第1話 プロローグ
初めての投稿作品です。よろしくお願いします。
「…はぁ…やったぞ。ついに…ついにやったぞ!!」
ついに…努力が実った。これは誰にも想像もできないであろう喜びを波江に与えた。
「俺は天才だ!!何故なら・い・ま・ま・で・誰も成し遂げたことがないことをたった3年で成し遂げたのだからな!!はっはっはっ。」
わざとらしく大声で独り言を言う波江。口元のニヤニヤはごまかしきれていない。
毛瀬波江は高校三年生…ではなく浪人二年生。近所からは変わった子だと昔から有名だった。勉強はできないわけではない程度。
高校三年生の頃、進路を考える機会があったが、彼はそのときふと思いついた"アイデア"が彼の人生を劇的に変えた。
中の上だった成績は全く勉強しなくなり劇的に下がった。また、大学を不合格し、浪人生となったとき、目を輝かせながら一人暮らしをすると言い張り、親を困らせた。そのまま最低限の荷物を持って家を飛び出し、その後誰とも連絡を取らなくなったのだった。
波江は興奮し過ぎて大声を出したため隣人が壁をドンドンと叩いて「黙れ」とサインを出したのを機に少し冷静に戻る。夢のような物をついに作り上げたものの、それを他人にバレてしまうのは危険だと判断したからだった。
そんなに危険なものを作り上げたのかって?
それはそれは。世界を変える可能性さえあるものだというのに。
まだ成人してさえいない青年が3年をかけて作り上げたもの、もとい装置は世界の常識をひっくり返すものであり、しかもほぼ完璧な制御までなし得た試作品ながらも完成品であった。
そうそれは、異世界への門。
地球人類史上初めての発明品。応用すれば過去にも未来にも行けるもの。
"試作品番号54番型次元転移装置R"
製作者毛瀬波江はその装置をそう呼んだ。
人生3年をかけてたくさんの試作品をつくり失敗し、挫折しそうになったこともあった。でもついに作り上げた。
外観は多少不恰好ではあるが、機能はホンモノである。大切なのは見た目よりも中身だ。人間も同じ。
波江は電源を入れ、装置の"命"である汚れたかけらを専用ソケットに入れた。