口説かれて落とされて愛されて
視点がころころ変わります。
「なぁ、朝比奈。俺の嫁に来い」
「……………………ふぇ?」
はい、皆さんごきげんよう。放課後、図書室から出たときにプロポーズ紛いなことをされました。朝比奈蕾と申します。ついでに申しますと壁ドンをされながらのプロポーズでございます。
……はい、何が起こっているのでしょうかね。私には理解できません。といいますか、理解したくありません。何故、学校で有名なイケメンさん(名家の御曹司)に私、地味眼鏡女子がプロポーズされないといけないのでしょうか!? 誰か教えてくださいませんか!!
「おい、朝比奈。聞いてるか」
「は、はいっ! 聞いております!」
「なら、返事をしてくれないか」
壁ドンの次は顎クイをされました。2つとも女子が好きな男子にやってほしいことベスト10に入るものでございますね。ですけれども、今の私には恐怖でしかありません。してくれないか、と質問されておりますが全然、全く質問には聞こえません。クエスチョンマークが最後にございません!
「えっと、あの……か、片桐くん? 少し質問してもよろしいですか?」
「ん? なんだ、朝比奈?」
そんな甘い顔をしないでください。直視できません。
「あ、あのですね。何故、私なんでしょうか……?」
「何故とは?」
「ええっと、何故、私のような地味眼鏡の一般人にプロポーズされているのでしょうか?」
あら? 片桐君が固まってしまいました。何故でしょうか? 私、可笑しな事は言ってないと思うのですが……。
「地味眼鏡の一般人……。それ、本心から言ってるのか」
「え? はい、そうですよ」
それ以外の何者でもないと思うのですが……。
片桐君、お次は頭を抱えてしまわれました。頭痛でしょうか?
「あの、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。大丈夫……じゃない。眼鏡なのは事実だから置いとくが、お前は地味と一般を辞書で引いてきた方がいい」
「へっ?」
「まぁ、そんなことは後ででもいい。もう一度言う。好きだ朝比奈、俺の嫁に来い」
~~~~っ! やはり、意味がわかりません!! ここは逃げる一択です!
「もも、も、申し訳ございません!!」
私は今までにないくらい足を動かして走りました。
私は知らなかった。プロポーズを断った後に片桐君の呟いた言葉を。そして片桐君が私の人生に大きく関わってくることを……。
ーーーー絶対、逃がさない。
◇◈◇
「はぁっ⁉ 片桐一颯にプロポーズされたぁ⁉ それホントなのっ⁉」
「え、えぇ。そんな嘘つきませんよ」
片桐君にプロポーズされ、逃げたあと従姉である高梨柚希ちゃんの家に寄り相談してみましたら、先ほどの反応を貰いました。柚希ちゃんは私とは似ても似つかない美人さんでお嬢様です。
「柚希ちゃんも思いますよね。何故、片桐君は私のような地味眼鏡の一般人にプロポーズされたのかと。可愛い女の子は沢山いらっしゃるのに……」
「ちょ、違うわよ‼ 私が言いたいのは! 片桐は普通だけど普通じゃないの!」
「……普通だけど普通じゃない?」
「だから、蕾のことを好きになるのは普通だけど、付き合う通り越して結婚というのが普通じゃないのっ! それに私達高1なんだからまだ結婚できないでしょ‼ 蕾も蕾よ‼ 何で先にそこを疑問に思わないの!」
怒られてしまいました。でも、何でと言われましても……。疑問に思わなかったのですもの。しょうがないじゃないですか。それより、私を好きになるのは普通とはどう言うことなのでしょう? ……はっ! 片桐君の感性が可笑しいということですね! 納得いたしました。
「納得するな! ある意味片桐が可哀想よ!」
何故、私の考えていることがわかったのですか⁉ まさかのエスパーというやつですか⁉
「だから、違う! 顔に出てるのよ‼ 蕾はそのぶっ飛んだ考え方するのやめなさい! そ・れ・に! そろそろ自分の価値も理解しなさい!」
「自分の価値……?」
「そう、自分の価値! 蕾は地味でも一般人でもないの! 考えてみなさいよ。私の従妹の時点で一般人な訳ないでしょ!」
……確かにそうかも知れませんが柚希ちゃんみたいにパーティーには殆ど出てませんよ?
