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024 デートプラン

 仁美からデートプランを考えるように言われた龍斗は、その夜、自室に篭もって検索に検索を重ねた。最初は定番の「デート オススメ」や「初デート どうすればいい」などといったワードで調べていた。


 だが、しばらくして雲行きが怪しくなる。たまたま見つけた広告に目が行き、そこから次第に調べる内容が()れてきて、そして、翌日――。


「今日は不動産屋巡りをしようと思う!」


 龍斗の出した結論がそれだった。仁美の車に乗り込み、助手席について間もなくの発言だ。


「なんだそりゃあ!」


 当然、仁美は両手を頬に当てて絶叫する。恋人というより歳の離れた姉弟といった感じだが、それでもデートということでオシャレをしてきたというのに、肝心の男が考えたデートプランが“不動産屋巡り”だ。


「美術館とか動物園とか、そういうのならまだ分かる。分かるよ。でもさ、不動産屋巡りってなに!?」


「いやぁ、家が欲しくなってさぁ」


 龍斗の最終目標は超速レベリング理論によって自分を高レベルにすること――ではない。真に目指しているのは理論を普及させることだ。レベルを上げているのは、自分の理論が正しいと身をもって証明するために他ならない。


 だが昨日、検索していてふと思った。仮に自分のレベルが一定の高さまで上がったとしても、理論を実践した被検体が自分だけなのはいかがなものか、と。汎用性が高いことを証明するには、他にも理論の実践をする者が必要になるだろう。


 そこから考えを飛躍させていった結果、家の必要性に辿り着いた。


「つまり不動産屋巡りというのは、言葉通りにそこらの不動産を巡るってことでいいの? 比喩表現とか私の知らない別の不動産屋が存在するとかじゃなく」


「おう! その通りだ!」


「ばっかじゃないの」


 仁美はエンジンを切り、龍斗を睨んだ。


「分かる? これはデートよ、デート。不動産屋巡りなんてデートプランを喜ぶ女の子がいると思う? いないよね? レベル上げにしか興味がなくて一般常識が欠如してしまった?」


 捲し立てる仁美。


「そうだけどさぁ……」


 龍斗はポリポリと頭を掻いた。


「どうしても家が欲しいんだ」


「なんで?」


「実は――」


 龍斗は自身の計画を詳しく説明した。


 彼が話し終えた時、仁美は絶句していた。


「前々からぶっとんでいるとは思ったけど……筋金入りの狂人ね」


「でも悪くない考えだと思うけど」


「まぁいいわ。初デートはまた次の機会ってことにして、今日は不動産屋を回ろっか。その野望を叶える為にはたしかに家が必要だし、可能な限り早い段階で家を買うべきだとは思う」


「分かってくれるか! 流石だな、仁美!」


「流石だな、じゃないわよ。この埋め合わせは今度しっかりしてもらうからね」


 言いながら、なんだか恋人みたいなやり取りだな、と仁美は思った。そんなことを考えると小っ恥ずかしくなってきて、頬がやや赤くなる。


「で、予算はいくらなの? 東京でまともな家を買うなら数億はいるとおもうけど」


「それが4000万くらいしかないんだよね」


「全然足りないじゃん!」


「そこをどうにかならないかな? 仁美って不動産に詳しいんだろ?」


 仁美は冒険者になる前、不動産関係の会社で勤めていた。


「入ってすぐに辞めたから詳しくはないけど……。でもまぁ、その予算で一丁前の家を買うとなったらどうしても中古になるよ。あと、いわゆる〈冒険者物件〉じゃないと駄目だね」


「冒険者物件? なんだそれ」


「一晩掛けて不動産のことを調べたのに冒険者物件も知らないの!?」


 仁美は呆れたようにため息をつくと、真顔で言った。


「早い話が魔物退治よ、とんでもなく強烈な魔物のね」

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