3.異世界生活2日目 (A-part)
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ゆっくりしていってね!!
―――
朝だ。
頼む、銀髪赤眼の美少年であってくれ。
意識はしっかりしている。
自分は転移している、
自分は転移している、
自分は転移している。
三回念じたら目を開ける。
ぱっ、と目を開けると……
ニ度目の天井だった。
「やった! 転移してる!」
僕は心の中で大きくガッツポーズした。
扉の前の姿見を見ると、昨日の銀髪赤眼が間違いなくそこに立っている。
転移は、見事に成功した。
確か農作業していたおじさんが教会まで案内してくれるはず。
まずはおじさんへ会いに行く事にした。
道中の僕は、一つ気になっていた。
視界から入ってくる情報が昨日とは比べ物にならないほど多いのだ。
長閑な風景が延々と続くことには変わりない。
しかし立ち並ぶ民家が増えているのは気のせいではない。
立て札か標識か分からないが、看板のようなものは同じ場所にはなかったはず。
何よりも一番の違いは、視界にRPGゲームさながらのコマンドがある事だ。
視界の左下にプロフィールが書かれている。
ID:QBK00624
名前:ミュア・ココルン
職業:異世界人(Lv1/10)
これが今見られるプロフィールの全体だ。
どうやら僕の名前はミュア・ココルンらしい。
……何だか可愛い名前じゃないか。
今の職業は異世界人で、一番上の『ID』とは何だろう。
―――
おじさんの元へ到着した。
昨日と変わらず農作業をしていた。
僕が一声かけると作業を止めて案内の支度を始めてくれる。
「おはようございます、『転移者』さん」
「あの、昨日より景色が随分賑やかになった気がするのですが」
現実世界で皆と共有するために、僕はとにかく情報が欲しかった。
違和感の一つや二つ、聞き辛い事でも収集していかなくては。
「それともう一つ。」
「おじさんはどうして昨日僕を送り届ける事ができたのですか?」
僕が気にしている最大の謎だ。
昨日転移したばかりで見ず知らずだった僕の位置を把握していたことになる。
見える景色が鮮明になって、頭も大分冷静になれているようだ。
「それはですね……」
おじさんが難しい顔をして答えに窮している。
訊いてはまずかったことなのか。
勘の良いガキは嫌いだとか言われないだろうか。
「教会が全て教えてくれますよ」
しばらくして、おじさんは優しそうな笑顔で答えた。
答えをはぐらかされた気分で気持ちが良くない。
僕はモヤモヤした気持ちを残したまま教会で向かった。