1.異世界生活1日目 (B-part)
いらっしゃいませ!!
ゆっくりしていってね!!
1.異世界生活1日目
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頬を叩いても抓っても、鏡に映るのは銀髪赤眼の少年だ。
僕はこの容姿でこれから生きていけると思うと、心が高鳴ってニヤニヤしてしまう。
今までありがとう。サヨナラ、昨日までの自分。
外に出てしばらく歩いてみた。
時折何人かすれ違う住民らしき人間はいた。
僕の容姿を見て特段反応がない事を考えると異世界にはすぐに馴染めそうな気がした。
もう一つ分かったのは、現在地はとにかく長閑な場所だということ。
第一次産業で生計を立てている日本の農村風景と本当によく似ている。
最近まで住んでいた家にも通ずる面もあって、ほんの僅かにノスタルジーさえ感じた。
……僕はもうホームシックかな?
情報収集しないと先へ進まないと感じた僕は、農作業をしているおじさんに意を決して声をかけてみる事にした。
異世界語は全く分からないので一か八か日本語でぶつかってみた。
「っすすみません、ここは何と言う街ですか?」
少し声が震えてしまった。
「ここはトリバルという小さな村ですよ。」
おじさんは優しい口調で返答してくれた。
日本語が通じた、よかった……
……そう安心した束の間。おじさんが発した次の言葉に、僕は絶句することになる。
「もしかして『転移者』の方ですか? ようこそいらっしゃいました」
今、僕のことを『転移者』と読んだ? 『転生』ではないのか?
てんてんてんてん……うーん、わからん。
歓迎されているようだが、初対面の僕を見るなり一目で異世界人だと気づいた事にショックを受けた。
本日2回目のパニックだ。
まぁ、この世界では異世界から人間がやってくるのが当たり前なのかもしれない。
そう心に言い聞かせ、自分を無理矢理納得させた。
「『転移者』については明日教会を訪ねては如何でしょうか。良いお話が聞けると思います。でも今日は遅いのでお帰りになった方が良いですよ」
おじさんは柔らかな口調で帰路の案内までしてくれた。
気がつけばもう日が暮れはじめていた。