「あと! ノーベル賞を取った科学者の父親と世界的有名なピアニストの母親を持つ子供が一般人な分けないでしょ! あんたが一般人なら誰が一般人じゃないのよ」
「…………確かにそうかもしれません。ですが! それだけでは片桐君が私にプロポーズする理由にはなりません! …………もしかしてそれが理由だったりするのですか!? まさかの私の親の名前だけが欲しかったということですか!? ………あ、誰もこんな親だけが凄い地味眼鏡を嫁にしたいと思いませんよね」
納得しました__と最後に言おうとしましたら、柚希ちゃんから表情が消えました。何と言いますか、すんっという感じでした。ええっと、確かスナチベ顔? チベスナ顔でしたっけ? まぁ、そんな顔になってしまわれました。ちょっと怖いです。
「………………蕾」
「ふぁっい!」
柚希ちゃんの声色が怖いです。怖すぎて返事をする声が上擦ってしまいました。
「この際だから言わせてもらうけど、蕾は可愛いの!」
「私は可愛くな__」
「可愛いから! ああ、もう! 話し進まないから可愛いっていうのを前提にして。わかった⁉」
「は、はい」
柚希ちゃん、先ほどより怖いです。そんな顔をしないでください。泣いてしまいそうです。うぅっ。
「蕾は可愛いの。蕾は自分のことを地味眼鏡って言ってるけどそうじゃないの! まず! あんな無茶苦茶美人な母親と父親がいるのにその子供が美人じゃない訳がないでしょう。それに、親だけ凄いとか言ってるけど蕾はヴァイオリンとピアノを弾けるでしょ‼ おまけに前回のヴァイオリンコンクールは優勝、ピアノコンクールは特別賞とったのに何が親だけ凄いだ! 蕾も凄いよ‼ これも言っとくけど蕾を地味眼鏡の一般人何て思ってる人、学校にはあんた以外誰一人いないからね。蕾は自分の容姿を気にしてるみたいだけど、基準が可笑しいから! 若葉様と淳一様を基準にしちゃダメだから! 自分の父親、母親と比べてしまうのは分かるけど、蕾と若葉様や淳一様は綺麗のジャンルが違うから。蕾はすごく綺麗なんだよ。学校でも人気なんだからね」
「えっ、ですが学校で他の子に話し掛けられる事、挨拶ぐらいしかないですよ? 逃げられたりしますし……」
「蕾の見た目と性格のせいで学校の高嶺の花のような存在になってるのよ。蕾は地味眼鏡、地味眼鏡って何回も言ってるけど、凄く眼鏡似合ってるんだからね。雰囲気ほわほわしてるけど、容姿だけなら知的美人だから。ギャップ萌えがどうのこうの言われてるから。お願い自覚して。虫が着かないようにするの大変なのよ。もう虫が付いてるみたいだけど」
ギャップ萌え?? むし? 無視? 虫? 何故虫何ですか? 私は虫、全く問題ありませんよ。柚希ちゃんは何でそんな事を言うのでしょうか? といいますか、今虫付いてるのですか? ……付いてませんよ? まぁ、取り敢えず。
「申し訳ございません?」
謝ってみたら柚希ちゃんに頬っぺたをつねられました。
「蕾……。理解してない人に謝れても困るんだけど」
「いはいふぇす、いふぁいふぇす。もぉふぃあふぇふぉばぁいましぇん」
「痛いね痛いねー。でも私は胃が痛いわ」
柚希ちゃんが手を離してくれました。ちょっとまだジンジンしてます。
「柚希ちゃん、胃が痛いのですか? 大丈夫ですか?」
「誰のせいだと思ってるのよ!」
「……………………もしかして、私ですか……?」
「もしかしてじゃなくて、どう考えても蕾のせいよ! って、そうじゃなくて片桐の事どうするのよ」
「あ、話が戻りました。本当にどうしましょう」
片桐くんの事、詳しく知らないんですよね。
そう言いましたら、柚希ちゃんが教えてくださいました。
「片桐一颯は片桐グループの御曹司。徳沢学院高等部1年A組。眉目秀麗、博学多才、質実剛健、品行方正、冷静沈着などの四字熟語が当てはまると言われている男で、毎回テストは学年一位。まぁ、完璧という言葉が当てはまるわね。それに、一応蕾もパーティーで何回か話したことあるはずよ? 忘れてるのかもしれないけど。パーティーで会って、蕾のこと好きになったんじゃない? それにしてもプロポーズはないと思うけど」
謎が深まりました。そんな完璧な人が私にプロポーズしたのでしょう? やはり、親のネームバリューでしょうか??
それに私、片桐君とパーティーで話したことありましたっけ? 私の中でパーティー=ケーキという図式が出来てしまってるので憶えてません。どうしましょう?
「……決めました。私、明日学校で片桐君にちゃんとお断りをしようと思います!」
「蕾がそう決めたならそうしなさい。上手く断るのよ」
「どういうことですか??」
「うん、まぁ頑張って」
「え、あ、はい。何を頑張るのか分かりませんが頑張ります!」
「何かあったら私を頼りなさいよ」
「……分かりました?」
柚希ちゃんは何故そんなに心配そうなのでしょう?
