ススキさん
暑い一日が終わった。
照りつける太陽から解放されて、
ほっとする時間。
暮れていく空にススキさんが揺れる。
今、帰りかい?どうするんだい?
なにげに話しかけられた気がした。
ススキさんになのか、誰かになのか、
よくわからないけれど。
とりあえず伝えてみた。
ぼくはね、これから夏を切り取るために、
出かけることになってるんだ。
時間はあまりないから、急がないと。
のんびりもしてられない。
きっと、疲れた表情を、
色んな人に見せてると思う。
それは、いけないことだと思う。
申し訳ない……そればかり思う。
夏を切り取って、風をつかまえて、
この窮屈な日々を全部終われたら、
ススキさんのように、風にそよげるかな。
そうしたら、ぼくだって、
秋や冬や歌や夢をちゃんと身につけて、
目の前に来る、ささくれ立った人を
癒やしてあげられるのかな。
暑い一日が終わった。
昨日みたいに終わった。
今日も、また、ひとつ、
今日も、また、ひとつ終わった。