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メイドと王子様は転生してもメイドと王子様でした~王子がメイドを選ばなかった理由~

作者: 来留美

この作品は“メイドと王子様は転生してもメイドと王子様でした”の王子様目線です。

メイド目線が読みたい方はどうぞそちらもお読み下さい。

これは昔、昔。


大昔のあるメイドと王子様のお話。


王子様にはそれはそれは大事にしていたメイドがいました。


しかし、メイドはそんなことは知りません。


なぜならばそれは、王子様の態度にありました。


王子様は人前では完璧な王子様でした。


しかしメイドだけに見せる王子様の態度は暴君だったのです。



「おい、桃。早くこっちに来い」



俺は大切にしているメイドの桃に言った。


桃は仕事を片付けながら待つように俺に言う。


王子様の俺にこんな口をきけるのは桃だけだろう。


桃は俺専属のメイドだからそれでいい。



「今日は肩」



桃が仕事を片付けてしまって俺のところに来たから言った。


俺の一言で桃は俺のして欲しいことが分かっていた。


何年、桃と一緒に過ごしているのだろう。


月日は俺達の絆を強くした。




桃と俺が出逢ったのは寒い冬の夜だった。


桃も俺もまだ小さい子供だった。


俺は退屈な毎日に飽きていた。


車の中から外を見た。


小さな手で大人の大きな靴を寒空の中、懸命に磨いている女の子がいた。


俺はその女の子に目が離せなかった。


女の子には俺を惹き付ける何かがあった。



「車、止めて」



俺は車を止め、女の子の元へ走っていた。


女の子の前に立つと、女の子は顔をあげた。


ピンクの頬が可愛い女の子だった。



「お前の名前は今日から桃だ。俺と来い」



そう言って女の子の前に手を出す。


女の子はボロボロの手で俺の手を取った。


それが、このメイドの桃との出逢いだった。


桃は俺の癒しになった。


俺が桃の頭を撫でると、桃は少し頬をピンクに染めながら嬉しそうに目を細める。


そんな桃が可愛いかった。


そんな俺達は大人になって、結婚をする歳になった。


俺は結婚が何を意味するのかよく分かっていなかった。


だから桃に聞いた。



「結婚してもお前は俺の傍から離れないよな?」


「私はあなた専属のメイドなのでずっと離れませんよ」



桃の言葉を俺は素直に受け取った。


桃がいるなら結婚してもいいと思った。


俺は王子なのだから、結婚は避けて通れない。



そして俺は婚約者ができた。


彼女はとても美しく、誰もが羨む婚約者だった。


しかし、俺には彼女の気持ちを理解することができなかった。


彼女は俺と一緒にいたいと言って俺から離れなかった。


俺は迷惑でしかなかった。


完璧な王子様を演じるのに疲れていた。


桃に癒されたいと思って毎日を過ごしていた。


俺は我慢の限界がきて、とうとう桃の部屋を訪ねていた。


桃は俺に来てはいけないと言っていたが、俺のわがままを桃は聞いてくれた。


桃の頭を撫でる。


桃はいつものように少し頬をピンクに染めながら嬉しそうに目を細める。


癒される。


やっぱり落ち着く。


そして俺はすぐに桃の部屋を出て、自分の部屋へ戻った。




次の日の朝、俺は婚約者に言われた。



「あなたは婚約者の私がいるのに、なぜメイドの部屋へ行ったのですか?」


「彼女に話があったので」



俺はいつもの王子様スタイルで彼女に言う。



「王子がメイドの部屋へ行くなんてあってはいけないことですよ。

誰かがお二人の関係を勘違いする前にメイドには何か処分をしなければいけませんね。」


「彼女には俺から伝えます」


「お願いしますね」



桃の処分?


この女は何を言っているんだ。


桃が何をした?


そう思っても俺の住んでいるこの国は桃が悪いと言う。


そんな時代に俺達はいる。


俺のしたことが桃に代償を与えたのか?


