか?
はい いいえ
私は はいを選択してタップしてみた。
ポンっと画面から突如絆創膏が出現した。
、、、、、はい、これやっぱり現実じゃありえない事ですね。私は絆創膏の箱を開けて中身を見てみる。どこにでもある普通の絆創膏がそこに入っていた。
「、、、まじかぁ、、、、。」
無意識にほっぺたをつねってみる。痛い。
どうあってもこれは現実らしい。
どうなんの?これ、全然実感も湧かないし、ただただ謎解きなんだけど、リビングの窓から外を見てもいつもと何ら変わりない景色、ただの芝の庭に遠くに山。
モンスターなんて影も形も見えないし、いやいても困るけども。
晴れてていいお天気だし。
私は画面の戻るを押してステータス画面に移ると次はガチャ券(虹)をタップしてみた。
アニメやマンガとかじゃ虹色とかってレアとかスーパーレアとかのお決まりのカラーだよね。
何がなんだか分からないけど何かが起こる前に手に入れられる物は何でも手に入れといた方が良いでしょう。
ガチャ券(虹)を使用しますか?
はい いいえ
はい をタップすると画面から虹色の宝箱が現れて虹色の光を放ち宝箱が開いた。
SSR能力の種を獲得致しました。
ポイント10000を獲得致しました。
、、、SSRってスーパースーパーレアって事?
よくパパが携帯ゲームで出ると喜び狂ってるやつ?
運が良くないと出ないやつじゃん?ラッキーって事!?
アイテムボックスに移りSSR能力の種をタップする。
SSR能力の種を使用しますか?
はい いいえ
私は迷わずはいを選択した。
SSR能力の種は使用する個々の才能、
特技、強い想いに対して反応、変化
致します。取得した本人にのみSSR能力
は使用出来ます。
説明文と共に虹色の種が画面から出てきた。
生唾をごくりと飲み込む。
、、、才能、特技、強い想い、、、。
、、、、、私、普通の主婦ですけど、、、。
漫画とかアニメだと、あれよね?運動神経抜群の主人公が火の能力やら身体強化やら、若い女子高生が癒しの能力やら召喚獣やら出しちゃうやつじゃん?
、、、、私主婦ですけど、、、。
SSR能力で何でも上手く焼けるフライパンなんぞ出てきたら能力の無駄遣いじゃね??
何でも綺麗に出来る掃除機でも困るけど、、、、
何が起こるかわからないんだからなるべく強い能力を手に入れるに越したことないよね、よし、イメージだ。イメージ。強い想いでイメージするのよ、私。
虹色の種をそっと掌で握ると種が光り出した。
私はイメージした。
子供達を守れるような安全安心な能力が欲しいです。
家族を守れるようなとにかく安全なやつをお願いします!
モンスターとかいてもゆっくり安心して眠れるやつを!
とにかく強くて想った。
大事な家族を守れるようにと。虹色の種はスルッと私の中に入り込んだ。
ピロンと画面に文字があらわれた。
SSR能力 絶対安心空間
を手に入れました。
能力についての説明を確認しますか?
はい いいえ
「絶対安心空間!」
思わずつっこんでしまった。どこぞのハウスメーカーの売り中にみたいな能力だな。マザーテレサって読むの?マザーテレサってあの有名なら人でしょ、隣人を愛せよ。みたいな優しいお母さん的代表みたいな、、。
と、とりあえず絶対に安心な空間なんだな。分かりやすいわ。
能力の説明を はい にして確認する。
絶対安心空間
SSR能力の種により生み出された1つしか
存在しない能力。一ノ瀬葵にのみ使用可能。
選択した空間には一ノ瀬葵が選択、許可
した者のみ入る事が出来る。
その空間はどんなレベルのモンスターでも
触れたり入ったり攻撃する事が一切出来ない。
人間以外の者が放った攻撃は無力化する。
空間の大きさ、広さ、中に入れる人数
は一ノ瀬葵のレベルによって変化する。
追加能力獲得で空間を更に改良、変化
する事が出来る。
現在のレベル1 使用人数5
使用広さ3メートル四方
、、、、、、えーと、これ良いよね?
