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『カッペ』の癖に生意気だ!  作者: ゆっくりver.1.1
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3.異世界生活2日目 (C-part)

いらっしゃいませ!!


ゆっくりしていってね!!

 

 「こちらへどうぞ。お茶はいかがですか」


 僕はヒルズに案内されるがままにテーブルへ着いた。


 僕はうん、とうなずくと彼女は手際よくお茶の準備を始めながら話を続けた。


 「まずは話を整理しやすいように、二つ目の問いについてお答えしましょう」


 一つ、この世界についての概要。二つ、初対面の相手の素性を把握しているヒルズや村人について。三つ、何の目的で僕は転移したか。


 「その前にいくつかお伺いしますね」


 耳障りの良い声でヒルズは僕に尋ねる。


 「ミュアさんはこの世界に来て今日で何日目でしょうか」


 「二日目です」


 「一日目と何か変化した事はありましたか」


 「昨日無かった建物や看板が突然現れたり、視界の左下に自分のコマンドが現れた事……くらいでしょうか」


 なるほど、と彼女は手を止めこちらを振りかえる。


 ハーブティーのような良い香りが漂ってきた。


 「昨日よりも今日の方が情報が多くなっている理由。それはミュアさん自身がこの世界を強く『認識』し始めたからです」


 『認識』……どういう事だろうか?


 「『認識』が弱かった一日目のあなたは転移についてまだ半信半疑、視界に映った情報量も多くはなかったでしょう」


 「しかし今日は転移の目的をもってこちらの世界と接触を図った事によって、ミュアさんの『認識』が強まったと言えます」


 確かにヒルズの指摘は当たっている。


 昨日の僕は転生したと思い違いをしていた。

 

 だから現実世界へ戻った時に夢オチだと落ち込んだ。


 今日の僕は目的を持ってこちらの世界にやってきている。


 昨日と今日に明確な違いがあって、明確な結果として現れていることに僕は少し納得した。

 

 「本題に戻りますね。なぜ村人や私がミュアさんの名前を知っているのか、という答えをお見せしましょう」


 見せるとは一体どういうことだろう。


 「そのためにはミュアさんに協力して頂かなければなりません」


 続けてヒルズは真剣な眼差しで続けた。


 「次の私の言うことを強く『認識』してもらえますか」


 『認識』イコール信仰を集めるとか、信じる者は救われる的なやつだろうか。


 「あなたを全面的に信じろと?」


 僕はヒルズを警戒した。


 ここは教会なのだからスピリチュアルな展開をある程度予想はしていた。


 だが、初対面の相手に「私を信じて」なんて声を掛けられて、はいそうですかと返事ができる奴が世の中どれだけいるだろうか。


 もし余程の能天気なお人好しでずるずる宗教勧誘に引きずり込まれるか詐欺に引っ掛かるカモだろう。


 RPGならば仕様だと割り切れるが、いざ目の当たりにすると狂気じみている事が肌で感じられる。


 「内容次第……ではいけませんか」


 返答を渋っていた僕にヒルズは申し訳なさそうに食い下がる。


 何か悪い事をしている気分に少し急かされ、僕は渋々了承した。


 「今あなたがいる場所は異世界で、ミュアさんは転移によって召喚された。以上の事柄は確固たる事実です」


 昨日のこと、今日のこと。


 自分の持っている情報の全てをまとめ、ヒルズの説明と僕の考察は矛盾しない。


 異世界の仕組みについては信じてもいいだろう。





 そう『認識』した次のまばたきには、僕の見えていた世界は一変した。




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