私が柚希ちゃんの言った言葉の意味を身にしみて理解する事になるのはもう少し後のことです。
◇◈◇
俺、片桐一颯は浮かれていた。何故なら好きな女子に告白出来たからだ。まぁ、逃げられたが。
幼馴染みである更科礼司も俺の機嫌の良さに気がついたらしく問いかけてきた。
「一颯、どうした? 今日はやけに機嫌がいいな」
「ああ、朝比奈にやっと告白出来たからな」
そう言ったら、礼司の目が見開いた。と思ったら失礼極まりない言葉が飛んできた。
「やっと、やっとか。片想い歴8年は長かったな。8歳の頃にパーティーで会い、恋に落ちるがどこの誰か分からず5年。この時点で初恋を拗らせてたな。3年前にまたパーティーで出会い、高梨コーポレーションのご令嬢の従妹の朝比奈蕾と判明。中学は別のところに行く予定だったから泣く泣く諦め、一颯の通っていたのは中高一貫校だったのに、朝比奈ちゃんと同じ学校に行きたいが為に徳沢学院を受験。それに俺も巻き込まれ……。ここまで初恋を拗らせるのはどうかと思う。一歩間違えばストーカーだ。だというのに入学しても会話も告白もせず、はや半年。外では完璧な片桐グループの御曹司なのにこれは酷いよな。俺はそろそろ一颯を心の中でヘタレ認定するところだったぞ」
……確かに礼司が言っていることは事実何だが失礼すぎる。でも言い返せない。
「で、朝比奈ちゃんの返事は? 今の感じだと成功した?」
「いや、無茶苦茶動揺しながら『もも、も、申し訳ございません!!』と言って逃げて行ったな」
「はっ⁉」
「あと、自分の事を地味眼鏡の一般人と思ってるらしい。本心かと聞いたが、何でそんなこと聞くのか?と言わんばかりの顔をしてだ返事をしてたな。何故そう言う考えになるのか俺には分からん」
礼司は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして固まった。
そうなる気持ちがよくわかる。俺もさっきは同じようになった。
「……何かすっごく突っ込みたいことが沢山あるけど、まず無茶苦茶動揺した感じで断って逃げていくってお前、どんな告白を朝比奈ちゃんにしたんだよ」
「壁ドンからの顎クイで『好きだ、朝比奈、俺の嫁に来い』だが?」
何か問題があるか? という感じで言ったら礼司が叫び出した。
「突っ込むところが増えた⁉ 何でプロポーズしてんだよ! さっき告白したって言ったよな⁉ プロポーズは告白ではない! 何故、お付き合いすっ飛ばして結婚になる⁉ せめて『結婚を前提に付き合ってください』だろ‼ それに加えて壁ドンと顎クイ。そりゃ、朝比奈ちゃんも逃げるわ。というか普通にキャパオーバーになるから! お前が朝比奈ちゃんと結婚したいぐらい好きなことは知ってるけどなそれはない。告白もまだなのに両親に結婚してもいいか聞いてるのも知っているがそれはない。断言できる」
「いや、な? ほとんどの場合、俺と付き合う=結婚になるのは知ってるだろ? それだったらもう、プロポーズでもいいかと思ったんだよ。あれだよ、あれ。開きなおったんだよ」
「……俺は今日、1つ学習した。色々拗らせてる奴が開きなおるとたちが悪くなるということをな。会話することすら出来なかったのに……」
はぁ……と深いため息をつきながら俺を睨んでくる礼司から目を反らした。
礼司に言われたことはもっともなのはわかってはいるが従う気はない。
「で、一颯は朝比奈ちゃんにプロポーズを断れ、あげく逃げられたのに何でそんなに機嫌がいいんだ?」
「それはあれだよ」
「あれって何だよ」
「俺は追われるより追う方が好きなんだよ。ほら、開きなおったって言っただろ? だからこれから絶対逃がさないように外堀を埋めていきながら、朝比奈を口説こうと思ってるんだ」
ああ、明日から楽しみだ__と思いながらにっこりと礼司に笑いかければ、礼司は顔を引きつらせた。
「……………嫌われないように、程々にしとけよ……」
「ああ、分かってるよ」
さぁ、明日からどうしようか。自然に口角があがるのを感じた。
◇◈◇
「鈴木君、河本さん。おはようございます」
「えっ、あ、お、おはよう」
「あ、朝比奈さん。おは、よう」
いつもの事ですが、どこかに行かれてしまいました。挨拶は返してくれますが、その後は皆さん何処かに行ってしまわれるのは何故でしょう? やはり、嫌われてるのでしょうか? 柚希ちゃんは私の事を学校で人気があると言いましたが、何かの間違いでしょう。
「おはよう、朝比奈」
「おはようご……ざいます」
挨拶をされたと思い振り返りましたら、片桐君でした。思わず挨拶が途切れてしまいました。でも、丁度よかったです。
「あの、片桐君」
「ん? どうかしたか?」
「昨日の事なんですが、逃げてしまって申し訳ありませんでした。それと、ちゃんと返事をしていなかったのでしようと思いまして……。ええっと、あの、昨日の話はお断りさせていただきます‼」
