彼なりの手の差し伸べ方
結構わかりずらいところがあると思うので、そこらへんは指摘などよろしくお願いします。
「ここか…」
音無は看板が掲げられた『ミノハ村』の前に立っていた。
そこは活気溢れる人々でごった返している。しかし、その人々の中でボロボロな服を着た幼い少女が一人、賑わう道の片隅で力なく座っていた。そして、大人たちはその少女に目もくれず通り過ぎる。
その光景を見たハテナは、悔しそうで悲しそうで、苦虫を噛み潰したような表情をしていた。彼女は女神という立場上、皆に平等でなければいけない。勇者は例外であるが、あのような少女にも、手を差し伸べてやることはできなかった。
ハテナは作り笑顔をはっつけて、音無に話しかける。
「音無さん、どこいきましょう」
しかし、隣にはもう音無はいなかった。
音無は人混みの隙間を縫うように歩いている。
「ちょっ、待って下さいよ!」
急いで音無の跡を追うと、そこは『中古武具屋』と書かれた中古品販売店。
「ここで何するんですか?」
「野暮用」
ハテナを適当にあしらった音無は、その店に入っていく。
店員と思われる人間が、「らっしゃい」と接客をする。音無はその店員の近くに行くと、
「売りたいものあんだけどいいかい?」
と声をかけ、アイテム欄からあるものを取り出した。それは、
「それ、勇者の初期装備じゃないですか!」
店員の前に出されたのは、武器以外の勇者装備一式。
「三万五千が妥当だな」
店員は音無に向かいそう言うと、
「いや、五万くらいだろ?」
音無と店員の視線がぶつかる。
「…三万八千」
「四万八千」
「……四万」
「四万五千」
「…四万五千か」
店員は少し考えるそぶりを見せた。そして、
「いいだろう、四万五千で買い取る」
音無はそれを聞くとニヤッと不敵な笑みを浮かべて、「じゃ、いいや」と外に出て行った。
その光景を見ていたハテナが、
「なんで売らなかったんですか?どこ行くんです?」
と不思議そうに質問してくる。
音無はその質問に、「まあちょっとな」と答えると、『万屋』と小さな看板に掲げられた店に入って交渉を始める。
「三万八千で」
「いや、六万」
「六万!」
店員とハテナの声が重なる。音無はさっき見せたような不敵な笑みを浮かべていた。
「…四万五千しか出せないな」
「五万五千」
「………五万」
「…わかった」
店の外に出ると、ハテナは疑問を投げかけた。
「なんでそんな店を渡ったんですか?」
「解説面倒臭さいな…まあいいか。一つ目の店は武具を基本とした店で、多分割と大きな店。だから四万五千で買い、五万で売ろうとしていた。五万って言いだしたらそこで交渉を切ってきただろう。
だが、二つ目の店は武具は少なく、注目されるような商品は少ない。店も小さい方だ。だから、五万っていう値段にあげても、装備一式なんていう注目されやすいものを買い上げた。一回注目されれば波に乗れるからな。
一つ目は相場を探るため、二つ目は売るためって感じ」
音無が解説し終わると、ハテナの「ほえ〜」という感嘆の声が聞こえてくる。
「ん?ここって…村の入り口」
疑問混じりの言葉をボロッと吐いたハテナをよそに、音無はある場所に向かった。そこは、
「おい、お前」
先ほど力なく座り込んでいた少女のもと。そして、
「お前が知ってるこの世界のこと、全部教えろ。金は払う」
きっとそれは、ヘソの曲がった彼なりの、手の差し伸べ方だったのだと思う。
どうだったでしょうか。会話シーン多めになってしまいました。
コメント、レビューよろしくお願いします。