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竜と聖魔とバツ2亭主  作者: 鳥井雫
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いざ王都へ!



 遅きに失する感もあるが、ちょっとこの『ファンタシースカイ』のゲームシステムの説明をさせて頂きたいと思う。つまりは各キャラが、どのように成長を遂げて行くかの過程について。

 以前にも少し説明はしていたと思うが、このゲームはスキル買い取りシステムを採用している。キャラのレベルが1つ上がると、各ステータスやHPなどの値が上昇するのは当然だが。

 それとは別に、キャラには2Pのスキルとステータスの振り分けPが手に入る。


 ステータスには筋力や敏捷、知力や精神など6つあって、それぞれが属性と結びついている。つまりは筋力=炎属性とか、知力=氷属性とか。ちなみに闇属性はSPと、光属性はオールマイティに関連性があるらしい。

 これは最初のキャラ決定にも関与していて、ここから前衛にするか後衛にするかのキャラ設計は始まっている。前衛向きは炎や土(体力)、後衛向きは水(精神力)や氷だろうか。

 もちろん他の属性を選択しても、個性のあるキャラは作成可能だ。


 つまりはそう言う選択の広さが、このゲームのシステムの根底には存在する。属性の相性を無視しても、そこそこ味わいのあるキャラは出来上がってしまうのだ。

 レベルが上がる毎に得られる、2Pのステータス振り分けポイントを、筋力やに振り込めば前衛に。知力や精神に振り込めば後衛仕様になって行くのだから。

 そんな感じで、このゲームはキャラを成長させて行く訳だ。


 もちろんあらかじめ構想を練って、それに沿って成長させた方が強いキャラが出来る確率は上がるだろう。ところが、好みのスキルを揃えようとするとそうはいかない。

 何故ならば、このゲームはスキルや魔法取得は完全にランダムだから。


 これはなかなかに大変だ、スキル買い取りシステムが売りなのに、せっかくレベル上げして溜めたスキルを振り込んで得たスキルや魔法がランダム入手な訳だから。

 もちろんレアなスキルが思いもかけずに出た時は嬉しいだろうが、欲しいスキルや魔法がなかなか手に入らなかった日には、もう地獄である。

 それだけに、レアなスキルや魔法を序盤に手にしている冒険者は羨望の的ではあるのだが。


 スキルPもレベルが上がる毎に2ポイント入手が可能である。これを属性スキルに10ポイント振り込めば、1つ魔法を覚えられる算段だ。そして武器スキルに振り込めば、必殺技を入手出来る。

 たまに補正スキルが出て来るが、スロットに空きがあればそちらも有り難がられる。武器スキルはスロットにセットしないと使えない、これは補正スキルも同様だ。

 スロットには数の制限があるので、魔法と違ってどれを優先するかは悩み処だが。


 要するに、強烈な武器スキルや補正スキルをたくさん持っていても、スロットが少ないと全てを生かし切れない訳だ。スロットの数は、種族やレベルによって違いが出て来る。

 属性種族を決める時には、そんなところも見る必要がある。


 得たスキルを生かすために、スロットの空きは必須と先程紹介したけれど。それとは関係無く常時作用するスキルが、実はこのゲームには2つ存在する。

 それが種族スキルと生活スキルである。種族スキルは各キャラのレベルが10上がる毎に勝手に取得して、その全てが補正スキルで構成される。取得するのはその種族に沿ったものばかり、つまりは炎種族だと腕力とか炎属性に関するスキルとか。

 そう言う所も、最初の種族選びが大切な謂れである。


 ちなみに桜花は風種族、取得している種族スキルは敏捷に関するモノが多い。例えば《移動速度5%up》や《詠唱速度up》、その他《風魔法威力up》などが代表だ。

 変わり種には、ピンチの時に自動的に発動する《風神》なども有名だ。これは桜花のHPが2割を切った時に自動的に発動、周囲の敵を暴風で吹き飛ばすスキルである。

 種族の差は、こんなところでも見受けられる訳だ。


 さて、生活スキルはそれに比べるとトーンダウンしてしまうが、取得して損は無いスキル群ではある。これは圧倒的に後付けジョブ、つまりハンターPを消費しての獲得が多い。

 後付けジョブとは、通称『戦闘体系派生システム』と言って、冒険者の職業に幅を持たせるために後から公開されたシステムである。レベル1からでも取得可能だが、王都にまで出向いて、しかもハンターPを持っていないと無理。