勢いよく頭を下げましたら、何とも言えない冷たいお声が頭上から聞こえてきました。
「へ~、ふーん。……頭、上げて? 理由聞かせてもらえるかな?」
頭を上げましたら、片桐君の目が私の顔をとらえました。何だか、怖いです。
「…………ええっと、理由は……その、私が片桐君に相応しくないからです」
「相応しくないねぇ。それって昨日言ってた、地味眼鏡の一般人ってこと?」
片桐君の表情がとても怖いです。笑っているのに目が全く笑ってません。
でも、ちゃんとお断りすると決めたのですから頑張りませんと。
「はい、そうです……。それに私は片桐君の事を殆んど何も知りません。なので好きでも嫌いでもないのです……!」
「相応しいとか相応しくないとかどうでもいいと思うんだよね。あと、俺は朝比奈のこと地味眼鏡の一般人なんて微塵も思ってないし」
地味眼鏡の一般人なんて微塵も思ってない………ということはやはり……。
「やはり、私の両親の名前が欲しいのですか……⁉ だから私に昨日、告白したのですか⁉ そうですよね。両親の名前があれば世界の著名人とも繋がれますからね……。そうすれば片桐君の御家の会社の方もいろい__」
「ちょ、ちょっと待て! 何でそういう事になるんだ⁉ 朝比奈って少し、いや結構考え方ぶっ飛んでるよな。今は良いとして、いや、決してよくないがその事を置いとくとして、俺は朝比奈のことが本当に好きで、親の名前なんてどうでもいいんだが? 欲しいのは親の名前じゃなくてお前な」
「ふぇっ⁉」
凄く恥ずかしい事言われました。自分の顔が赤くなるのを感じました。
……でも、本当に私のことが好きなんでしょうか?
「朝比奈、お前絶対信じてないだろ。まぁ、そう思うのは勝手だが俺は容赦しないからな。俺の事を朝比奈は好きでも嫌いでもないって言っただろ。ということはチャンスはあるってことだ。それに、断られたが俺はお前を諦める気は更々ない」
覚悟しとけよ__最後に私の耳元で囁き、片桐君は居なくなってしまいました。
これから私は大丈夫何でしょうか…………?
◇◈◇
ああ、さっきの朝比奈の反応は可愛かった。礼司は嫌われないよう、程々にしとけよって言ってはいたけど出来るだろうか? 少し心配になってきた。
「一颯! さっき、顔を真っ赤にして生まれたての小鹿みたいに足を震えてる朝比奈ちゃんを見たんだけど、お前もう何かしたのか?」
「あぁ、ちょっとな」
「ちょっとなってどう考えても、ちょっとであそこまで反応しないだろ。昨日、程々にしとけと言ったのに……」
「分かってはいるが、朝比奈の反応が可愛くて程々に出来るか今、心配になっているところだよ」
そう言うと礼司は大きなため息を吐いて、睨んできた。
「お前……犯罪者にだけはなるなよ」
「それぐらい分かってるよ。礼司って結構心配性だよな」
「俺が特別に心配性って訳じゃなくて、一颯が犯罪者になりそうだから言ってんだよ」
犯罪者になりそうって失礼過ぎるだろ。まぁ、つい最近までストーカー1歩手前だったが。
「はぁ……、お前これからどんなことを朝比奈ちゃんにする予定なんだよ」
頭を抱えながらそう言う礼司に少し、申し訳なく思う。が、俺は止めるつもりは微塵もないので素直に話させてもらう。
「朝比奈は重度の鈍感、あと自分に好意を向けられてるとは少しも思ってないことが昨日分かったから、まず、外堀を埋めていこうと思う。昨日も話したがこれは決定だ。あと、朝比奈と親しい協力者が欲しい。親しいといっても従姉の高梨柚希しか居ないと思うが」
「何で協力者が必要なんだ?」
「どれだけ口説いても、自分が好意を持たれてると思わないとオチてはくれないだろ? 俺も努力はするが、俺だけではどうにもならないと思うんだ。そこで協力者だ」
ここまでの説明を聞いて、礼司は協力者が必要な訳が分かったようで、口を開いた。
「協力者、高梨柚希に朝比奈ちゃんを自信持たせるようにしてもらうってことか?」
「ああ、そう言うことだ。で、頼みがある。礼司は高梨柚希と同じクラスだろ? 協力を頼んできてくれないか?」
「……まぁ、別にいいけど、協力してくれるか分かんないだろ。どうするんだ?」
「大丈夫だよ。協力はしてくれるはずだ。彼女、高梨柚希は朝比奈の鈍感なところなどその他もろもろ、手を焼いてるみたいだからね。この話も悪くはないんじゃないかな」
「そんな話、聞いたことないぞ。はぁ、お前はいつもそんな話、何処から仕入れてくるんだよ」
「さぁな。企業秘密だよ」
そう言うと、礼司は今日何度目かのため息を吐き、了承の返事をして自分の教室へと歩いて行った。
俺も自分の教室へと行こうと思ったが、外堀を埋めるために、朝比奈がいると思われる図書室に足を向けた。
◇◈◇
ーー高梨ちゃん、一颯の協力者になってください。
急に言われた時は驚いたが、話を聞くかぎり結構いい話だったから協力者を引き受けた。でも、、、
