0怪 入口へようこそ
何の変哲もない街、青い空、立ち並ぶ鉄筋コンクリート製の高層ビル。人々は当たり前のように街の中を歩いてゆく。だが人々が見て感じているものは只の表面上のモノでしかない。ペラペラの薄皮一枚にくるまれた世界の理というものは常人が見ていいモノではない。というかそもそも見えるはずがないのだ。
…だが、ボクという存在はその世界の理の一部が見えてしまうようだった。
………さて、自分でも何言ってるかいまいちよく分からなくなってきたが…まぁ要するに。ボクは普通の人には見えない世界の裏側の一つが見えるわけだ。
6月の半ば。もうすぐ深夜2時を回ろうとしている。そんな時間帯に少年が一人、寝静まった町中を歩き回っている、まぁボクなのだが。
ボクの名前は天月 遊何の変哲もない只の中学2年生だ。…え?中学生が深夜に徘徊してんじゃねえって?いやまぁそれはごもっともだがこっちも好きで夜中に町中を歩き回ってるわけではないのだよ。…あぁ読者の皆様には『こいつら』の事は見えないのか…ならしょうがない、皆様にボクが普段見えている世界というものを見せてあげましょうかね。
少年が指を鳴らすと先ほどまでそこに存在していなかったはずの『人ならざる異形の物』達が一斉に姿を現す。 人の体に猫の耳を持った娘、強大な体に頭頂部に角を生やした男、一本の足にギョロリとした一つ目の傘、二本足でスタスタと歩く狸etc……
そう…ボクは『あやかし』が見える。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」…と昔の人は言っていた、幽霊やあやかし何ていうのは錯覚によって生み出された偶像にすぎない……と人によってはこう思うかもしれない。だがボクは見えている、目の錯覚や幻覚などではなく実際にこの場に居るんだ。
うん、おそらく皆さんはボクの頭がおかしいだとかそう思っているに違いありませんね。まぁそれも仕方ないわけです。ちょっとでも居るのかも…?とでも思ってくださる人が居れば『あやかし』は存在し続けられるので、これからちょっとづつでも知っていきましょうか。
「「「「ようこそ、あやかしの世界へ。」」」」