2.現実世界1日目 (B-part)
いらっしゃいませ!!
ゆっくりしていってね!!
―――
「おいっす〜」
「ぁ……おはよござます……」
オヤカタとモニョ子が登校してきた。
おいっすの方がオヤカタ、こと大関貴勝は関取になるために生まれてきたような名前だ。
見た目は一言で表せばインドアヒョロ眼鏡。
名前負け全国チャンピオンも夢じゃないと思う。
おはよござます……の方がモニョ子、こと花咲麗美。
立ち位置として6人グループ紅一点の『オタサーの姫』枠なのだが、前髪で顔がほとんど隠れていて容姿が確認できない。
変な薄ら笑いを突然起こしたり、口癖が「私、腐ってますから……」と僕には理解できない行動が多過ぎで正直苦手だ。
要するに彼女もオヤカタに並ぶ名前負け筆頭株である。
「二人で昨日の夜の事話してたけどさ」
「お互いに同じような夢を見てたみたい……異世界? のような?」
モニョ子の説明はかなり歯切れが悪いが、おおよその見当は付く。
どうやら転移したのは僕とガッキーだけではないようだ。
同じような内容の夢を4人が同時に見るのは不自然極まりない。
「それって異世界転移じゃね?」
ガッキーはドヤ顔で返答した。
彼はやたらと転移を推す。まだよく分かってないのによく自信満々に言えるものだ。
「んー、はっきりよく憶えとらん。自分が変な格好してたのは覚えているが」
「私も……魔法使いだった……」
僕は気になっていた。
「オヤカタとモニョ子の二人は夢の中で出会った?」
全員が同じ夢を見ているのに出会わない方がおかしい、と僕は疑問に思った。
ううん、オヤカタとモニョ子は首を振る。
僕もガッキーも知り合いに出会わなかった。
一つ推測を立てるなら、容姿が全員様変わりしている。
あまりの変貌ぶりにもともと気づかなかったという推測か一番有力か。
「それなら、夢の中で集まれるか試してみるか」
ガッキーが良い提案を出してくれた。
「会ったら合言葉を決めておこう。見つからない場合は自分のあだ名を書き置きしておくのはどうだ」
ナイス、ガッキー。と、僕とオヤカタは親指を立てた。
「ささ……賛成です……フヒヒ」
モニョ子も了承してくれた。