序章
はぁ、、はぁ、、はぁ、、、
目の前にある光景が、現状が、現実が自分の頭の中に入りきれずに暴れている。
目の前がチカチカする。
心臓はバクバクと今にも飛び出しそうな程に脈打ち、鳥肌がこれでもかと言うほど立っている。
私はどこにでもいる、普通の専業主婦だったはずだ。
なんの取り柄もない、ただ料理とお菓子作りが好きなだけの平凡な女。
愛する旦那様と大切な子ども2人に囲まれて普通だけれどもそれが1番幸せな時間という事を日々感じながら生きていた平凡な女。
私 一ノ瀬 葵はただの主婦だ。
なのに、今目の前にあるのは映画やアニメでしか見れないような、、、そう、、、、化け物だ。
「さぁ、はやくルーレットを回すが良い。」
私の家の中、リビングで狭そうに身体を折り太い腕を悠々と組み、黒い肌色をした鬼。
顔は牛で頭には馬鹿でかい角を2本生やした化け物がこちらを見下ろしている。
「うわぁぁぁぁぁあん!!ママ怖いよぉおおおお!!」
4歳の娘が恐ろしさから私に必死にしがみつき泣き叫んでいる。 私はパニックになりそうな自分の心を必死に抑え付け娘が少しでも安心出来るように背中をさすりながら右手で抱きしめる。
「だ、大丈夫、大丈夫よ。凛。ママがいるからね。」
声が震えないように声を絞り出す。
反対の左腕には2歳半になったばかりの息子の蓮が、何も知らずにスヤスヤとお昼寝中だ。起こさないようにこちらの背中も優しくぽんぽんと撫で続ける。
「あ、葵さん、、、これは、、一体、、どうしたら、、、」
敷地内同居をしていた義理母の静江さんが、青ざめた顔で私と化け物を交互に見ている。
「義理母さん、とりあえず落ち着いて、子供達が怖がるから、まずは落ち着いて考えましょう、、。」
何が何だか分からない。
何故こうなったのか、、、、、
話は2時間前に遡る。