2.現実世界1日目 (C-part)
ようこそマイページへ!!
ゆっくりしていってね!!
「ふあぁ……おぁよぉ……」
「みんなおはようサン」
ヤシロとセンパイが登校してきた。
眠そうな方がヤシロ、こと八代。特徴ないオタク。
流暢な関西弁がセンパイ、こと槙村先輩だ。
金髪モヒカンの肩パッドが似合いそうな世紀末を想起させる風貌に、刺さったら痛そうな場所にピアスがいくつも飾ってある。
見た目だけなら本当に近寄りたくないお方だ……
先輩なだけあって貫禄の2年留年、今年で3度目のニ年生である。
センパイはプロのe-スポーツ選手をやっている。
海外を転戦し続けた結果、見事に留年したそうな。
今年進級しないと○す、との両親からの説得で今は渋々学校へ出席しているようだ。
僕にとって、センパイは今一番感謝すべき存在だ。
クラスの日陰者と呼ぶべき僕達は確かに浮いてはいるものの、いじめのターゲットにされていない。
これは一重にセンパイによる周囲への牽制があっての事だと僕は思っている。
センパイの海外の土産話は面白いし、頭はキレるし、物理的に少し切れてるし……
ちょっと怖いけど、尊敬している。
そしてセンパイこそ5人にあだ名を付けた張本人である。
とりあえず今は『カッペ』『ガッキー』『オヤカタ』『モニョ子』『ヤシロ』『センパイ』の6人グループで学校生活を共に活動している。
「コイツな、あとちょっとまでワイを追い詰めよったでぇ。生意気やろ」
センパイはヤシロの頭を拳でぐりぐりする。
「それは飯食いながらコマンドミスっただけでしょ。結局0勝87敗だったし」
ヤシロは不満そうにボヤいた。
「相手を誰やと思とんねん。1勝でもしたらプロゲーマー名乗ってもええで」
センパイは高笑いした。弟子の成長を喜んでいるようにも見える。
「ダブる……いや、トリプるくらいならプロゲーマー諦めます!」
ヤシロ、親しき中にも礼儀ありだぞ。
センパイから何か切れた音しなかったか。
「昨日は二人とも徹夜でゲームですか?」
オヤカタが尋ねた。何気ないけど凄くいい質問だぞ。池上先生もびっくりな重要ワードだ。
「せやな」
「本当に一秒も寝てないっすから、授業で寝まぁす」
ヤシロとセンパイ。
この二人には異常は起きていない。
昨夜寝ていた四人に同じ転移、徹夜で起きていた二人に転移なし。
もしかして睡眠が転移と関係があるのか?
「ヤシロ。起きたら夢の内容を教えてくれ」
「実は、僕ら四人は昨日同じ夢を見ている」
僕はヤシロに約束したついでに、事の顛末も話した。
「なんやそれ、ゴッツ面白そうやんけ!」
センパイがノリノリで話に参加してきた。
「ワイも睡魔と戦っとったからなぁ。ほなおやすみぃ」
自分の席に着くなり、1限が始まってもいないのにセンパイは眠りについた。
「じゃあ俺も寝まっす……」
ヤシロも相当眠気を我慢していたのか、机に突っ伏すとすぐに寝息を立て始めた。
1限、体育なんだけどな。