「片桐は馬鹿なの⁉ アホなの⁉ 本当にうちの子をどうしたいの⁉ このままじゃ蕾に嫌われるわよ! 今日なんか私のところに泣きついてきて、今、泣きつかれて寝ちゃったわよ⁉」
私は通話相手である更科に思いっきり怒鳴った。
『そんな事俺に言われても困るわ! 俺は一颯に何回も言ってるんだぞ。程々にしとけよって。なのにあいつ止める気がないからな。朝比奈ちゃんの反応見て楽しんでるわ。一颯はドSに加えて初恋拗らせてるから何やらかすかこっちも怖えーんだぞ。まぁ、外堀を埋めるのは成功してるから朝比奈ちゃんは一颯から逃げられないな』
声色で更科が物凄く申し訳なさそうな顔をしてるのが想像できた。
「ふぅ……。それで、外堀を埋めるってそんな話これっぽっちも私聞いてないんだけどどういう事かしら?」
『ひぃっ! 話してなかった俺も悪いけどそんなに声のトーンを下げないでくれ。はぁ…………。一颯は最初から外堀を埋めてから朝比奈ちゃんを口説くって言ってたんだよ。口説けてるのかは置いといて、外堀を埋めることは着実に出来てる。人から聞いた話だけど、一颯のファンクラブと朝比奈ちゃんのファンクラブが期間限定で合併して、2人がくっつくまで見守るらしい。もうここまで来ると、朝比奈ちゃんには絶対一颯の事を好きになってもらわないと困る。俺もだけど朝比奈ちゃん本人もその方が幸せだと思う』
私は更科の話を聞きながら、泣きつかれて寝てしまった蕾の頭を撫でた。
今までの話的には蕾が片桐の事を好きになるのが1番の解決策なのは理解できるが、等の本人がこんな状態じゃ……。
『と言うことで高梨ちゃん、お願いがあります。朝比奈ちゃんに一颯の事どう思ってるのかを聞いてください。ついでに、それとなく意識させるようにしてもらいたいです。このまま何も進展なく冬休みになるのは困る』
そうなのだ。冬休みまであと1ヶ月しかない。更科の言う通りこのままだと困る。
ん? 何が困るのかって? そりゃあ、私と更科の胃よ?
「はぁ…………。出来るだけ頑張って見るわ。私達の胃の為にもね」
『ああ、俺達の胃の為にも……』
「まぁ、これからも頑張りましょう。おやすみなさい」
『おう、おやすみ』
更科のその言葉を聞いて電話を切るの同時に隣にいる蕾は『んーんっ』と声を上げて目を覚ました。
「起きた? 蕾、おはよう」
「んぅーん。……おはぁよぉございまぁすぅ」
目を擦りながら挨拶をする蕾は、まだ意識がハッキリしてないようだ。
「はい、眼鏡」
「…………ありがとう、ございます」
蕾は渡した眼鏡をかけると意識もハッキリしたようで、呂律が回るようになった。
「ねぇ? 蕾」
「はい、何ですか?」
私はいつ言っても同じだと思ったから礼司に頼まれたことを聞くことにした。
「蕾、単刀直入に聞くね。片桐の事どう思ってる? 正直に答えて」
蕾は片桐の名前が出たところで少し反応したが、口を開こうとしない。
「蕾はさぁ、片桐の事嫌い?」
「……ううん。嫌いではないです。ただ、あんなにグイグイ私に話し掛けてくださる方って今までいらっしゃらなかったので……」
「怖い?」
「いえ、びっくりしてるだけです。最初は私の事、本当に好きなのか疑っていたのですが、1ヶ月間毎日話しかけてきて私に告白してくるのです。私の答えは毎日変わらず『申し訳ございません』なのにですよ。ここまできたら、信じてもいいのかなと思いました。先ほど泣いてしまったのは驚いたのと慣れないことでちょっとキャパオーバーになってしまったからですし、悪い人でもないのも話をしてるうちに理解しました。なので片桐君は嫌いではありません」
私の目を見てちゃんと話す蕾は強がっているわけではなく本心から言っていることが分かる。
「じゃあ、嫌いではないって言ってるけど好きになりかけてたりしない?」
「えっと……私には好きという感情がよく分からなくて。初恋もまだですし……。あっ、でも片桐君のことかっこいいとは思いますよ? それがどうしたんですか?」
「まぁ、ちょっとね。……蕾、こんなこと急に言うのも何だけど、少し片桐のこと意識してみたら?」
その方が色々解決する__という言葉は飲み込んだ。
「それは恋愛対象として見るってことでいいのですか?」
「うん、そうよ」
「出来るか分かりませんが、やってみます」
少し無理矢理だったかも知れないけど、蕾に意識させることが出来たと思う。片桐のことを意識させたことで二人の関係にどんな変化が起きるかは分からないが、良い方に変化してくれることを願うことにした。
◇◈◇
恋愛対象として片桐君を見る…………。
そうは言ったもののどうすればいいのでしょう? 友達としての好きとは違う好き……。
「はぁ…………」
思わずため息が出てしまいました。幸せが逃げてしまいますね。
「朝比奈ーー。ちょっといいか?」
「はい、何でしょうか?」
職員室の前を通りがかった所で学年主任である西口先生に引き留められました。何か頼み事でしょうか?
