4.Dクラスの新しい友達
クラス分け後、クラス別での集合でしました。
「ジャンヌ・シュミットハルツです。ヒルスシュタット侯爵家が長男、マクベス・ヒルスシュタット様の騎士です」と私は挨拶をします。
マクベス様の騎士、と自分で名乗るのはまだ何処か気恥ずかしいです。
どうもDクラスは他のクラスよりも人数が少ないように感じました。天気が良いためか、生徒騎士が集められたのは訓練場のような敷地でした。土が平にしてあるだけの場所です。
そんな場所でクラス毎に固まって、自己紹介をしているようですが、AクラスとDクラスの人数が明らかに少ないです。BクラスとCクラスは同じくらい多いですね。
Aクラスは、上位の人だけ入れるとあって、人数が少ないのでしょう。そんなAクラスに入れてしまう友達のセルシアさんは凄いです!
Dクラスを担当する指導騎士の方が、「Dクラスに所属しているというのは、君たちの主人が恥をかく可能性が高い。半年後の入れ替え戦で上位のクラスにいけることを願う。そのために厳しい指導になるだろうが、付いてきてくれ。なに、君たちの主君への忠誠があれば乗り越えることが出来るだろう」と、話をしています。私もマクベスの為に頑張ります。
あの、ダルシス・バリスハウゼルという人は、もしかしたら彼の騎士であるセルシアさんがAクラスで、マクベスの騎士である私がDクラスであるということで、マクベスを馬鹿にするかもしれません。確かにそれは口惜しいです。セルシアさんが凄いことは嬉しいですが、マクベスが馬鹿にされることは許せないですね。
指導騎士の方が本日は解散、とクラスに伝えます。私は、さっそく友達をクラスで作りたいと思います。マクベスとの待ち合わせの時間まで時間がありますから、その時間を有効活用して友達100人大作戦の決行です!
「こんにちは〜。ジャンヌさんですよね〜?」
誰に話しかけようか迷っていると、私に話しかけてくれる人がいました。
「そうですが……」
「良かったです〜。一度に沢山の人が自己紹介されて、名前を間違ったら失礼かなと思いまして〜。私は【ミーシャ】です。同じDクラスですので、よしなにしてください〜」と右手を差し出しています。
友達100人作戦、幸先が良いのです!
「ミーシャさん、よろしくお願いします」と、私とミーシャさんは友情の握手を交わしました。ウェーブのかかった緑色の髪の毛。口調がほわっと間延びしているだけあって、お胸の大きい人です。今日であった騎士の中で一番かもしれません。
「あら? あらあら〜?」
握手をしていると、ミーシャさんは首を傾げます。
「ど、どうしました?」
「あなたの手、とても不思議ですねぇ〜。剣でもない、弓でもない、槍でもない。利き腕は右手ですよね〜」
「利き腕は右手ですよ?」と私は答えます。
「そうですよね〜」と握手しながらミーシャさんは目を細めます。
ヒルスシュタット家のお屋敷のメイド長が、他のメイドの仕事ぶりをチェックしているような目つきです。ちょっと恐いですが、きっとミーシャさんとは良い友達になれると思います。
他のクラスの皆さんも思い思い談笑していたりします。あっ! 一人輪に入れていない人がいます。話しかけるチャンスです。
握手したままのミーシャさんの手をそのまま引っ張り、その騎士の所へ行きます。
「こんにちは。ジャンヌです。お友達になりませんか?」
「は?」と、地面に胡座をかいて座っている人は不機嫌そうな顔で私を見上げています。髪の毛が赤いせいか、余計に怒っているように見えます。
「わたしはミーシャです。よしなに〜」とミーシャさんは笑顔です。
赤毛の騎士さんは、立ち上がりお尻の埃を払い、そして「私は【アリス】。よろしく」と名乗ってくれました。きっと恥ずかしがり屋さんなのでしょう。
「よろしくお願いします」と私はアリスさんと握手をします。続いて、ミーシャさんとアリスさんが握手をします。
「よしなにです〜。得物はその槍ですね〜」とミーシャさんはアリスさんに言います。
ちっ、とアリスさんは舌打ちをしてから、「あんたもその背負ってる弓が得物だね。だけど、他にも隠しているね」
「さぁ〜どうなのでしょう〜?」
ちょっと険悪な感じもしますが、ミーシャさんもアリスさんも友達になったようです。
でも、言われてみれば、ミーシャさんは背中に弓矢を背負っています。腰に付けているのは剣というより短剣です。
アリスさんは、槍を持っています。帯剣もしていますが、槍が目立ちます。
騎士といえば、剣なのですが、弓矢を持っていたり、槍を持っていたりと、少し変わった騎士なのかもしれません。他のDクラスの人は、私を含めてみんな剣だけを持っています。
「槍と弓って、お二人とも珍しいですね」と私は言います。Aクラスのセルシアさんは、馬術、槍術、弓術も得意ということだったので、お引き合わせしたら意気投合するかもしれません。
「ん? ってか、あんたが一番珍しいけどね」
「そうですね〜」
二人とも、私を怪訝な目で見つめています。あれ? どうしてでしょう?