 まぁ、つまりは実質は不可能な訳なのだが。


 それでどんなものが存在するかと聞かれると、これは文字通りに生活に便利なモノばかりで。例えば『移動速度up』とか『乗馬』や『買い物上手』とか、戦闘寄りだと『ヒーリング速度up』とか『気配察知力up』などだろうか。

 合成に関連したスキルや、ドロップ品の数を増やすスキルも存在するらしく、持っていれば便利な事この上ない。スキルスロットも関係なく増やせるし、その点でも優秀だ。

 生活スキルにもレアは存在するらしく、皆の羨望の的みたいだ。


 先程ハンターPの話が出て来たが、これはNMを倒すと入手出来る。強いNMを倒すとたくさん手に入るが、倒した人数で割られるので貰えるポイントはそんなに変わらない。

 とにかくそんな苦労をして、溜めたポイントで何をするかと言うと。さっきも言っていた後付けジョブのスキルを、自分の好みで選んで取得するのだ。

 後付けジョブ、つまりは『戦闘体系派生システム』には『変幻』『戦士』『支援』『魔法』『召喚』『遠隔』『盗賊』『異端』とタイプが8つ存在する。取得出来るスキルは、それぞれのタイプに見合ったモノである。

 これで得たスキルも、スロットに装着して初めて使用が可能となるのだ。


 簡単にざっと説明すると、『変幻』タイプは片手武器の、『戦士』タイプは両手武器アタッカー用のスキルが出る感じだろうか。『盗賊』や『異端』は、闇ギルドの連中が好んで選ぶそうだが、別に絶対選ばないと駄目って決まりはない。

 複数選ぶ事も可能だが、2番目以降はポイントが余計に掛かってしまう。メインは10Pで済むのだが、2番目や3番目になると13P~17Pと多くなってしまう。

 それでも多機能を求めるベテラン勢は、その苦労を厭わないけど。


 そんな感じで、キャラ達は冒険を重ねてお金や経験値や、そして経験そのものを重ねて行く。そしてNMと戦ってハンターPを、クエやミッションを重ねて新たな冒険の地を得て。

 そのついでに入るミッションPは、宝具と言う性能の凄い武具と交換が可能だ。他にも領主の館やキャラバン隊、各種宝玉やダンジョンチケットなど消耗品とも交換可能で。

 それを求めて、冒険者たちは日々切磋琢磨している訳だ。


 説明が長くなってしまったが、最後に武器と防具の事について語らせて欲しい。武器には片手用と両手使用が存在し、片手だと(スキルがあれば)二刀流か盾との併用が選べる。

 片手武器には短剣や細剣、片手剣や片手斧などが存在する。両手武器には両手剣や両手鎌、さらには両手槍や両手棍など威力の高いモノがずらっと並ぶ。

 ただし、両手武器は扱いが難しく攻撃間隔が長いのが欠点だ。


 その反対に、片手武器は攻撃力は完全に両手武器に劣るが、付加性能のついた良品が多い。《二刀流》のスキルが出れば左右に武器を持てるし、左手に盾を持てば防御力が上がる。

更にはスタン系のスキルの並びが豊富なので、戦闘では敵の特殊技を潰す役目を担う事が多い。魔法戦士にも育ちやすいし、汎用性では両手武器アタッカーよりは上かも知れない。