それなら桃には幸せになる道を与えよう。


桃の幸せの為に俺は桃を手放してもかまわない。




ある日、婚約者の彼女は自分の国へと帰った。


俺は桃に俺から離れるなと言い、桃は俺から離れずただ俺の仕事をしている姿を眺めていた。


仕事が落ち着いた時、桃が部屋から出ようとした。



「何処へ行く? 俺の傍から離れるなと言ったはずだ」


「お茶を淹れに行こうと思っていたんです」


「お茶なんていらない。俺には桃がいればいい」


「私はあなたのメイドですよ?

メイドはあなたの為に動きます」


「どういう意味?」


「そのままの意味です。

あなたが傍にいろと言えばいます。

あなたの命令は絶対です」


「何それ? それなら俺の言うことを何でも聞いてくれるんだな」


「はい。それがあなた専属のメイドの仕事です」


「そう。それじゃあそのまま動くな」


「はい」



俺がそう言うと、桃は動かなくなった。


俺は桃に近づき桃の胸元のリボンをとる。


桃の白い肌が(あらわ)になる。


すると俺はすぐに桃の異変に気付いた。


桃は震えていた。


俺は桃の手を握った。


桃の震えは止まらない。


桃は俺が怖いのか?


俺はなぜ桃に触れようとしている?


俺はなぜ桃にこんな悲しい顔をさせて傷ついている?



そっか、俺は桃が好きなんだ。



「ごめん。俺は桃が…………」



好きなんて言えるわけがない。


俺は王子。


桃はメイド。


俺達は身分が違う。


俺は婚約者がいて、


桃は俺を怖がっている。


俺は桃に嫌われたんだ。


それなら桃の幸せの為に俺は桃を手放そう。



「もう、桃を俺専属のメイドにするのやめるよ」



桃は分かりましたと頷き、部屋を出て行った。


その日を最後に桃は俺の前に現れなかった。


それから俺は結婚した。


桃は俺の結婚した日に、メイドを辞め行方不明になった。




俺と妃には可愛い女の子が産まれた。



「桜。今日も元気だな」



俺は自分の子供に名前を桜とつけた。


桜。


この名前は俺がいつまでも君を思っているよと伝える為に、つけた名前。


桃の本当の名前をつけて。


どうか桃に伝わってくれと願い、俺は今日も桃の名前を呼ぶ。


桜。




桃に伝わっているのか分からないまま俺の一生は終わった。







そして俺達のことなんて知る人がいない時代。




俺はハロウィンパーティーに参加させられた。


ハロウィンなんて興味ない。


みんな自分の姿を隠して何が面白い?


そう思っている俺も王子様の仮装をしている。


俺もこいつらと同じか。



「私って前世はメイドだったのかも」



その声に俺は反応して声の主を見る。


彼女はメイドの仮装をし、ピンク色の頬をして俺を見ていた。


時が止まった感覚に陥った。



「「やっと会えた」」



俺達は初めて会ったはずなのに、声を揃えてそう言った。



「君の名前って桃?」



俺がそう言うと彼女は驚いてそうだと言った。


自分でも分からない。


なぜ名前が分かったのか。


ただ、彼女の頬の色が印象に残ったからそうだと思っただけだった。


俺は彼女にもう一つだけ言いたいことがあった。



「俺達って出逢う」


「「運命」」



また彼女と声が揃った。


俺達は二人で笑い合った。





それから何年か経って俺達には可愛い女の子が産まれた。


その子には“桜”と名前をつけた。



「桜、愛してるよ」


「私も愛してるよ」


「何で桃が言うの?」


「何でかな?」



桃はそう言って苦笑いをした。



「桃、愛してるよ」


「私も愛してるよ。私の王子様」



そして桜の目を手で覆って俺達はキスをした。



メイドと王子様は転生してもメイドと王子様でした。


そしてメイドと王子様は転生して幸せになりました。

読んで頂きありがとうございます。

メイドにはメイドの思いがあり、王子様には王子様の思いがあるんです。

二人の幸せがずっと続きますように。

そして皆様の幸せも続きますように願っております。

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