「今から教室の方に行くんだったら片桐を呼んできて貰えないか? 今、ちょっと手を外せない仕事をしててな」
「いいですよ。分かりました」
「よろしくな」
そう言った西口先生は職員室に戻られてしまいました。でも、何故今に限って頼むのでしょう? もしかして嫌がらせですか。…………またため息が出れしまいそうです。ですが、引き受けてしまったのですから片桐君を呼びに行きませんと。
私は片桐君の教室へと少しスピードを上げて向かった。
教室へと着くと片桐君は椅子に座って本を読んでました。その姿はまるで1枚の絵画のようで、綺麗と思ってしまうのは仕方がないことだと思います。
「失礼します。片桐君、少しよろしいですか?」
ノックをして、片桐君に声をかけると教室にいた皆さんが一斉に私の方へ向きました。何だか皆さん、目がとてもキラキラしているのは何故でしょう?
そんな事を考えていたらいつの間にか片桐君が目の前に立っていました。
「ん? 珍しいな。朝比奈から声をかけてくれるなんて。もしかして、やっと俺の告白受けてくれる気になった?」
「ち、違います。西口先生から片桐君の事を職員室に呼んできてと頼まれただけです!」
「ふーん? それは残念。でも、ありがとな」
そう言う片桐君は何故か私の頭と頬を撫でてきた。
「な、なんですか」
「やっぱり朝比奈は可愛いね」
「か、からかわないでください!」
片桐君、顔が近いです。それに何故皆さんはそんなに目をキラキラさせているのですか⁉ 見てるだけではなくて助けてくださいよ!
「ご褒美にちゅーしていいよ?」
「なっ!」
「あ、ごめんごめん。違ったな。俺が攻めないと」
片桐君の顔が近づいてきたと思ったら私の頬にキスをしてきました。
恥ずかしくて死んでしまいそうです。私が真っ赤になったのを見て満足そうした片桐君はにやりと笑って西口先生の所に向かってしまいました。
まだ皆さんの目がキラキラしてますけど、本当に恥ずかしいので見ないでください。思わず、走って自分の教室へと戻ってしまいました。
授業が始まるまでに落ち着かないといけませんね。出来るでしょうか……?
「__な、__ひな、朝比奈!」
「は、はい‼」
「さっきからぼうっとしてるが大丈夫か?」
「だ、大丈夫です。申し訳ございません」
先生に心配されてしまいました。
授業中なのですから集中しないとダメですよね。
はぁ……先ほどから片桐君にキスされたことが忘れられません。思い出す度に顔が真っ赤になってしまいます。……本当にどうしましょう? もしかしてこれが意識するということなのでしょうか? 私は片桐君のことを恋愛対象として見ている……?