どちらを選ぶかはその人の好み、破壊力を取るか汎用性を取るか。


 武器はスキルポイントが上昇すると攻撃力も上がって行くが、その他にも大事な数値が存在する。それが熟練度で、こちらはその武器を使い続ける事で自然と上がって行く。

 その結果、その武器をうまく使いこなせるようになる感じだろうか。


 防具は大まかに分けて、布製と革製、それから金属製が存在する。こちらも武器と同じく耐久度が存在するので、戦闘で消耗するたびに補修が必要になって来る。

 金属製の方が防御力は高いが、移動や詠唱時間が遅くなる欠点がある。布製はその反対なので、後衛は好んでこちらを選ぶ。魔法戦士は、その中間の革製を良く選択する。

 戦闘で死んだりすると、ペナルティで破損したりもするので。維持には結構なお金が必要で、冒険者泣かせではある。その代わり、良品を装備していると目立つ事請け合い。

 羨望と賞賛が、何より冒険者のアイデンティティなのだから。


 アクセサリーは反対に余り目立たないが、良品奇品が多い。部位で言うと指輪や耳飾り、首飾りなどだ。これには耐久度は存在しないが、盗まれやすいので注意が必要だ。

 こんな感じで、大雑把な上駆け足での説明だったけれど。分かり難いなと思われた方は、別の著書でのチェックをお勧めする。この『ファンタシースカイ』の冒険譚とシステム説明が、こちらより細かに描かれている筈だ。

 著作は『街中がネットファイター(完全版)』と『街中がネットファイター ~百年クエストの章~』の2作である。後者は未完なので、まことに申し訳ないのだが。

 そちらも併せてお楽しみ頂ければ、著者としても幸いである――





 この“水と氷の街”ソルに滞在するようになって、既に3日が経過していた。雪の街と称されるこの地は、林業と漁業が盛んで木造の建物が多い。

そんな街中を、子供達は相変わらず元気で無邪気に駆け回っている。保護者の立場の央佳と祥果さんに限っては、多少の気苦労の影響か、やや憔悴が見られはしたものの。概ね良好、むしろ元の世界の時より健康状態は良好な気もする。

 良く食べ良く眠り、適度な運動が好循環を生んでいるのかも。


 子供を育てるって大変だと、改めて2人は痛感しているところである。しかもいきなり4人と来たもんだ、躾けも教育も当然4倍の手間が掛かる訳で。

 むしろ手の掛かる赤ん坊がいない状況に、感謝しないといけないのかも。それともこの子達を、赤ん坊から育てていたら少しは愛情の度合いや考え方も変わって来ていたのかも。

 何にしろ、育児は大変だと繰り返し思う央佳と祥果さん。


 取り敢えずはこの3日間で、クエスト消化からのワープ開通の儀式はめでたく終了の運びとなって。2組に分かれての競争の結果は曖昧に、最終日の夜のご馳走で揉み消して。

 それでも姉妹全員に、何かしらの景品は配られたのだった。ルカには特性の髪飾りが、メイには祥果さん手作りのお財布が、アンリには手編みのマフラーが、ネネには央佳の作った積み木セットが。

 子供達の喜びと達成感は、それぞれ満足の域に達したっぽい。


 ルカの髪飾りは、央佳がギルメンに頼み込んで作って貰った特製品である。兜が装着出来ない長女にと、MPとSPに大幅に補整の掛かる装備を特注した訳だ。

 それからネネには、そこら辺に転がっていた角材で、数字と平仮名を彫り込んだ積み木を自作した央佳。積み木と言うより並べて遊ぶジグソーみたいなものだが、数を作るのにはとても苦労した。

 2人とも喜んで貰えたのには、しかしその甲斐もあったけれど。


 メイの財布は布製で、可愛らしく名前の刺繍も入っている。たくさん入るようにと大きめに作ったのも、次女のハートを射抜いた様子。中身をいっぱい貯めるぞと、鼻息が荒いのはアレだけど。

