表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/49

029 奥多摩 鷹ノ巣山の洞窟

 休日が終わり、新たな敵に挑戦する日がやってきた。


 次の敵はコカトリスクイーン。奥多摩の鷹ノ巣山に棲息する怪鳥だ。


「準備はいいな? 行くぞ」


「おー!」「おーなのです!」


 龍斗たち三人は、鷹ノ巣山の麓にある洞窟へ足を踏み入れた。


 洞窟内は湿度が高くてじめじめしている。壁のいたるところに水滴が浮かんでおり、岩肌の地面は濡れていて滑りやすい。これでひんやりしていれば最高なのだが、残念なことに洞窟の中は蒸し風呂の如き暑さだった。


「暑いぃ」


 仁美はシャツの胸元を摘まみ、パタパタして顔に風を送る。しかし思うようにはいかない。服が汗でぐっしょりして肌に張り付いているからだ。


「暑い暑いと言えば余計に暑くなる」


 龍斗はむっとした様子で言った。


「でも寒い寒いと言っても涼しくなんないじゃん」


「たしかに」


 仁美の勝ちだ。龍斗は話題を変えた。


「ポポロ、入学試験はどうだった?」


「一次試験、無事に突破なのです!」


 ポポロは嬉しそうな笑みを浮かべる。龍斗や仁美と違って涼しげな様子だ。顔も涼しげなら着ている服もまた涼しげで、水色のワンピースは濡れているどころか湿気っている様子すらなかった。それもそのはず、エルフは魔法で体感温度をコントロールできるのだ。


 エルフの魔法は非常に便利だ。今、龍斗たちが松明(たいまつ)なしで洞窟を歩けているのも魔法によるものだ。本来なら光源がないはずの洞窟を、ポポロが生み出した光の玉によって照らすことで明るくしていた。


「龍斗はどうよ? 新しい家」


「いい感じだよ。って、昨日も一緒に家で過ごしたんだから分かるだろ」


「あはは、まーね」


 龍斗が家を買ったのは一昨日のこと。


 しかし仁美は、その次の日も龍斗と二人で過ごしていた。昨日の名目は「一人じゃ寂しいだろうと思って」だ。もちろんそれは建前で、本音は龍斗と一緒に過ごしたかったわけだが、残念ながら彼はそのことに気づかず、額面通りに言葉を受け取っていた。つまり、仁美が期待するような“何か”は起きなかったのだ。


「おっと」


 話をしていると魔物が現れた。コボルトだ。数は1体。


「私に任せて」


 すかさず仁美が動く。レイピアを抜き、自身に強化スキルを施し、前方のコボルトに突っ込んだ。


「コボォーン」


「楽勝!」


 サクッと倒し、握りこぶしを作る仁美。


「コボルトが単独……? おかしいな」


 龍斗は敵の数に違和感を抱いていた。


 コボルトは基本的に群れで行動する魔物だ。もちろん単独で行動することもあるけれど、それはとても珍しいことである。


「もしかするとどこかに伏せているんじゃないか」


 そう思って見回したところ、ビンゴだった。


「コヴォオオオオオオオ!」


 背後に3体のコボルトが伏せていたのだ。


「しまった、伏兵がいたのね!」


 仁美が慌てて対処しようとするが間に合わない。


「任せてなのです!」


 ポポロが炎の矢を放って迎撃する。これで2体が死んだ。


 しかし、1体は炎の矢を避け、ポポロの懐に潜り込む。


「ポポロ!」


 仁美の声が洞窟内に響く。


「はぅぅ」


 ポポロはギュッと目を閉じる。やられることを覚悟した。


 だが、そうはならなかった。


「俺だって戦えるんだぜ」


 龍斗だ。


 彼は懐に忍ばせていた短剣でコボルトを突き刺して殺した。


「なにその剣!?」


「龍斗さんが武器を使ったのです!?」


 仁美とポポロが驚く。予想外のことだった。


「実は前に大阪へ行った時に買ってな」


 浪速バスターズの千尋に勧められて護身用に買った短剣だ。


「あー、そういえばそんなこと言っていたね」


「まさか本当に使う日が来るとは思わなかったよ」


 これで雑魚の処理が終わる。


「この洞窟には魔物だけが知る隠し通路が多数ある。雑魚はそういうところに潜んでいるわけだ。警戒心を強めていこう」


「了解!」「はいなのです!」


 龍斗たちは気を引き締めて最奥部を目指した。

お読みくださりありがとうございます。

評価・ブックマーク等で応援していただけると励みになります。

楽しんで頂けた方は是非……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