やる気がない中学生
とりあえず書いてみたかったんです。
田舎のとある中学校。
夏の真っ只中。暑さでやる気がでない僕は、先生の授業をただの音のように聞き流し、
窓の外を見ていた。とにかく暑い。なんせこの学校にはクーラーなどといったものはないし、
扇風機すら置いていないのである。
周りの奴らはやる気があるタイプばかり。
ただ、何人かそうではないやつもいる。
虚ろな目線を窓から廊下側にずらす。そこには同級生の永月颯太がいる。
この人はかなり頭がいいというのは分かる。ただ、授業態度はいいとは言えない。
アニメとかでよく見る、”やる気がない天才”そのものだ。
やる気がなく頭も良くはない自分からすると、ちょっとうらやましい存在である。
あまり話したことがないけど、どんな人なんだろう。いまいちつかめない。
「井柳、これ分かる?」
急に先生に回答を求められた。どうしよう。何も聞いていなかった。
「多細胞生物です。」取りあえず勢いで言ってみた。たまたま覚えていて頭に浮かんだだけ。
一瞬で教室中の温度が下がるのを感じた。
先生は聞かなかったことにして、その”数学の問題”の解説を始めた。
井柳ヒロト。これが僕の名前である。
中学三年生で、受験を控えているというのに、何もしていない。
周りは頑張って勉強しているが、自分はいまいちやろうと思えない。
このように授業にもまじめに参加していない。自分の将来はどうなるのか。予想はついている。
僕には才能がない。何をしても中途半端なのである。
だから、アーティスティックな職業もきっと向かない。スポーツはそもそも興味がない。
家に帰ってくると、自分の部屋に直行した。
実は僕には、誰にも言っていない秘密がある。
インターネット上のあるサイトで小説を投稿しているのだ。
なんの才能もない、自分のような冴えない人物が、ひょんなことで大活躍する小説を書くことで、
日々の”できない自分”から逃避しているのだ。
誰かにばれたら人生が終了するが、少なくとも、身の回りの人にばれる要因はない。
そうともなれば、こんなに楽しい趣味はないのであった。
書き始めたのはちょうど1ヶ月前。シリーズができている。誰にも見られなくても、
自分の架空の世界を展開して、自分の分身を置き、すごいことをさせているだけでワクワクする。
パソコンを閉じた瞬間、空虚な時間に戻る。現実の自分といったら、説明するまでもない。
最近はもっぱら、ネットサーフィンと小説執筆しかしておらず、気づけば日付が変わっていて、
やっと寝るのが習慣になっている。
自分はダメ人間なのだろう。きっと明日もいつも通り、つまらない学校での日常を過ごすに違いない。
お読みいただいたなら、ありがとうございました。