モンスターって書いてあるけど、、、、
とりあえず私が能力を使えば安心安全性って事だよね?
「おおおお!すごいじゃん!SSR!これならただの主婦の私もやっていけるんじゃない?子供達守りながらいけるんじゃない!?」
「もー!ママうるさいよ!!」
ついテンションが上がり叫んでしまった私に凛が怒る。
いつの間にかYouTubeに飽きてしまったのか凛と蓮は仲良くままごと遊びに移動していた。じゃがりこの空箱が床に放置されている。
「ゴミはちゃんとゴミ箱に捨てなきゃダメでしょ?」
「最後の一個食べたのは蓮君だもーん。」
はぁ、とため息をつきじゃがりこの箱をゴミ箱に捨てる。
さて、これからどうしたもんか、、、
幸い超強力?な能力は手に入った事だし、すぐに家族が危険に晒される、と言う事は無いと思いたい。信じたい。マジで。
会社に出社したパパは大丈夫だろうか、、どうにかして連絡は取れないのだろうか。
こうゆう時アニメとか漫画だと、そうゆう機能とかメニューとかあるんだけどな、、、
一ノ瀬葵 イチノセアオイ
職業 主婦
女 33歳
レベル 1
HP 10
MP 10
特殊スキル SSR絶対安心空間レベル1
ポイント 10015
またステータス画面を開き確認する。
まだチェックしてないところは、、これか。
ポイントの部分をタップすると画面が切り替わった。
「おおおお?」
ポイント交換
食料品一覧
日用品一覧
武器一覧
能力一覧
これか!ポイントで手に入れていくやつか!ゲームとかでもよくあるやつね。検索ボタンもあるからこう、Amazonとか楽天みたいだ、、、。
まぁ、Amazonや楽天ではまず武器や能力、ガチャ券なんて売ってないけれども、、。
試しに食料品一覧をタップすると、お米からお菓子、野菜、肉、調味料、カップラーメンなどなど様々な物が画面に並んでいる。そして品物の下には必要ポイント数が記入されていた。
お米 1キロ 3ポイント
カップラーメン1個 1ポイント
、、、、私や凛、静江さんのはじめのポイント初期みんな10だったよね、こんなんすぐに底をつくじゃん、、、。
私はSSRガチャで運良くポイントも10000付与されていて現在は10015とかなりあるように思えるが、このポイントが全ての頼りだとしたら迂闊には使えない、、。
とりあえず今1番必要なのは、、、
私は能力一覧をタップしてみた。
スキル一覧
※記載されているスキルは今現在あなたの
レベルで取得、使用出来る物になります。
またスキル使用により別途ポイントが必要
な場合があります。
マップスキル 10
検索スキル 10
通話スキル 10
探索スキル 10
、、とりあえず今取得出来るスキルはこの4つか。
まずはパパに連絡したい!えっと、通話スキルだ。私は通話スキルを10ポイント払って取得した。
一ノ瀬葵 イチノセアオイ
職業 主婦
女 33歳
レベル 1
HP 10
MP 10
特殊スキル SSR絶対安心空間レベル1
通話 レベル1
ポイント 10005
通話をタップしてみると
通話可能な人がいません。
「、、は??」
通話可能なひとがいません???、、とりあえずまたそこをタップすると、
通話したい人を選んでください。
項目に記載されない場合、検索
が必要です。
「、、えー、、これ検索スキルも買えってこと、、?」
しょうがないので検索スキルもポイント10を払い購入した。
検索ボタンを押すと
検索 名前 生年月日
と画面に出たのでパパの名前生年月日を打ち込んだ。
パッとパパであろう人の名前が検索画面に現れた。
一ノ瀬竜をタップして通話をタップする。
一ノ瀬竜が、通話スキルを所持して
いない為、通話が出来ません。
「、、、、マジで何なん、、、?!」
20ポイントも人に使わせておいて結局連絡出来ないんかい!!思わずイラッとして声を荒げてしまった。