えーー、うーー、あ~~~~‼ もう、考えるのはあとにしましょう‼ 今は授業です‼
キーンコーンカーンコーン
チャイムがなってしまいました。ノートが真っ白です。私は何をやっているのでしょう。馬鹿ですね。
「じゃあ、今日はここで終わりな。復習しとけよ」
先生、申し訳ございません。復習は出来そうにないです。今、私の頭の中は片桐君のことでいっぱいでパンクしてしまいそうです。
私は片桐君のことが好きなんでしょうか? 柚希ちゃんに意識したらと言われる前から無意識に好きになっていた…………? ないない! 有り得ません! キスされて変になってるだけです‼ 一旦この事はわすれま………せん! 無理です無理です‼ 忘れられません! これが恋というやつなのでしょうか⁉ ……あっ、こういう時はスマホです! えっと、恋をしているかわかる方法っと。これで検索です。あ、ありました。ふむふむ。全部チェックだったら恋ですか……。
ーー①その人を見るとドキドキする
ーー②その人を見ると顔が赤くなる
ーー③その人の笑顔が見たくなる
ーー④正直、その人が1番可愛いor格好いいと思う
ーー⑤その人が異性と一緒にいるとモヤモヤする
……正直に答えますと①②④は当てはまり、③と⑤は当てはまるような当てはまらないような……はっきりしません。そうですね……今日1日は③と⑤の質問をはっきりさせましょう。そうしましょう。
「あ、でもどうやってはっきりさせればいいのでしょう……?」
うっかり声が出てしまいなした。
とりあえず、③を確認しに片桐君のクラスに行くことにしましょう。
私は片桐君のクラスへと向かいました。が、話し掛けるのも躊躇したので扉の影から片桐君を見ることにします。何だかストーカーみたいですね……。うん、気にしないことにしましょう。ばれなければいいんです‼
あ、片桐君いました。クラスの方とお話ししてるようです。楽しそうに皆さん笑っています。そういえば、片桐君の笑った顔をちゃんと見たのは初めてかもしれません。何だか笑うといつもより幼く見えて可愛いです。もっと見たくなりますね……………………って③が当てはまってしまいました! やはり私は片桐君に恋を……? いやいやいや、まだ1つ質問が残っています。それを確認してから結果を出しましょう。
ええっと、⑤の質問は【その人が異性と一緒にいるとモヤモヤする】でしたよね。モヤモヤって嫉妬ということでしょうか? 異性、異性ですか……。そんな運良く片桐君が女の子と話しているところ何て見れ……ましたね。あ、あの子は文化祭のミスコンで優勝した宮森さんではないですか。可愛いですね。片桐君と並ぶと美男美女でお似合いです……。
モヤッ
……あれ? 先ほど、絶対モヤッとしました。今も何だかモヤモヤしてます。そして片桐君の隣に居たいと思う自分がいます。
………………片桐君に恋しているってことでいいですよね。恋、恋ですか……。いつの間にか、片桐君の事を好きになっていたようです。でもこの気持ちをどうやって伝えましょう? うーーん。
「朝比奈、そんな所で何やってるんだ?」
「どうやって自分の気持ちを伝えよ、うか、トオモイマシテ……」
顔を上げたら片桐君が目の前に立っていました。思わずカタコトになってしまったのはしょうがないと思います。
「俺の顔を見たとたんにそんな反応しないでくれないか。やっぱり俺、嫌われてるのか? いや、今までしてきた事を考えたら嫌われてもおかしくない、か……。いや、でも朝比奈の反応が可愛いから仕方がない、と思いたい……」
急に早口で何かを言い始めたと思いましたら片桐君が自分の頭を抱えだしました。
「あの、大丈夫ですか……?」
「あ、うん、まぁ、大丈夫だよ。ちょっと自分がやってきたことを後悔してるだけだから」
気にしないで__と言う片桐君の笑顔はどこかさっきとは違う元気のない笑顔でした。もっと見たいとは思わない、思えない笑顔。そんな笑顔をされると私まで元気がなくなってしまいます。
…………これは重症ですね。自覚した途端にここまでとは自分でも驚きます。
「朝比奈、今までお前の反応見たさで意地悪をしてすまなかった。これから、絶対とは言えないが出来るだけ意地悪するのを我慢する。好きだ、朝比奈。俺と付き合うことを前提に結婚してくれないか」
「はい」
「あー、やっぱりだめ…………ってはっ⁉ え、は、え? ……ごめん、朝比奈。もう一回言ってくれないか」
「片桐君の申し出を受けさせていただきますので、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします……ってはっ⁉」
片桐君から言い出したことですのに何でそんなに慌てているのでしょう? あ、もしかして……。
「あの、先ほどの冗談だったりします?」
「え……あ、違うから! 冗談ではないからな! ただ、朝比奈が受けてくれるとは思ってなくてな……」
「ん? 何で私が受けないと思ったらですか?」
「……嫌われてると思ってたから」
「へっ? 私、片桐君のこと嫌いと思ったことありませんよ? 最初の頃は片桐君の告白を信じてなかったり苦手意識はありましたけど、いつの間にか片桐君に恋してたみたいです。片桐君のことを見るとドキドキしますし、片桐君の笑顔をいつまでも見ていたいと思いますし、片桐君のことが1番格好いいと思ってます。それに片桐君が元気ないと私も元気がなくなってしまいます。それぐらい私は片桐君のことが好きみたいです」
片桐君は顔を真っ赤にさせ足から崩れ落ちてしまったと思いましたら、えーと確か柚希ちゃんと同じクラスの更科君? に回収されていきました。熱でもあったのでしょうか?
「蕾、あんた片桐に何したの?」
「あ、柚希ちゃん! 何したって、自分の気持ちを嘘いつわりなく正直に伝えただけですよ?」
柚希ちゃんの目を見ながら言ったら、何故か頭を抱えてため息を吐かれました。この頃、私のまわりに頭を抱える人やため息を吐く人が多いのですが皆さんどうしたのでしょう? ストレスですか?