 アンリのマフラーも布製で、本当は毛糸で編み込みたかった祥果さんだけど。さすがに3日では無理と判断、その代わり布の素材とワンポイントの刺繍には入れ込んだ。

 祥果さんが三女にマフラーを選んだ理由は、至って簡単でアンリが寒がりだからである。他の子と違って季節モノはどうかと悩んだのだが、実利を取った経緯もあって。

 2日目には既に渡されていて、目下アンリのお気に入りらしい。


 こんなプレゼント込みの祝賀会だが、実は子供達の勉強へのご褒美の側面も。祥果さんが発案した、授業参加が10個貯まった時のご褒美、それを清算した格好でもあって。

 授業の成果はそれぞれに現れていて、それは個人的なお手伝いにも波及していた。特に長女のルカに関しては、料理のお手伝いに楽しさを見出している様子。

 そのせいもあって、祥果さんとルカの仲は急速に良くなって来ていたりして。


 ネネも普通に甘えるようになっているし、央佳の肩の荷はようやく2つ分は軽くなった。それでも悩みと言うのは、後から後から湧いて出るモノ。

 今の央佳の最大の悩みは、ここの所何かと縁のあるPK軍団である。


 奴らのやり口は、やはり弱い者を好んで狩るタイプが多いようだ。祥果さんがせめてレベル100を超えてEクラスを脱するまで、ギルメンに護衛を頼めないだろうか。

 祥果さんには、既にギルドバッヂを渡して入会して貰ってはいるのだが。他のメンバーと、全く面識が無いのは痛手だ。まずは、ギルマスのマオウとの面会を果たさないと。つまりは王都だ、そこに辿り着くのがまずは先決。

