獣人の新たな第一歩
是非、最後まで読んでください。すごく会話が多くなってしまいましたが、是非読んで下さい。
薄汚れたマントを頭からかぶった少女は、じっとこちらを見る。
「…お前、名前は?」
音無のその声を聞くと、少女は一瞬肩をビクッとさせ、小さい声で喋りだす。
「わ、私の名前はエリスティ…です。10歳で…あっ!」
マントが風でめくれる。
そこには、驚くべき姿があった。
獣人。人間と魔物のハーフ。優れた身体能力を持つとされるビースト。どんなゲームでも種族として存在する。
しかし、だからといって受け入れられているわけではないらしい。
「やだあの子、獣人じゃない」「なんで獣人がこんなところに」
周りからそんな声が聞こえてくる。
エリスティは俯くと、またマントを深々とかぶった。
音無は、ハテナの方を向くと、
「ハテナ、お前さっき俺たちがいた草原に、エリスティもついでに連れてけ。ここじゃ人目が多くて情報を聞きづらい」
ハテナはコクリと頷き、「さ、行こ」と声をかけると、エリスティの手を掴んで村の外へと出ていった。
「は〜、この世界もクソだな」
その音無の小さな声は、ハテナの耳にはしっかりと届いていた。
草原に立つ大きな木の木陰。そこに3人は居た。
音無が買ってきたパンを、少女は必死に口に入れ込む。
「おい、マントここでくらい取っちまえよ」
エリスティはビックっとまた怯えた反応をする。そして、
「…嫌じゃないの?」
「なにが」
「…獣人と一緒にいること」
「こちとら露出度の高いバカな女神と一緒にいるんだ。そっちの方が恥ずかしい」
「な、誰のことを言ってるんですか!」
ハテナはプンスカと頬を膨らませて怒る。
そのハテナを無視し、音無はエリスティに問う。
「で、お前が知ってるこの世界のこと、教えろよ」
「ちょっと、聞いてるんですか?…もう」
ハテナももうこの扱いに慣れてしまったらしく、エリスティに目を向ける。
綺麗な金髪をした少女の髪からは、ひょこっと獣耳が出ていた。
少女は小さい声で話し始める。
「この世界はもともと平和…だったらしいけど、魔王が現れてから、魔物を使って村を荒らしたり、…人を殺したりして、平和じゃなくなった…。
ごめんなさい、これくらいのことしか知らないの…」
後半になるに連れ、どんどんと声が小さくなっていく。最後にはほとんど聞き取れないほどに小さくなっていた。
俯いて動かなくなる。握る拳には力がこもっていた。
「…そうか。じゃ、次はこっちから質問だ。なんでパンだけで一万ゴールドすんだ?」
「今はそれで普通。魔王が金作りすぎて、インフレーション?起こしちゃってる」
「…もしかして魔王バカなのか?これじゃ、薬草一つで全財産使い切る」
音無は目をつぶって考える素振りを見せる。それを見たエリスティとハテナはハテナマークを頭の上に浮かべていた。
そして、数分後、止まった時がやっと動きだしたようにいきなり口を開いた。
「しょうがない、魔王倒しにいくか」
「そんな買い物感覚で!」
ハテナは思わずその提案にツッコミをいれてしまう。
「理由はともあれ、お前の要望どうり魔王倒しにいくんだからいいだろ」
「そうですけど…勇者っぽくない」
ジト目で音無の方を向き、「あっ」と何かを思い出したように口を開いた。
「装備どうするんです?魔王攻略って言っても途中魔物も多いですし…」
「は?なに言ってんの?こっちには瞬間移動の呪文があんだよ」
「え…まさか魔王の城に直行なんてことは…」
「そうだけど問題が?」
「大アリですよ!」
「確か…これっと」
音無が何か操作をすると、目の前に門が現れ、門が開くと禍々しく大きな城が存在していた。
「ちょっと待って!」
「いくかー」
ハテナは音無の袖を引っ張り止める。
「お前も早く魔王を倒すに越したことないだろ」
「…まあ、そう言われれば確かに。けど言いくるめられた感が半端ないですね」
ハテナはう〜んと一人で唸り始める。
「いいだろ。おい、エリスティ、お前も来いよ」
「…え」
やりとりを呆然として見ていたエリスティに声をかける。
「お前、家族は?」
「…いない。どっかにいちゃった」
空気が一瞬にして重くなる。しかし、その空気をはねのけるように、
「じゃ、付いてこいよ。お前も俺の異世界経営の店員だ。あ、ちなみに一号はこいつな」
そう言ってハテナに指を指す。
「私ですか!」
ハテナが発狂気味にツッコミを入れた。
「まあ、エリスティ、お前もどっかでのたれ死ぬよりはマシな人生が送れるぞ。こいよ」
エリスティは音無を見ると、ごくっと唾を飲み込み、立ち上がった。そして、
「私も行く」
エリスティは新たな一歩を踏み込んだ。
どうでしたでしょうか。コメント是非よろしくお願いします。
今回は会話が多めになってしまいました。次回はなんと魔王城攻略です。早いですねw
次も頑張ります。