「はぁ、蕾の愛情表現をもろにくらうなんて片桐も可哀想ね……」
いい事をしたはずなのですが……何だか悪い事をしたような気分です。
◇◈◇
今私は、柚希ちゃんと更科君と一緒に一颯君の家に集まっています。
「途中はどうなるかと思ったけど、婚約という1番良い終わり方になって良かったよ」
「本当にそうね。誰かさんは私と更科を巻き込んだりして迷惑かけたりしてたからね。数ヵ月の間、ストレスで胃が痛かったのよ!」
「その節は世話になった。ありがとう」
「本当に感謝してよね!」
楽しそう、なのかは分かりませんが、話をしている3人をじっと見つめます。ぽんぽんと、なめらかな会話が続いていくのを見て、私は先ほど気づいたことが事実だと確信を持ちました。
「ねぇ、一颯君。柚希ちゃんや更科君とか他の人とは問題なくお話ししてるのに、私と話すときは何で口下手になるのですか?」
会話が止まり、3人の目が大きく開かれました。柚希ちゃんと更科君は酷くぎこちない動作でその瞳を一颯君へと向けました。
「一颯……それはちょっとどうかと思うぞ……」
「本当にそうね。拗らせると皆こんな風になるのかしら?」
何かを話している柚希ちゃんと更科君に一颯君は親の敵を見るような目で見ています。
「あの、ええっと、前までは普通に話してくれていたのに婚約……いえ、私が告白したときから何か変だと思いました。もしかして、私のことが嫌いになってしまったのですか? もしそうなら、言ってください……」
少し泣きそうになってしまったら、バッとその場を立ち上がり、ソファに座ったままの私の前に来て、手を握ってきました。
「すまない。蕾を嫌いになったわけでもないし、不安にさせるつもりもないんだ。ただ……蕾と上手く話せないのは、落ち着かないんだ」
「落ち着かない?」
予想だにしていなかった言葉に思わず首を傾げてしまいます。
「あの、どうしてですか? 先ほども言いましたが、私が告白するまでは普通に話していましたよ」
「それは、落とすのに必死だったというか…………これ以上誤解させたり、不安にさせたくないから言うが、そんなに熱を帯びた瞳で見つめないでくれ。気が可笑しくなる」
熱を帯びた瞳……。いつも何かと自覚しろ自覚しろと言われますが、今回のは自覚があります。
「……申し訳ございません。柚希ちゃんからも言われたことがあるのですが、私は好意そのものが瞳に通じるらしく……あの、一颯君は色々な人に見られていても気にしていない様子だったので大丈夫だと思ったのですが……。どうか私の視線にも慣れてくださいませんか?」
「無理だ‼」
物凄い速さで拒否させてしまいました。
一颯君が無理と言うのでしたら、私が努力することにしましょう。
見つめないようにする……というのは目隠しでもすればいいのでしょうか? ……いや、何馬鹿なことを考え得るのでしょう、私は。でも、見つめないようにすることは難しいです。だって、一颯君が格好いいんです。そんな一颯君を見ないなんて馬鹿のすることです!
なら、熱を帯びないようにするっと思いましても、自分の一颯君への気持ちを抑えることになるので無理です。
はぁ……、本当にどうしたらいいのでしょう?
「……やっぱり、一颯君の事を見ないようにすれば解決するのでしょうか?」
「それはやめてくれ!」
うっかり声を出してしまったら、一颯君の悲鳴が飛んできました。私の手を握りる力も若干強くなった気がします。
「蕾」
「な、なんですか?」
「視線は我慢するから、俺を見といてくれ」
「ほ、本当ですか⁉ 見つめてもいいのですね。嬉しいです。ありがとうございます!」
急に何で見つめてもいいと許可が出たのか分かりませんが、嬉しくて表情が緩んでしまいます。
「うっ……だから、見つめるのは俺だけにしてくれ」
「何を言っているのですか。大好きな一颯君が目の前に居ますのに、よそ見するわけないじゃないですか」
愛情表現が少なかったから、不安にさせてしまったのでしょうか。もしそうでしたら、今からでも私がどれだけ一颯君の事を好きか伝えないといけませんね。そう思い、口を開こうとしましたら私達の間に柚希ちゃんと更科君が飛び込んできました。
「蕾、そこまでにしてあげなさい‼ 片桐はこのままだと再起不能になるわよ‼」
「えっ⁉」
「一颯が、ある意味可哀想に思えてくる。どうか、どうかもう少し手加減してあげてくれ!」
「何をですか⁉」
「「愛情を‼」」
柚希ちゃんと更科君に言われた回答に驚いてしまって、思わず叫んでしまいました。
「そんなの出来るわけないじゃないですか! だって、私は一颯君のこと大好き……いえ、愛してるんです‼」
きっと、世界中の誰よりも! 一颯君、覚悟しといてください‼
「何か、蕾の心の声が聞こえたような気がするわ。はぁ……まだまだ私たちの胃の痛みは治まりそうにないわね……」
「そうだな。あと、リア充爆発しろ」
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