 この街でのワープ拠点通しも終わったし、移動に支障はない。


 そんな指針は立ったものの、もう少しだけ姉妹のこの3日間の動向をお知らせしよう。長女のルカはさっきも少し話したけれど、料理を通じて祥果さんと親しくなって。

 これには祥果さんも感激、物凄い張り切りようで料理の技を伝授している。これによって桜庭家では、出来物を買っての食事の割合がほぼ無くなった。

 つまりは毎回、祥果さん渾身の料理がテーブルを賑わす事に。


 それについて央佳も子供達も、何の不満も無い。むしろ喜ばし気で、毎日賑やかな食事風景が繰り広げられる。ルカの料理の腕前に関しては、まだまだ上達の兆しは見えないが。

 祥果さんは、それについては長い目で見る事にしている様子。


 一方、央佳はルカとメイに合成を教えようと試みてみたのだが。どうもこれは駄目だったようで、属性石はうんともすんとも反応しない結果に。

 ファンスカの合成は色々と種類が存在するが、鍛えて行けば難しいレシピに挑戦出来るようになって行く感じだ。ところが初心者用のレシピにも、作業工程は進まない有り様。

 姉妹も央佳も、この結末には激しく落胆。


 ルカもメイも元々NPC設定だったので、そこが枷になっているのかも。それとも尽藻大陸出身の2人には、8属性を基盤にする合成は無理なのかも知れない。

 どちらにせよ、駄目だと分かっただけでも収穫には間違いなく。人には向き不向きがあるんだよと、落ち込む長女と次女を慰めながら。

 ゲーム設定を深層に持つ、この世界に軽い苛立ちを覚える央佳。


 まぁ、世界の法則はいつだって理不尽だ。人間の為だけに存在する訳では無いのだし、そこは仕方ないと割り切らないと。その点、三女のアンリは毎日に何の不満も無い様子。

 祥果さんが母親役のこの生活に、いち早く慣れたのもアンリだった。今や祥果さんとの信頼度も、この子が一番高くて300を遥かに超えている。

 央佳との信頼度も250超え、次に神様の“加護”を返すのは恐らくこの子だろう。


 普段の無表情に反比例する甘えっ振りは、何とも愛らしく。祥果さんの可愛がりようも半端では無い、素直にお手伝いを買って出てくれる親孝行振りも含めて。

 実の親子でも、ここまで仲良くは無いんじゃないかと央佳などは思うのだが。その信頼度の上昇は、姉妹間にも確実に良い方向へと作用しているっぽい。

 四女の世話も進んで引き受けて、今や良いお姉ちゃんのアンリである。


 これには央佳も大助かり、とにかく世話の焼けるネネだったりするので。2人での一番のお気に入りの遊びは、何と言ってもお人形でのままごとなのだが。

 祥果さんが忙しい合間を縫って、人形に洋服を作ってあげた事もあって。2人のテンションは超アップ、どこに行くにも人形は手放さない周到さ。

 共通の趣味が、案外2人を何良くさせているのかも。


 ネネに関しては、とにかくお勉強を教えるのに熱が入る央佳。とにかく繰り返しが苦にならない年齢だけあって、数字から平仮名からどんどん吸収してくれるので。

 教える方も、楽しくて仕方が無いと言うか。そんな感じで、四女への文字入り積み木(と言うよりプレート?)のプレゼントが決まったと言っても過言ではない。

 それを喜ぶ姿も、父親冥利に尽きる央佳であった。


 勉強好きという点では、しかしメイもかなりのモノと言わざるを得ない。教わる方が根性を見せると、物事は何でもこんなにスムーズに運ぶと言う好例である。

 数字をあっという間に覚えると、メイの興味は簡単な算術に突入して。祥果さんの作る例題を、次々に解いては喝采を上げている。その姿勢は、姉妹にも飛び火して。

 今やクイズ合戦のように、我先にと問題を解くのに皆必死な有り様。



 子供達の成長振りや、今興味を示している趣味などは、まぁこんな感じである。こんな勉強やら遊びやらの時間は、クエスト進行の合間に幾度か取られていて。

 お昼ご飯の後や、夕方などに結構まとまった休憩時間を取るのだが。その時は子供達は、元気に街中を走り回って遊んでいたり。遊ぶ時は姉妹とても仲良く、見ていて和む。

 パワーそのもののような無邪気な姿、こっちまで元気になりそうだ。


 元々、借りていたコテージは祥果さんのお気に入りとなっていて。たった数日の滞在だと言うのに、部屋の飾り付けは日に日に凝って行く有り様だったり。

 さらにコテージの外は、子供達の作った力作がずらりと立ち並んで荘厳ですらある。雪だるまに始まって雪ウサギや雪ドラゴン(?)、ネネの作った良く分からない生き物まで。

 本当に残して行くのが勿体無いと、親バカ心で思ってしまう程。


 子供達の想像力は、大人が思うより凄いのだろう。コテージ脇に付けられた馬車は、子供達によって秘密基地へと変わってしまっていた。コテージ内から色々と品物を持ち出して、馬車の中を装飾していたり。

 どうやら祥果さんも、それに一役買っていたらしいのだが。自作の布飾りやらクッションやら、進んで子供達に提供して。知らずに覗き込んた央佳は、かなり度胆を抜かれてしまい。

 そこはまるで別世界、寒さの入る隙すら無い様な。


「央ちゃん、私はずっとマイホームを夢見てたんだけど……やっぱり子供がいないと、その夢は中途半端だって気が付いたよ! でも私、4人も産めるかなぁ……?」

「祥ちゃん、あんまりリアルとごっちゃにしない方が……そもそも俺の稼ぎだけで、家族6人養えるのかなぁ?」


 こんな会話も、3日の内には何度か交わされる始末。段々と、向こうとこちらの世界の区別がつかなくなって来た感があるけれど。一緒なのは、毎日があっという間に過ぎて行く事。

 子供の相手やギルドとの遣り取り、日常の些末事に気を取られている間に、いつしか日が暮れている有り様だ。己の置かれている境遇すら、改まって考えている暇などない。

 そんな忙しさに、逆に救われている気がしないでもないけれど。


 とにかく子供達の存在には、本当に助かっていると央佳は思う。戦闘面はもちろんだが、こんな境遇に陥った自分と祥果さんの、心の隙間を埋めてくれている。

 改めて、そんな事を考えた雪の街での3日間だった。




「さて……この街でのお仕事はもう終わったから、明日はまた馬車での旅になるからね。寝る前に、この街で一番印象に残った事を発表しようか?」

「あ~~っ、それは面白いねぇ……私は魔法? をいっぱい覚えた事と、みんなと一緒にクエスト頑張った事かなぁ? 勉強もたくさん進んだよねぇ、みんな頑張ってくれたよ♪」


 一番手に名乗り出た祥果さんは、楽しそうにそう語るのだが。全然1つに絞り切れていないので、全部が楽しかったと解釈せざるを得ない。

 今は皆がベッドに寝転がって、灯りもランタン一つに落としている所。ネネなどは、もう既に眠そうな顔付きで、央佳の隣で目をこすっている。

 それに気付いた央佳が、ネネに何が楽しかったか尋ねると。


「……姉っちゃとぉ、いっぱい雪遊びしたのが楽しかった……」

「面白かったねぇ、雪遊び! この街初めてだったから、私も興奮したよ!」

「メイとネネが、一番張り切って雪だるま作ってたもんね……私はやっぱり、お父さんに装備を選んで貰った事かなぁ……?」


 嬉しそうにそう告げるルカは、実はその後スキル振りも手伝って貰って、今やいっぱしの前衛キャラである。戦闘訓練も少ししたけど、近くには弱い敵しかおらず。

 その点少し物足りないが、まぁすぐに実践で存分に試せる日も来るだろう。潜在能力は抜群な娘なので、きっと優秀な前衛戦士になるに違いない。

 親バカと言うよりも、これは純然たる事実。


 メイとネネは、初の雪遊びがこの上なく楽しかったみたいだ。それはアンリも同じらしいが、照れているのか三女からの発言は聞こえて来ない。

 その代わり、隣の祥果さんの耳元でヒソヒソ内緒の打ち明け話。それを聞いた祥果さんの代弁によると、アンリは悪者をやっつけたのが一番面白かったらしい。

 うむぅ、我が子ながら末恐ろしい子だ。


 その後も、起きている面子で最近の出来事を語るのが止まらずに。早々に撃沈したネネを気遣いながら、小声でお互いの思い出を話し合う。

 それもいつしか静かになって行き、最後に起きているのは両端に寝ている央佳と祥果さんのみ。そっとお休みを囁き合って、やがて2人も夢の住人へ。

 こうして“水と氷の街”ソルの最後の夜は、ゆっくりと更けて行った。





 ――最後の最後に、蛇足的に祥果さんとルカの新しく覚えたスキル紹介。


***祥果*** 種族『幻』♀


種族スキル《幻身》敵の攻撃を避けやすい《幻視》敵に見付かり難い

《MP量up》MP総量が上がる《幻痛》魔法攻撃力up

《幻律》魔法範囲up

 幻スキル《幻突》……防御力無視の攻撃魔法

     《虚仮嚇し》……対象の敵に恐怖を与える

     《幻水想花》……対象のMPが徐々に回復

     《桜華春来》……対象のHPを回復/遠隔攻撃から完全防御

     《震振打針》……対象をスタン・鈍足

 水スキル《ヒール》……対象のHPを回復

     《ウォーターシェル》……対象の防御力up

     《ウォーターミラー》……対象の魔法防御力up

     《フレッシング》……対象のHPを徐々に回復

 氷スキル《魔女の囁き》……対象の魔法攻撃力up

     《アイスランス》……単体攻撃魔法

     《魔女の接吻》……指定の敵のMP奪取

     《アイスウォール》……術者の前に氷防御壁

 光スキル《ライトヒール》……対象の状態異常を回復

 風スキル《風属性付与》……術者の武器に風属性を付与



***ルカ*** 種族『龍人』♀


種族スキル《竜の神秘》全ステータスup《竜の心臓》MP総量up

《竜の双角》攻撃力up《竜鱗》防御力up

《竜の咆哮》魔法耐性up

 竜スキル《拍龍》……指定の敵に攻撃・吹き飛ばし

     《臥龍》……術者の攻撃・防御力up/術者は移動不可

     《双翼撃》……単体攻撃魔法(物理)

     《ドラゴニックフロウ》……範囲攻撃魔法

 土スキル《アースウォール》……術者の前に土防御壁

 大剣スキル《大切斬》……斬撃威力up

      《上段斬り》……斬撃威力up/敵の詠唱力ダウン

 盾スキル《ブロッキング》……敵の敵対心up

     《シールドバッシュ》……盾攻撃/スタン効果


 ***祥果さんの取得魔法は、大半が宝珠によるもの(笑)。

  ルカの幾つかのスキルは、『契約の指輪』によって取得したモノ。

  両者とも、スキル振りによる補正スキルは略。












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